※本記事は管理栄養士が執筆しております※
「葉酸が妊活にいいと聞くけどどんな効果があるか知りたい」「1日にどのくらいの葉酸を摂ったらいいの?」という人は葉酸の効果や1日の推奨摂取量のほか、葉酸がどの食材に多く含まれるかも知っておきましょう。葉酸は欠乏症以外に、過剰摂取による健康への影響もあるため注意が必要です。この記事では葉酸の効果や推奨量に加え、葉酸を健康的に摂取するための情報を網羅的に解説しています。ぜひ妊活中の食生活に役立ててください。
⽬次
- 葉酸とは?
- 葉酸の効果や働き
- 葉酸が不足すると?
- 葉酸を多く含む食材
- 葉酸の効率的な摂取方法
- 葉酸の副作用【過剰摂取】
- 葉酸と薬の相互作用
- 葉酸の摂取量を再確認しよう
葉酸とは?
葉酸はビタミンB群の1つであり、水溶性ビタミンとして緑黄色野菜や果物、レバーに多く含まれています。ほうれん草から発見された成分であるため葉酸と名づけられ、ラテン語で「葉」を意味する「folium」から「folic acid」とよばれます。ほかにもビタミンB9や物質名であるプテロイルモノグルタミン酸ともよばれ、ビタミンB12とともに貧血予防やDNA・アミノ酸の合成に関わる補酵素として働く栄養素です。
葉酸の効果や働き
葉酸は妊婦や妊活中の男性・女性が積極的に摂りたい栄養素です。男性の妊活サポートや胎児の神経管閉鎖障害のリスクを軽減する以外にも、貧血改善や代謝促進、認知症予防に関する働きがあります。
- 男性妊活サポート
- 神経管閉鎖障害のリスク軽減
- 貧血の改善
- 美肌効果
- 美髪効果
- 新陳代謝の促進
- 認知症の予防
- 循環器疾患の予防
- うつ病の予防
上記9つの効果について詳しく解説します。
男性妊活サポート
葉酸の適切な摂取は、男性の妊活において効果的です。アメリカのカリフォルニア大学の研究で、葉酸を意識的に摂ると精子の染色体異常が起こりにくくなることがわかっています。オランダのロッテルダムの研究では、精液中の葉酸濃度が高いほど精子のDNA損傷度が低くなることが示されました。精子細胞にある染色体と、染色体やミトコンドリア内にあるDNAに異常があると、精子の質が低下し受精しにくくなります。細胞分裂やDNA合成に関わる葉酸を十分に摂りましょう。
神経管閉鎖障害のリスク軽減
葉酸の十分な摂取により、細胞の産生や分裂を促進して胎児の神経管閉鎖障害のリスクを減らすことができます。神経管閉鎖障害は脳や脊髄のもととなる神経管が正常に作られない障害で、運動や排せつに影響を及ぼします。胎児の神経系は妊娠初期から作られるため、妊娠1カ月以上前から妊娠3カ月までは積極的な葉酸摂取が必要です。
貧血の改善
葉酸は造血作用があり、正常な赤血球の形成に不可欠なビタミンです。貧血は男性よりも月経がある女性に起こりやすい症状です。めまいや立ちくらみなど貧血の症状がある人は葉酸が不足しないよう注意し、鉄分や良質なタンパク質を摂りましょう。
美肌効果
葉酸は肌のターンオーバーに関わり、肌の健康を保つために必要です。肌の表皮細胞は4週間で生まれ変わるといわれますが、睡眠不足や運動不足といった生活習慣の乱れや紫外線、乾燥によって周期が乱れ、肌の調子が悪くなります。葉酸をはじめとしたビタミン、ミネラルを十分に摂り、生活習慣を見直すことで肌をきれいに保ちましょう。
美髪効果
葉酸により髪の成長が促され、枝毛予防や白髪の増加予防につながります。葉酸以外にもタンパク質や鉄分を十分に摂り、髪の健康を守りましょう。髪の主成分はケラチンとよばれるタンパク質で、数種類のアミノ酸が結合してできています。また、鉄分が不足すると抜け毛や髪が細くなる原因となります。
新陳代謝の促進
葉酸は代謝を促進させる働きがあります。体内のさまざまな酵素反応に補酵素として関わっている葉酸を、十分に摂ることで細胞の産生や再生、細胞分裂が活発に行われます。
認知症の予防
葉酸は認知症の予防にも効果的です。アミノ酸の一種であるホモシステインの血中濃度が高くなると認知症や骨粗しょう症、動脈硬化などさまざまな病気の発症リスクが上がるといわれます。葉酸はホモシステインを分解する働きがあるため、認知症の予防効果が期待されています。
循環器疾患の予防
葉酸のホモシステインを分解する働きは、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患や動脈硬化といった循環器疾患の予防にも注目されています。血液中のホモシステインの濃度を下げることで血管を正常な状態で維持します。
うつ病の予防
カテコールアミンという物質の生成に関わる葉酸は、うつ病の予防に必要な栄養素です。カテコールアミンは副腎で合成される神経伝達物質の総称であり、アドレナリン・ノルアドレナリン・ドーパミンに分けられます。カテコールアミンが不足すると意欲の低下や脱力感など精神的な症状が出て抑うつ状態につながりやすくなります。
葉酸が不足すると?
葉酸の1日に推奨される摂取量と欠乏症状について解説します。葉酸は一般的に不足しにくいといわれますが、成長期の子どもや妊娠している女性、偏った食事をしている人は注意が必要です。
1日の推奨摂取量
厚生労働省の基準によると、葉酸の1日の推奨量は男性・女性ともに1日240マイクログラムであり、妊婦や授乳婦には付加量が定められています。胎児の神経管閉鎖障害のリスクを下げるため、妊娠を計画している女性も妊婦同様240マイクログラムの付加が推奨されます。
葉酸の推奨量(マイクログラム/日)
男性 |
女性 |
|
---|---|---|
18~29歳 |
240 |
240 |
30~49歳 |
240 |
240 |
50~64歳 |
240 |
240 |
65~74歳 |
240 |
240 |
75歳以上 |
240 |
240 |
妊婦(付加量) |
- |
+240 |
授乳婦(付加量) |
- |
+100 |
出典:『日本人の食事摂取基準(2020年版)』
葉酸欠乏症の症状
葉酸の摂取不足により、体内で欠乏状態が続いたときの症状として貧血や疲れやすくなるなど、以下のものが挙げられます。
- 貧血
- めまい
- 立ちくらみ
- 怒りっぽくなる
- 疲れやすくなる
- 息切れしやすくなる
長期的な欠乏や重度の欠乏症の場合、舌が赤くなって痛むといった症状や下痢、味覚の低下が起こり、抑うつや認知症につながりやすくなります。
葉酸欠乏症の治療方法
日本人の一般的な食生活では葉酸不足は起こりにくいといわれますが、葉酸の欠乏症状がみられる場合は、治療としてサプリメントや葉酸製剤によって葉酸を補います。妊活中や妊娠初期、授乳期など葉酸が多く必要な時期に葉酸のサプリメントで不足分を補う場合は、過剰摂取にならないよう注意しましょう。
葉酸を多く含む食材
葉酸が多く含まれる食品を紹介します。葉酸は名前の通り、葉物野菜に多く含まれますが、植物性の食品だけでなく動物性の食品にも多く含まれます。普段の食事に積極的に取り入れてください。
葉酸は水溶性のビタミンであり、調理によって損失しやすい栄養素です。茹でるよりも炒める、煮込んでスープにする調理の方が葉酸を効率よく摂れます。
動物性の食品
動物性の食材で葉酸を多く含むのは鶏や牛・豚のレバー、チーズやイクラ、さくらえびです。レバーはタンパク質やビタミンが豊富に含まれる食材ですが、ビタミンAの過剰摂取につながりやすいため妊娠中の摂取は控えましょう。
食品に含まれる100gあたりの葉酸量(マイクログラム)
レバー(鶏) |
1300 |
レバー(牛) |
1000 |
イクラ |
100 |
プロセスチーズ |
27 |
さくらえび(素干し) |
230 |
出典:『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』
植物性の食品
植物性の食材で葉酸を多く含むものとして、ほうれん草や枝豆、ブロッコリー、モロヘイヤや納豆が挙げられます。納豆は調理の必要がないため気軽に摂りやすく、カルシウムや鉄などのミネラルも豊富であるため妊活中におすすめしたい食材です。
食品に含まれる100gあたりの葉酸量(マイクログラム)
ほうれん草 |
210 |
枝豆(ゆで) |
260 |
ブロッコリー |
220 |
モロヘイヤ |
250 |
納豆 |
120 |
出典:『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』
葉酸の効率的な摂取方法
葉酸を食材以外から効率的に摂る方法として、サプリメントやプロテインパウダーがあります。簡単に摂取できる分、葉酸やほかの栄養素の過剰摂取につながりやすいため食品表示を確かめ、摂取量を守って利用しましょう。
葉酸の副作用【過剰摂取】
葉酸の過剰摂取により亜鉛の吸収阻害や、ビタミンB12欠乏で起こる神経障害が見つけにくいことが挙げられます。葉酸は水溶性ビタミンであり、食事から摂りすぎた場合は代謝されずに排せつされますが、サプリメントから葉酸を摂る場合は注意が必要です。
厚生労働省が定める食事摂取基準では、1日あたり18〜29歳の男女で900マイクログラム、30〜64歳で1000マイクログラムを超えないよう耐容上限量が設定されています。
葉酸と薬の相互作用
葉酸のサプリメントと薬を併用する場合は、かかりつけ医に相談しましょう。健康食品と薬の併用による安全性ははっきりしていないものが多く、葉酸では抗がん剤のフルオロウラシルやカペシタビンの排せつを遅らせるとの報告があります。サプリメントの摂取により薬の副作用が軽減される例もありますが、妊活中はサプリメントや薬の服用に慎重になる方が多いため、気になることは医師に相談しましょう。
葉酸は男性も摂取したい成分である
葉酸は胎児の神経管閉鎖障害のリスクを下げるため、妊活中や妊娠中の女性には欠かせない成分であるとともに、精子の細胞分裂や正常形態率に関わるため男性も積極的に摂りたい栄養素です。主食・主菜・副菜のそろったバランスのよい食事を心がけましょう。
葉酸の摂取量を再確認しよう
葉酸は水溶性ビタミンの1つであり、造血作用やDNA・アミノ酸の合成に必要な栄養素です。体内の酵素反応をサポートし、髪や肌の健康、代謝の促進や認知症予防にも関わります。普段の食生活で不足することは少ないといわれますが、妊活中の男女や妊娠している女性は不足しないよう意識して摂りましょう。サプリメントを利用する際は成分表示をよく読んで過剰摂取につながらないように気をつけましょう