※本記事は理学療法士が執筆しております※
- 40代の妊活で自然妊娠できる?流産のリスクはどのくらい?
- 不妊治療の保険適用条件や治療内容が知りたい
- 40代からの妊活で受精の成功を高める方法はある?
このように悩んではいませんか?
恋や恋愛とは異なり、期限がある出産だからこそ「40代の妊活がうまくいくのか」「子どもが無事に生まれてきてくれるのか」と心配になるものです。
40代からの妊活で、健康で元気な赤ちゃんを迎えたケースは少なくありません。
一方で、20代・30代と比較して流産のリスクが高かったり、不妊治療を検討しなくてはならなかったりするケースが多いのも事実です。
40代の出産の実情と不妊治療、受精の成功率を高める方法を紹介します。
目次
- 40代からの出産ではもう遅い?医学データをもとに解説
- 【男女別】40代からの妊活で確認しておきたいポイント
- 40代から始める妊娠率を高める6つの方法
- 40代からの不妊治療と保険適用条件
- 40代からの妊活は産婦人科や医療機関に相談しよう
40代からの出産ではもう遅い?医学データをもとに解説
- 令和元年の40代の出生数は平成7年と比較して約2.5倍増加している
- 40代の自然妊娠率は30代と比較して約25パーセント低下する
- 40代の妊娠は2~3人に1人の確率で流産のリスクがある
40代の妊活は20代・30代と比較すると、自然妊娠率が低下したり流産リスクが高くなったりするなどハードルがあがる傾向にありますが、決して不可能ではありません。
進歩した医療技術、安全性が保証された妊活サプリメント(栄養補助食品)も「子どもが欲しい」あなたの力になります。
本項目では40代の「出生率・自然妊娠率・流産リスク」の3点を、医学データをもとに解説します。
医学データ1.令和元年の40代の出生数は平成7年と比較して約2.5倍増加している
『出典元:厚生労働省 令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概要』
厚生労働省が発表した『令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概要』によると、40~44歳の出生率は平成17年(2005)では19,750件だったのに対し、令和元年(2019)では約2.5倍の49,191件と増加傾向にあります。
これまで核家族(祖父母が同居していない親子だけの世帯)や重い教育費用の負担、共働きで育児ができないとの理由で出産をためらっていた方が、児童手当や幼児教育・保育の無償化など国の助成制度の充実によって養育しやすい環境になった可能性もあります。
内閣府は、平成28年(2016)に「仕事・子育て両立支援事業」を創設し、事業所内保育の整備やベビーシッター派遣サービスの利用を促進、問題視されている待機児童の解消に向け保育制度の見直しを進めています。
医学データ2.40代の自然妊娠率は30代と比較して約25パーセント低下する
『出典元:日本産婦人科学会ARTデータブック』
日本産婦人科学会が発表した『ART妊娠率・生産率・流産率2018』のデータから、30歳の自然妊娠率が約45パーセントであるのに対し、40歳時点では約27パーセント、45歳時点では15パーセントと、加齢とともに「妊娠できる確率が減少」しているとわかります。
受精卵の着床を助けて妊娠しやすい身体をつくる働きをもつ女性ホルモン「エストロゲン」の分泌量は、20代半ばから30代前半をピークに減少します。
一方で、加齢によって不妊の原因となる子宮筋腫や子宮内膜症など婦人科疾患にかかるリスクは高くなるため、事前に妊娠前検診(婦人科検診)を受診しておくのも自然妊娠の可能性を高める方法の1つです。
医学データ3. 40代の妊娠は2、3人に1人の確率で流産のリスクがある
女性の年齢 | 流産のリスク |
---|---|
30歳 | 6人に1人 |
35歳 | 5人に1人 |
40歳 | 3人に1人 |
45歳 | 2人に1人 |
加齢によって流産のリスクが高くなる傾向がある点は事実ですが、流産の原因は「歳をとること」だけではありません。
生活習慣や母体の健康状態も元気な赤ちゃんの誕生に関係するため「妊活のポイント」をチェックし、「40代から始める妊娠率を高める方法」を実践してみましょう。
【男女別】40代からの妊活で確認しておきたいポイント
40代の自然妊娠は20代・30代と比較して難易度が高くなります。
そのため、あなた自身の身体を知ること、さらにいうと「無事に赤ちゃんが育つ身体状態なのか」の確認することが大切です。
妊活を成功させるポイントを男女別に解説します。
妊活を成功させるポイント~女性の場合~
- 基礎体温の測定
- 産婦人科検診で卵子の状態を確認
妊活を成功させるためには、月経周期や排卵のタイミングを知る必要があります。
ストレスや病気、生活習慣が原因でホルモンバランスが乱れると、基礎体温が安定せず排卵が遅れたり、月経がこなかったりするケースも珍しくありません。
基礎体温が安定しない場合は、卵子の状態の確認とあわせて産婦人科医への相談をおすすめします。
妊活を成功させるポイント~男性の場合~
- 健康診断で精子の状態を確認
- 勃起や射精の状態を確認
加齢による精子量の減少や精子が膀胱へ流れてしまう逆流性射精などの病気が原因で不妊となるケースがあります。
勃起が十分でない、精子がでないなどの症状がある場合は医療機関の受診をおすすめします。
40代から始める妊娠率を高める6つの方法
妊娠率を高めるためには、あなた自身の身体の状態を知り、妊娠に向けてコンディションを整える必要があります。
流産のリスクを少しでも減らすため、子どもの健康的な発育のために妊活をスタートするあなたが今すぐ実践できる妊娠率を高める6つの方法を紹介します。
婦人科検診や健康診断で病気または病気のリスクがないか確認する
ママが服用している薬が原因で赤ちゃんの成長に悪い影響がでる場合や持病の状態によって出産のリスクが高くなるケースがあります。
例えば、血糖値の値が高い糖尿病の女性が妊娠を希望する場合、先天奇形(出生前に生じる身体的な異常)を合併しやすくなったり、糖尿病患者に時折みられる糖尿病網膜症や腎症の症状が妊娠によって悪化したりするリスクがあります。
症状が軽く、身体的な異常がなくても健康診断を受けてはじめて病気と診断されるケースもあるため、母体と赤ちゃんの安全のために定期的に健康診断・婦人科検診を受診しましょう。
ストレスを発散させる
女性ホルモン(エストロゲン)や排卵・月経は脳の視床下部と呼ばれるストレスを感知しやすい部位でコントロールされています。
視床下部が精神的なダメージや強いストレスを感知すると、排卵や月経周期が乱れ妊活がストップするリスクがあるだけでなく、ストレスホルモンが血圧を上昇させたり心拍数を増やしたりする(動悸や息切れ)ため、脳卒中や心筋梗塞などの重大な病気につながるリスクもあります。
自分自身の健康を守るためにも適度にストレスを発散して妊娠しやすい状況をつくりましょう。
厚生労働省のホームページに簡易的なストレスチェックシート、ストレスを減らすためのストレッチ法が掲載されているので、気になる方は確認してみてください。
良質な睡眠を確保する
妊娠を望む45歳未満の女性6,873名を対象とした睡眠と繁殖力(妊娠できる能力)の関係性を調査した研究では、夜間の睡眠障害が、繁殖力の緩やかな低下と関連があったと述べています。
参照:北米の先入観コホート研究における女性の睡眠パターン、シフトワーク、繁殖可能性 - PubMed (nih.gov)
つまり、睡眠不足によって妊娠能力が低下する可能性があるということです。
良質な睡眠を確保して妊娠能力を維持するためには、就寝前にリラックスできる環境をつくったり、日中の活動を活発にしたりする方法が有効だと考えられています。
疲労を溜めすぎない
ストレスによってホルモンバランスが乱れると「疲れ」を感じやすくなります。
ホルモンバランスが乱れてエストロゲンが減少すると、妊娠しにくくなるだけではありません。
プロゲステロン(女性ホルモンの1つ)が増加して血液が子宮に集まるため、血行不良を起こしたり、貧血や倦怠感、頭痛が生じたりと身体の健康に悪い影響をきたすリスクもあります。
妊活中は「子どもが欲しいのに思うようにできない」「家族や友人の反応が心配」などの不安やストレスから疲労を感じる機会が増えることが多いため、疲れを解消できる術をみつけましょう。
例えば、好きな音楽を聴く、適度に運動する習慣をつける、夫と外出するなどの方法があります。
食生活を見直す
食事から摂取した栄養素は、あなたの健康をサポートするだけでなく、妊娠に向けた身体づくりに役立ちます。
特に摂取が勧められている栄養素は、葉酸と亜鉛です。
糖尿病をはじめとする生活習慣病を未然に防ぐためにも、栄養バランスのとれた食生活を送るようにしましょう。
また、日々の健康をサポートする目的で「妊活サプリ」を飲む方法もおすすめです。
葉酸
葉酸は、胎児の細胞分裂や合成をサポートする「のり」や「枝豆」に多く含まれるビタミンB群の一種です。
また、無脳症や二分脊椎、口唇・口蓋裂などの胎児奇形のリスクを軽減する効果が期待できるとして、厚生労働省も妊活中・妊娠中の方の葉酸の摂取を推奨しています。
亜鉛
亜鉛は、精子や卵巣の機能低下を予防する「かき」や「かつお類」に多く含まれるミネラルの一種です。
また、亜鉛は酵素の働きを助ける役割や遺伝物質の合成をサポートする働きも担っているため、妊活中に積極的に摂取したい栄養素の1つです。
体を冷やさない
子宮の冷えは、生理不順や子宮内膜症、無排卵につながるリスクがあるため、妊活中は下半身全体が温まるよう対策する必要があります。
例えば、腹巻や厚みのある肌着を着用してお腹まわりや子宮の冷えを予防したり、自宅内でもスリッパを履いて足元を温めたりする方法がおすすめです。
40代からの不妊治療と保険適用条件
『出典元:厚生労働省 不妊治療の保険適用 』
令和4年(2022)4月に不妊治療の保険適用が開始され、一般不妊治療(タイミング法・人工授精)や生殖補助医療(体外受精や顕微授精)の窓口での負担額が治療費の3割となりました。
保険診療の適用条件は次の表の通りです。
不妊治療開始時点の女性の年齢 | 保険適用回数の上限 |
---|---|
40歳未満 | 1子につき6回まで |
40歳以上43歳未満 | 1子につき3回まで |
不妊治療の方法を1点ずつ解説します。
不妊治療の方法1.人工受精
おすすめするケース | 精子減少症、精子無力症 |
---|---|
おすすめしないケース | 精子の運動率が著しく悪いと判断された方 卵管が閉鎖している方 |
相場 | 保険適用で約16,000円 |
人工授精は、女性の排卵に合わせて洗浄したパートナーの精子を子宮内に注入する治療法です。
子宮内に精子を注入するため、自然妊娠よりも高い確率で受精が成功します。
人工授精の適用
人工授精は、精子減少症や精子無力症など精子に問題がみられる場合に選択するのが一般的です。
精子の運動率が著しく悪い場合や卵管が閉鎖している場合は適用外になります。
人工授精の相場
人工授精の相場は、保険適用の場合で約16,000円です。
身体の状態、受診する医療機関により費用が異なります。
不妊治療の方法2.体外受精
おすすめするケース | 自然受精・人工授精で効果を得られなかった方 |
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おすすめしないケース | 不妊治療のリスクをおさえたい方 |
相場 | 約320,000円 |
体外受精は、体外で受精させた受精卵を妊娠しやすい時期に子宮内に戻す治療法です。
体内での受精が難しい方にも適用でき、不妊治療の中でも高い妊娠率が期待できる方法です。
体外受精の適用
体外受精は男性不妊や自然受精・人工授精で効果が得られなかった方を対象とします。
ただ、不妊治療のリスクを少しでもおさえたい方にはあまりおすすめしません。
排卵時に膣内の細菌がお腹に入ると骨盤内感染症を引き起こしたり出血のリスクがあるためです。
体外受精の相場
体外受精の相場は、約320,000円です。
費用面の問題で体外受精をしない選択をされる夫婦もいますが、実は、次の2つの条件を満たせば国の助成金制度が活用できます。
- タイミング法や人工授精をしても妊娠の見込みが極めて低いと判断された夫婦
- 治療日初日の時点で女性の年齢が43歳未満の夫婦
国の助成金を活用すると体外受精1回あたり最大30万円が給付されます。
最新情報は厚生労働省『不妊に悩む夫婦への支援について』をご確認ください。
不妊治療の方法3.タイミング法
おすすめするケース | 男女ともに不妊の原因がない方 身体へ負担をかけたくない方 |
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おすすめしないケース | 不妊の原因が明確であり、専門的な治療が必要な方 |
相場 | 約3,000円 |
タイミング法は、医師の診断により排卵日を予測して排卵に合わせて性行為をする方法で、不妊治療の初期段階で適用される治療法です。
タイミング法の適用
タイミング法は男女ともに不妊の原因がない場合が対象です。
身体への負担が少ない反面、ほかの不妊治療と比較すると効果が得にくい傾向にあります。
タイミング法の相場
タイミング法の相場は、保険適用の場合で約3,000円です。
ただ、超音波検査の保険適用は月2回が限度であるため、3回目以降は自費となる点に注意が必要です。
受診する医療機関やクリニックにより費用が異なります。
不妊治療の方法4.顕微受精
おすすめするケース | 体外受精で妊娠の兆候があらわれない方 精子の運動率が低い方 女性側が抗精子抗体をもっている |
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おすすめしないケース | 自然妊娠の可能性がある方 |
相場 | 約450,000円 |
顕微授精は、顕微鏡を用いて優れた精子を卵子に直接注入する体外受精の1つです。
体外受精は精子と卵子を自然に受精させますが、顕微授精は人工的な技術を用いて受精させる点で異なります。
顕微授精の適用
顕微授精は、精子の運動率が低いケースや精子が入れない抗精子抗体をもつ場合に適応される治療法です。
そのほか、体外受精によって妊娠の兆候があらわれない時にも適用される場合があります。
顕微授精の相場
顕微授精の相場は、1回あたり約450,000円です。
体外受精と同じく条件を満たせば、国や自治体の助成制度を受けられます。
40代からの妊活は産婦人科や医療機関に相談しよう
40代からの妊活で自然妊娠に成功し、元気な赤ちゃんが生まれたケースは少なくありません。
一方で、保険や助成金制度があるものの高額で身体に負担のかかる不妊治療を検討しなくてはならないケースもあります。
妊活は想像以上に気力と体力を使います。
時に「本当に私達には赤ちゃんができるのだろうか」「終わりのみえない妊活から逃げだしたい」と悩むこともあるでしょう。
不妊や妊活の悩みを、あなたの支えになる家族や友人、そして産婦人科や医療クリニックに相談することが大切です。