結晶セルロースとは?【基本情報・用途・安全性などについて解説】

※本記事は薬剤師が執筆しております※

結晶セルロースとは何かご存知ですか?

結晶セルロースは様々な用途で使用されているため、用途の他に安全性についても把握しておくと役に立ちます。

この記事では結晶セルロースの基本情報から網羅的に解説します。

この機会に結晶セルロースを極めましょう。

目次

    結晶セルロースとは?

    セルロースの結晶部分のみで構成されたのが結晶セルロースです。セルロースは植物の細胞壁構成成分として自然界に存在します。セルロース同様に水や有機溶媒に溶けません。さらに味はなく、化学的に不活性なので、他の化学物質と混合しても変化せず、優れた添加剤です。

    結晶セルロースは化粧品、医薬品や食品に添加し、主成分が効果的にその目的を発揮する補助の役割を果たします。そのため化粧品、医薬品、食品にとってはなくてはならない存在です。

    概要

    結晶セルロースはセルロースの結晶部分で、以下の化学式で表されます。

    結晶セルロースはグルコースがβ-1,4結合したβ-グルカンであり、セルロース系水溶性高分子で、化学的にも化学構造もセルロースと同じです。

    天然セルロースは、分子配列が比較的規則正しい結晶領域と不規則な非結晶領域から構成されており、一般に結晶は60%程度です。

    性質

    構造に親水性のヒドロキシ基(-OH)が多いので一次構造的には水に溶けそうですが、ヒドロキシ基同士で強固な分子内・分子間水素結合を形成するため、結晶になります。

    セルロース分子の間に水が入ることができないので、水や一般的な有機溶媒にも溶けません。白色の粉末状で味はありません。化学的安定性が高く、流動性・崩壊性も良く、化粧品、医薬品や食品などへの用途が多くなっています。

    用途

    結晶セルロースの主な用途は以下の3つです。

    • 化粧品
    • 医薬品
    • 食品

    化粧品では、感触改良、粉体原料の結合、スクラブや乳化の安定などに使われています。

    医薬品では賦形、結合、崩壊、懸濁、安定、滑沢、基剤、コーティング、軟化、分散、流動化などのために、食品では粉末化や流動性の改善などのために用いられています。

    結晶セルロースの化粧品としての用途

    結晶セルロースは原料が植物の細胞壁構成成分なので安価であり、化学的に不活性なので、他の化学物質と混合しても変化せず、優れた添加剤です。

    結晶セルロースは、主に以下の4つの目的で化粧品に用いられています。

    • 感触改良
    • 粉体原料の結合
    • スクラブ
    • 乳化の安定

    メイクアップ製品、化粧下地、ボディケア製品、洗顔料、スキンケア製品、ヘアカラー製品などに使われています。

    以下に1つずつ解説します。

    感触改良

    結晶セルロースは化粧品では感触改良に用いられています。

    感触改良とは製品の使用感を向上させることです。

    結晶セルロースは多孔性粒子で、水を吸着・保持することで粉体の流動性を高め、粒径約10㎛でなめらかな感触を付与するため、粉体の感触を調整することができます。

    主にファンデーションなどの粉系メイクアップ製品やシャンプー製品に使用されています。

    粉体原料の結合

    結晶セルロースは粉体原料の結合に用いられます。結合とは、粉体混合物に結合力を与えて均一かつ安定に成形することです。

    液体を加えて用いますが、粉体粒子は結合溶液によって架橋され、粉体粒子が結合しやすくなります。

    結晶セルロースは独特の不定形な粒子形なので、圧縮成形時、適当な粘着性を付与して低打圧でも容易に粒子同士が絡むようになり、平滑でツヤのある硬い成形物となります。

    主に使用されているのはプレストパウダーなどのパウダー系メイクアップ製品などです。

    スクラブ

    結晶セルロースはスクラブに用いられています。

    スクラブとは細かい粒子を含む洗顔化粧品で、古い角質、皮脂や通常の洗顔では落ちない汚れなどを物理的に取り除いて肌の表面を整える目的があります。

    使われている粒子は製品ごとに異なり、種子や塩、砂糖などです。

    結晶セルロースは水や油を吸着する多孔性粒子であり、粒径200-700μmの球状ビーズが物理的に皮膚の汚れや古い角質を吸着・除去します。

    スクラブ剤として添加しているのは、洗顔料、ピーリング製品やボディケア製品などです。

    乳化の安定

    結晶セルロースは乳化の安定のために用いられています。

    乳化とは、油や水のように本来混ざり合わないものが均一に混ざり合う状態のことです。

    乳化状態を分離させないで長く持続させるためには、添加剤を加える必要があります。

    結晶セルロースは水に溶解せず、棒軸状粒子同士が絡むので粘度を増し、さらに水や油が界面に吸着し乳化状態を安定させるので、製品の乳化安定化目的で様々な製品に使用されています。

    乳化の安定を目的に添加しているのは、ヘアカラー製品などです。

    結晶セルロースの化粧品への配合量

    結晶セルロースの配合量については、以下に掲げた2009年の米国からの報告があります。

    【結晶セルロースの配合製品数と配合量の調査(抜粋)】

    製品カテゴリ配合製品数製品における配合量の範囲(%)
    アイライナー1
    アイシャドー22–5
    アイローション1
    マスカラ21
    ヘアコンディショナー7
    ファンデーション10.9–25
    クレンジング(クリーム、化粧水、乳液)70.06–7
    フェイス、ネッククリーム11
    ハンド、ボディクリーム20.2–16
    保湿化粧水319
    マスク&パック20.0001–57
    日焼け止め製品0.3–2
    合計210.0001–57

    Amended Safety Assessment of Cellulose and Related Polymers As Used in Cosmetics

    上記の報告からも分かるように、化粧品への配合量は0.0001–57%と幅広いです。

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    結晶セルロースの医薬品としての用途

    結晶セルロースは医薬品添加剤の1つです。

    賦形、結合、崩壊、懸濁、安定、滑沢、基剤、コーティング、軟化、分散、流動化などの目的で、経口剤、外用剤、歯科用外用剤および口中用剤などに用いられています。

    結晶セルロースは、白色、水に溶けない、無味、化学的に不活性なので、薬物と混合しても変化せず、優れた賦形剤です。

    打錠機での圧縮で粒子が絡みやすいため、成型に容易で錠剤の結合剤として用いられています。

    また水分で容易に崩壊、さらに流動性がよいため、錠剤の崩壊剤としても優れています。

    結晶セルロースの食品としての用途

    結晶セルロースは様々な食品に添加物として用いられています。

    結晶セルロースが成形性、吸着性、造粒性 に優れているので、成形物が硬く、粉末化が容易、流動性を改善するためです。

    細かいチーズ同士の固結防止のために粉チーズやピザ用チーズに用いられています。

    ドレッシングへの添加は乳化、懸濁安定性の付与のためです。

    アイスクリーム、ソフトクリームには粘土を高めないホエー分離の抑制、サッパリ感の付与のために用いられています。

    結晶セルロースの安全性について

    結晶セルロースは自然界の植物が原料で、体内で消化・吸収されず、便として体外へ排出されるので、安全性は高いです。

    結晶セルロースの安全性については次の2つの面から検討されています。

    • 毒性
    • 刺激性

    以下に1つずつ解説しますので、この機会に確認しておきましょう。

    毒性について

    ヒト及び動物実験の毒性データからは、結晶セルロースがGood Manufacturing Practice(GMP、医薬品の製造管理及び品質管理の基準)に従って生産される医薬品・食品に使用される時にはヒトへの毒性を示すものはありません。

    実験動物において、反復投与毒性、遺伝毒性、生殖発現毒性を行いましたが、得た結果は「毒性なし」でした。

    ラットの気管支内投与でセルロース塵が肺へ細胞毒性を示すことが認められました。

    ヒトでの知見からは、鉄の吸収、ミネラルバランス、代謝制御や血清脂質、エストロゲン代謝への影響はなく、ビタミンA吸収促進及び胆汁酸排泄正常化に影響することが分かっています。

    日本医薬品添加物協会

    結晶セルロースが食品に使用される時にはヒトへの毒性を示すものはありません。

    刺激性について

    結晶セルロースでは、現時点でヒトへの刺激性を示す実験結果は報告されていません。

    ウサギもしくはモルモットにおいて、皮膚刺激性、皮膚感作性(アレルギー性)への影響はない、もしくは認められませんでした。

    ウサギにおいて、極微小ながら眼刺激性への影響が認められました。

    日本医薬品添加物協会

    眼刺激性については、ウサギにおける眼刺激データで無刺激性との結果があります。

    安全データシート(SDS)

    どちらの結果もヒトへの皮膚及び眼への刺激性を示唆する根拠にはなりません。

    GMPに即して生産される化粧品、医薬品や食品に使用時、結晶セルロースはヒトへの刺激性については問題がないと言えます。

    結晶セルロースの製造方法

    結晶セルロースを製造する方法は以下の通りです。

    • 乾燥しているセルロースを圧縮する
    • 圧縮セルロースを部分的に分解する
    • 部分分解したセルロースから微結晶セルロースを製造する

    原料はトウヒ、パイン、モミやカラマツのような軟質木材及びカバノキやカエデなどの木材です。

    圧縮は一般的な圧縮機で行われます。

    部分分解は酸性溶媒中での加水分解、酵素的分解などの方法を適宜用いることが可能です。

    部分分解後、中和、濾過、精製水による洗浄、乾燥、粉砕及び粒度に応じた顆粒分級を行い、結晶セルロースは生成されます。

    結晶セルロースは用途も幅広い

    結晶セルロースの用途と安全性について解説しました。

    結晶セルロースは化粧品、医薬品、食品など用途が多岐に渡っていますが、その安全性も基本的には高く、市販されている商品として購入し使用する場合には問題ありません。

    結晶セルロースの用途や安全性を知ることで、身近な普段使っている化粧品、医薬品や食品への理解が深まったのではないでしょうか。

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