亜鉛が妊活におすすめの理由!男女別に解説
妊活と栄養
2022.11.23

亜鉛が妊活におすすめの理由!男女別に解説

※本記事は管理栄養士が執筆しております。

亜鉛は体の成長と維持、免疫反応の調節に関わるミネラルです。体内でホルモン合成に使われ、排卵や精子の質など生殖機能にも影響します。

この記事では妊活中の男性・女性に向けて、亜鉛の効果や1日の摂取量、亜鉛が多く含まれる食べ物や一緒に摂りたい栄養素を紹介します。亜鉛の欠乏症状や過剰摂取についても解説するので参考にしてください。

⽬次

  1. そもそも亜鉛って?
  2. 亜鉛が妊活中におすすめの理由
  3. 1日の亜鉛摂取量
  4. 亜鉛が豊富に含まれる食品
  5. 亜鉛の吸収を助ける栄養素
  6. 亜鉛の吸収を妨げるもの
  7. 妊活中に合わせて摂りたい栄養素
  8. まとめ

そもそも亜鉛って?

亜鉛は体内で酵素タンパク質の構成要素として、さまざまな酵素反応を活性化させます。筋肉や骨のほか、歯や肝臓、腎臓、皮膚などに存在し、新しく細胞が作られる臓器で必須のミネラルです。

亜鉛は体内では合成されないため食事から摂る必要があり、摂取量の約30%が体に吸収されます。アミノ酸からDNAやタンパク質を合成し、体の成長や維持に関わるほか、ホルモンの合成や免疫反応の調節をサポートします。

体内の亜鉛が不足すると、貧血や味覚障害、皮膚炎や免疫機能低下につながるため注意が必要です。

亜鉛の働き

  • 体の成長や維持
  • ホルモン合成
  • 免疫反応調節
  • 味蕾細胞をつくる

亜鉛が妊活中におすすめの理由

亜鉛は細胞にダメージを与える活性酸素を減らし、生殖機能の老化を予防する効果が期待されます。

セックスミネラルともよばれ、男性ホルモンや女性ホルモンの合成に関わる亜鉛は妊活中の男性・女性に積極的に摂ってほしい成分です。

女性におすすめの理由

亜鉛は女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞刺激ホルモン)やプロゲステロン(黄体形成ホルモン)の合成を促し、生理不順や無排卵を予防します。

亜鉛は細胞分裂に必要であり、排卵や着床に関するホルモンを合成するため、不足すると卵子の質や卵巣の機能が低下し、妊娠しにくくなると考えられています。

男性におすすめの理由

亜鉛は男性ホルモンであるテストステロンの産生に必要です。テストステロンは骨や筋肉を作って脂肪を減らす働きのほか、性機能にも影響します。

亜鉛は精子を作るために必要であり、細胞分裂を促進して精子の運動率や正常形態率を高めます。亜鉛が不足すると精子量の減少や精子の運動率の低下、勃起不全(ED)につながるため注意が必要です。

免疫力アップ

亜鉛はヘルパーT細胞やマクロファージといった免疫細胞を活性化させ、細菌やウイルスから体を守ります。免疫機能は亜鉛の欠乏以外にも、運動不足や睡眠不足、ストレスや加齢によって低下します。

亜鉛を十分に摂り、生活習慣の見直しやストレス解消で免疫力を高めて健康な体をつくりましょう。

1日の亜鉛摂取量

厚生労働省は1日に必要な亜鉛の量を、18〜74歳の男性で11mg、18歳以上の女性で8mgと定めています。また、妊娠中の女性は1日10mg、授乳中の女性は12mgと胎児のために多めに摂ることを推奨しています。

2019年に行われた国民健康・栄養調査では、亜鉛の平均摂取量は男性で9.2mg、女性で7.7mgと算出されました。偏った食事や無理なダイエットを続けると亜鉛が欠乏し、味覚障害を引き起こすことがあります。

1日あたりの亜鉛の推奨量(mg)

男性 女性
18~29歳 11 8
30~49歳 11 8
50~64歳 11 8
65~74歳 11 8
75歳以上 10 8
妊婦(付加量) - 2
授乳婦(付加量) - 4

出典:『日本人の食事摂取基準(2020年版)』

過剰摂取について

耐容上限量はその量を超えて栄養素を摂取した場合、過剰摂取による健康障害のリスクがゼロではないことを示す値です。一般的な食生活で亜鉛の過剰摂取の心配はありませんが、サプリメントの多飲で亜鉛の耐容上限量を超えると、急性亜鉛中毒になるおそれがあります。

症状として吐き気や嘔吐、下痢、頭痛がみられ、過剰摂取が長期にわたると鉄や銅の吸収阻害で貧血や胃の不調を起こし、免疫低下や善玉コレステロールの減少につながります。

1日あたりの亜鉛の耐容上限量(mg)

男性 女性
18~29歳 40 35
30~49歳 45 35
50~64歳 45 35
65~74歳 40 35
75歳以上 40 30

出典:『日本人の食事摂取基準(2020年版)』

亜鉛が豊富に含まれる食品

亜鉛は牡蠣や豚レバー、牛赤身肉や油揚げに多く含まれます。1日に摂る食品数を増やして、さまざまな食品から亜鉛を取り入れましょう。

魚介類

魚介類では牡蠣やかたくちいわし、うなぎに多く含まれます。牡蠣は亜鉛のほかにも葉酸やビタミンB1、ビタミンB12や鉄といったビタミン・ミネラル類を豊富に含み、妊活で必要な栄養素を摂取しやすい食材です。

ただしノロウイルスやビブリオ菌に汚染されていた場合、急性胃腸炎や激しい嘔吐・下痢症状の原因となります。牡蠣は生で食べずに、中まで十分に加熱して食べましょう。

100gあたりの亜鉛の含有量(mg)

食品 100gあたりの亜鉛の含有量(mg)
牡蠣(生) 14
かたくちいわし(田作り) 7.9
うなぎ(かば焼) 2.7
ほたてがい(生) 2.7
まさば(生) 1.1

『出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)』

肉類

肉類では豚レバーや鶏レバー、牛赤身肉に多く含まれます。レバーは亜鉛のほかにも鉄分や葉酸、ビタミンB1やビタミンB2が豊富で、貧血予防や性機能向上におすすめの食材です。

しかし、レバーはビタミンAの過剰摂取につながりやすく、胎児の形態のリスクを高めるため、妊娠を計画している女性は摂りすぎに注意しましょう。

100gあたりの亜鉛の含有量(mg)

食品 100gあたりの亜鉛の含有量(mg)
豚レバー 6.9
牛もも肉(赤身) 4.5
鶏レバー 3.3
豚ロース(赤身) 3.2
鶏もも肉(皮つき) 1.6

『出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)』

大豆製品・ナッツ類

亜鉛は大豆製品やカシューナッツ、アーモンドなどの植物性食品にも多く含まれます。間食にナッツ類を取り入れることで亜鉛のほかにも抗酸化作用のあるビタミンEが摂取できます。納豆は葉酸やビタミン6、カルシウムを多く含み、タンパク質を手軽に摂れる食品です。

100gあたりの亜鉛の含有量(mg)

食品 100gあたりの亜鉛の含有量(mg)
カシューナッツ(揚げ) 5.4
きな粉 4.1
アーモンド(乾) 3.6
油揚げ(生) 2.5
糸引き納豆 1.9

『出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)』

亜鉛の吸収を助ける栄養素

亜鉛の吸収を助ける栄養素として、クエン酸やビタミンCが挙げられます。クエン酸にはキレート作用とよばれる、カルシウムや鉄、亜鉛などのミネラルを包み込んで吸収しやすくする働きがあり、ビタミンCはキレート作用を補助します。

クエン酸はレモンやグレープフルーツなどの柑橘類、お酢、梅干しに含まれ、ビタミンCはパプリカやブロッコリーなどの緑黄色野菜や柑橘類に多く含まれる成分です。亜鉛とともに食事に取り入れましょう。

亜鉛の吸収を妨げるもの

亜鉛の吸収を妨げる成分として、フィチン酸やシュウ酸、タンニンが挙げられます。フィチン酸は米ぬか、小麦などの穀類や豆類に含まれますが、体内で亜鉛や鉄と強く結合し、そのまま排出されることで吸収率を下げるといわれています。

シュウ酸はほうれん草やタケノコのアク、タンニンはコーヒーや緑茶に含まれる成分です。また、アルコールの分解に亜鉛が必要とされるため、飲酒量が多いと亜鉛の消費量が多くなります。

妊活中に合わせて摂りたい栄養素 

妊活中は炭水化物・タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラルの五大栄養素がバランスよくとれる食事を心がけましょう。なかでもタンパク質や葉酸は妊活中に不足しがちな栄養素です。

タンパク質

タンパク質は筋肉や臓器を構成する、人体に欠かせない成分です。妊活で重要な男性ホルモンや女性ホルモンもタンパク質から合成されます。厚生労働省が定めた「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、18〜64歳の男性は1日65g、女性は1日50gの摂取が推奨されています。

加えて妊娠中期の女性は5g、妊娠後期の女性は25g、授乳中の女性は20gの付加量が定められているため、肉や魚、卵や大豆製品を意識して摂ることが必要です。

1日あたりのタンパク質の推奨量(g)

男性 女性
18~29歳 65 50
30~49歳 65 50
50~64歳 65 50
妊婦初期(付加量) - 0
妊婦中期(付加量) - 5
妊婦後期(付加量) - 25
授乳婦(付加量) - 20

出典:『日本人の食事摂取基準(2020年版)』

葉酸

葉酸はビタミンB群の一種でビタミンB12とともに赤血球を形成するほか、DNAの合成に関わる栄養素です。男女ともに1日240マイクログラムの葉酸を摂取することが推奨されています。

葉酸は胎児の発育を促し、神経管閉鎖障害のリスクを減らす働きがあるため、妊活中の女性は不足しないように気をつけましょう。精子のDNA損傷率を下げ、精子の質を高めるために必要な葉酸は、妊活中の男性にも大切な栄養素です。

葉酸の推奨量(マイクログラム/日)

男性 女性
18~29歳 240 240
30~49歳 240 240
50~64歳 240 240
65~74歳 240 240
75歳以上 240 240
妊婦(付加量) - 240
授乳婦(付加量) - 100

出典:『日本人の食事摂取基準(2020年版)』

まとめ

亜鉛は酵素反応の活性化やホルモン合成、免疫反応を調節する人体にとって重要な栄養素です。アミノ酸からDNA合成やタンパク質再合成を行い、女性の卵巣機能や排卵、男性の精子量や精子の運動率など生殖機能にも関わります。

1日の推奨量は18~74歳の男性で11mg、女性で8mg、妊娠中の女性で10mgです。多く含む食品として牡蠣をはじめとする魚介類やレバー、大豆製品があります。サプリメントで亜鉛を摂る場合は、過剰摂取につながらないように注意してください。

亜鉛のほかにも不足しがちなビタミン、タンパク質が十分摂れるよう、妊活中はバランスのとれた食事を意識しましょう。

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