※本記事は薬剤師が執筆しております※
妊活中におすすめのサプリで含まれていることが多いコエンザイムQ10。
コエンザイムQ10は、妊活に限らず健康や美容に良いイメージがある方もいると思います。ただ、コエンザイムQ10がそもそもどのようなものか分からないという方も少なくありません。
コエンザイムQ10は抗酸化作用があるため、アンチエイジングや健康に役立つことが期待されています。妊活に必要な健康の大敵は酸化ストレスによる老化と言われることもあるため、抗酸化対策は大切です。
この記事ではコエンザイムQ10の効果や摂取量、注意点などを解説します。コエンザイムQ10が気になる方は最後まで読んで、ぜひ参考にしてください。
目次
- コエンザイムQ10とは
- コエンザイムQ10の効果や根拠
- コエンザイムQ10が不足すると
- コエンザイムQ10を多く含む食材
- コエンザイムQ10の効率的な摂取方法
- コエンザイムQ10による過剰摂取の影響
- コエンザイムQ10と薬の相互作用
- コエンザイムQ10の隠れた効果にも期待
コエンザイムQ10とは?
コエンザイムQ10とは、強い抗酸化作用をもつ、ビタミンに似た働きをする栄養素の一つです。食事で補ったり、カラダの中でも作られます。
酸化型と還元型の2種類があり、カラダの中で抗酸化作用をしめすのが還元型です。コエンザイムQ10は、体内では主に還元型で存在し、食事から酸化型で摂取しても体内で還元型に変換されます。
ここではコエンザイムQ10の性質や吸収のされ方を解説します。
コエンザイムQ10の性質
コエンザイムQ10は、脂溶性で光に弱い性質があります。
脂溶性とは、油脂に溶けて水にはほとんど溶けない性質をさします。例えば抗酸化作用があるビタミンEも脂溶性です。コエンザイムQ10はビタミンEなど脂溶性のものと同じルートで吸収され、油っぽいものと同時に摂取すると吸収率が良くなります。
また光によって徐々に分解されてしまい、直射日光下では不安定になります。
コエンザイムQ10の分布と吸収
コエンザイムQ10は、私たちのカラダに必要なエネルギーを作る細胞のミトコンドリアに最も多く存在します。エネルギーをつくる手助けをするのがコエンザイムQ10です。
コエンザイムQ10は脂肪の吸収を助ける胆汁酸に包まれたあと小腸から吸収され、リンパ管をへて血中に移ります。
この小腸からリンパ管に移る時に酸化型から還元型に変わり、その後心臓や肝臓、腎臓など各臓器に運ばれて使われるようになります。
コエンザイムQ10の効果や根拠
コエンザイムQ10は健康や美容に役立つ栄養素とされていますが、下記のような病気への臨床応用が期待された報告もあるようです。ここでは、コエンザイムQ10の期待されている効果について紹介します。
- 妊活サポート
- 肌の老化予防
- ストレスや疲労の緩和
- 心肺機能の強化
- 生活習慣病の予防
- 骨粗しょう症の予防
- 関節痛の改善
- パーキンソン病の予防
- 抗炎症作用
一般的な効果や働き
コエンザイムQ10の主な働きはエネルギーを作ること、抗酸化作用の2つです。
ミトコンドリアでは、食事から得られた栄養素を代謝してエネルギーをつくりますが、その過程で必要とされる成分がコエンザイムQ10です。
また、抗酸化作用とは、活性酸素がつくられるのをおさえたり、取り除いたりする力のことです。活性酸素が過剰になり、バランスが崩れた状態を酸化ストレスとよびます。酸化ストレスは老化や病気を引き起こす原因とされ、抗酸化作用の物を取り入れることは老化防止につながると考えられています。
男性妊活サポート
コエンザイムQ10が精子の質へ良い影響を与える研究報告があります。
不妊症カップルの約半数は男性側にも原因があるとされ、その大半が精子を造る機能に異常があると知られています。そのため、精子の運動率や濃度など精子のパラメータを調べる精液検査は不妊症の検査ではとても重要です。
そして、抗酸化作用のあるコエンザイムQ10の補給で、突発性の欠精子無力症の男性における精子のパラメーターが改善したという研究結果の報告があります。なお、欠精子無力症とは、精子の総数と前進する精子の数が少ないことが併発している状態です。
ただ、コエンザイムQ10の精子の質への効果に明確な根拠はまだ低い状態です。今後のさらなる研究が期待されています。
参考元:
・一般社団法人日本生殖医学会.一般のみなさまへ生殖医療Q&A
・Alahmar Ahmed T:Coenzyme Q10 Improves Sperm Parameters, Oxidative Stress Markers and Sperm DNA Fragmentation in Infertile Patients with Idiopathic Oligoasthenozoospermia,2021
肌の老化予防
コエンザイムQ10は、コラーゲンをつくる細胞を活性化させたり、肌の生まれ変わりのサイクルを整える働きがあると言われています。
コラーゲンが減ると肌の弾力が失われ、たるみやシワなど肌の老化がおこります。また、肌は一定の周期で生まれ変わりますが、老化や肌のトラブルはこのサイクルが乱れることが原因の一つです。
そのため、コラーゲンをつくる過程に関わるコエンザイムQ10は、肌の老化予防につながると期待されています。
ストレスや疲労の緩和
コエンザイムQ10のエネルギーを作り出す働きと抗酸化作用が、ストレスや疲労の緩和につながるとされています。
細胞がつくりだすエネルギーが不足したり、酸化ストレスは疲労の原因にもなるとされ、コエンザイムQ10の働きが疲労緩和を助けてくれると考えられています。
心肺機能の強化
コエンザイムQ10は、カラダの中でも常にエネルギーが必要とされる心臓に多く存在します。そして、心臓のコエンザイムQ10が少なくなると心臓の働きが低下するとされています。
心臓病の方を対象にした試験で、コエンザイムQ10の摂取で運動能力や生活の質が改善された結果が得られた報告もあり今後もさらなる研究が必要とされています。
生活習慣病の予防
コエンザイムQ10の抗酸化作用は生活習慣病の予防にも関与するとされています。
カラダの中で活性酸素がたくさん増えると、細胞が傷つけられ糖尿病や動脈硬化、脂質異常など生活習慣病の原因になるようです。
そのため、抗酸化力のある食べ物を取ることが生活習慣病の予防に役立つと考えられています。
骨粗しょう症の予防
コエンザイムQ10とコラーゲンの同時摂取が骨粗しょう症予防になることが期待されています。
骨粗しょう症とは、骨の強さが低下して骨折しやすくなってしまう病気です。骨はコラーゲンにカルシウムが付着して強度を保ちますが、コエンザイムQ10とコラーゲンを同時に摂取するとカルシウムが付着しやすくなると考えられています。
関節痛の改善
コエンザイムQ10は、関節の痛みを和らげる働きも期待されています。
関節痛は加齢などにより、骨の間にある軟骨が擦りへることでおこります。軟骨はコラーゲンやグルコサミンなどでつくられていて、コエンザイムQ10は軟骨の構成成分をつくる働きを促進するといわれています。
パーキンソン病の予防
パーキンソン病の患者はコエンザイムQ10が欠乏していると言われ、パーキンソン病とコエンザイムQ10の関係性についての研究が進められています。
パーキンソン病とは、脳の異常でカラダの動きに障害がでる進行性の病気です。コエンザイムQ10の摂取で、パーキンソン病における機能の低下の進行を遅らせる可能性についての報告も一部あるようです。
抗炎症作用
コエンザイムQ10の抗酸化作用が炎症反応をおさえると言われています。
そもそも炎症とはカラダを守るための防御反応で、炎症がおこると痛みや腫れなどの症状がみられるようになります。
その炎症が起こる過程で活性酸素がつくられますが、抗酸化力のあるコエンザイムQ10が働くと炎症反応がおさえられることが考えられています。
効果の根拠は十分ではない
上述した効果を含め様々な効果が期待されているコエンザイムQ10ですが、コエンザイムQ10製品の医療の観点からの健康や美容への効果には実はまだ十分な根拠は得られているわけではありません。そのため個人的な判断での治療目的の摂取はおすすめできません。治療になんらかの影響を与える可能性もあるため、体調不良や治療中の人は病院での治療を優先してください。治療目的でのコエンザイムQ10が気になる人はかかりつけ医に相談をしましょう。
コエンザイムQ10はサプリや健康食品で含むものが多く販売されています。ただ、サプリや健康食品は、医薬品ではないため病気の治療を目的としてではなく、あくまで栄養補給の一貫として摂取してください。
参考元:国立健康・栄養研究所.「健康食品」の安全性・有効性情報 コエンザイムQ10について
コエンザイムQ10が不足すると?
私たちのカラダに必要なエネルギーを作りだすコエンザイムQ10。コエンザイムQ10が不足すると、エネルギーを作り出す力が弱る、つまり健康を維持する力が弱くなると考えられています。
健康維持のためにも、不足させたくないコエンザイムQ10。ただ、コエンザイムQ10は20歳をピークとし、その後加齢とともに減少するとされています。心臓、腎臓、肺、肝臓など各臓器にコエンザイムQ10はありますが、たくさんのエネルギーが必要な心臓では特に減少が著しいことが注目されています。
また、何らかの病気がある人ではコエンザイムQ10が不足していると考えられることもあり、コエンザイムQ10製品での摂取が効果的かという研究が進められているようです。
コエンザイムQ10を多く含む食材
コエンザイムQ10は下記のような食材に多く含まれています。コエンザイムQ10は体内でも合成はされますが、加齢とともに減少していきます。健康維持のために、日々の食事でコエンザイムQ10を多く含む食材をバランス良く取っていきましょう。
動物性の食材 | 植物性の食材 |
---|---|
牛肉、豚肉、鶏肉などの肉類 | ほうれんそう、ブロッコリー、じゃがいも、アボカド、大豆、きなこ、ピーナッツなど |
いわし、さば、はまちなどの青魚など | |
イカ、ツナ缶 |
コエンザイムQ10の効率的な摂取方法
コエンザイムQ10を効率的にカラダの中に取り入れるには、油っぽいものとの同時摂取がポイントです。コエンザイムQ10は脂溶性のため、油と一緒に調理すると吸収性がよくなります。コエンザイムQ10を多く含む野菜にドレッシングやマヨネーズをかけて食べるのもおすすめです。
また、オリーブオイルにもコエンザイムQ10は多く含まれています。炒めものを作るときに、いつもの油をオリーブオイルに代えてみてはいかがでしょうか?
コエンザイムQ10の過剰摂取による影響
厚生労働省からは、コエンザイムQ10による明らかな健康被害は確認されていないという報告があります。ただ、コエンザイムQ10を含む食品を食べて、嘔吐や胃腸障害がでたという報告もあるようです。そのため、コエンザイムQ10を含む製品をとる場合は、製品ごとの1日の目安量を守り、過剰摂取しないように注意しましょう。
なお、国内でコエンザイムQ10を含むものとしては、医薬品と、サプリや健康食品などの製品があります。医薬品の場合は一日30mgまでの用量となっていますが、食事からの摂取の上限量は明確になっておらず、1日30mgを超えるサプリや健康食品が多く販売されています。
そのため、コエンザイムQ10製品を取るときは各製品ごとの1日の目安量を守り、体調の変化に注意する必要があります。
参考元:
・厚生労働省.コエンザイムQ10の安全性に関する食品安全委員会への食品健康影響評価の依頼につい
・厚生労働省.コエンザイムQ10を含む食品の取扱いについて.2006
コエンザイムQ10と薬の相互作用
コエンザイムQ10と飲み合わせのよくない薬がいくつか報告されています。そのため、治療中の方はかかりつけ医にコエンザイムQ10の飲み合わせについて確認してから摂取するようにしましょう。
飲みあわせを確認したほうがよい医薬品 | 薬への影響 |
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血をサラサラにする薬(ワルファリン) | 薬の作用が弱くなる可能性がある |
降圧剤 | 薬の作用が強くなる可能性がある |
経口糖尿病薬 |
また、コレステロールを下げる薬(スタチン系)を飲んでいる方だと、コエンザイムQ10の合成も阻害されコエンザイムQ10が欠乏する可能性があるともいわれています。
参考元:福岡県薬剤師会 薬事情報センター.CoQ10と医薬品の飲み合わせ.2018
コエンザイムQ10の隠れた効果にも期待
コエンザイムQ10には、今回紹介した効果以外にもまだ研究によって解明されていない効果があると期待されています。
コエンザイムQ10はカラダの中で重要な機能の働きがあり、なんらかの病気がある人はコエンザイムQ10が減少するとされています。そのため、サプリメントなどで補うことに健康上の意味があるかどうかの研究が注目されています。
まだ、健康や美容については多くの研究が必要とされる私たちのカラダに必要なコエンザイムQ10。過剰摂取には気をつけて、自分にあった取り入れ方をしてみてはいかがでしょうか。