※本記事は管理栄養士が執筆しております※
妊活中に摂りたい栄養素のひとつに、Lカルニチンがあります。
Lカルニチンが体内でどういう働きをするのか、どのような食品に含まれているのかはご存じでしょうか。今回は、Lカルニチンの効能、多く含まれる食品、おすすめの食べ方などを解説していきます。
妊活中の食事は、ひとつの食品や栄養素を摂取するのではなく、様々な食品をバランス良く食べていくことが大切です。食事が極端に偏ると健康に影響が出る可能性があります。
今回はLカルニチンが含まれる食品を紹介していきますが、妊活中は他の食品と一緒にバランスよく摂取していきましょう。
目次
- カルニチンとは?
- カルニチンとLカルニチンの違い
- Lカルニチンは男性の妊活におすすめ
- 摂取するときの注意点は?
- カルニチンの摂取不足
- カルニチンの過剰摂取
- カルニチンを多く含むおすすめの食べ物をランキング順に紹介
- Lカルニチンを効果的に摂取するには?
- Lカルニチンの摂取量の目安
- 男女別妊活中の摂取量の目安
- 妊活中の女性はLカルニチンを意識して摂るべき?
- 妊活中は男性でも栄養バランスを意識した食事を!
- まとめ
カルニチンとは?
カルニチンはアミノ酸由来の物質で、必須アミノ酸のリジンとメチオニンから生成されます。食品からの摂取がほとんどですが、人の体内でも生成されます。ほぼすべての細胞に存在するといわれ、主なはたらきは脂質をミトコンドリアに運び、エネルギーの産生を補助することです。
脂質をエネルギーに変換する場所はミトコンドリアです。脂質(脂肪酸)は単独ではミトコンドリアの膜を通れませんが、Lカルニチンと結合することで膜を通過できるようになります。ミトコンドリアに運ばれた脂質は細胞内で酸化(燃焼)され、エネルギーを産み出します。
糖質が瞬発的なエネルギー産生を行うのに対し、脂質は持続的なエネルギー産生を担います。骨格筋や心筋に多く存在し、持続的にスムーズに筋肉細胞が働き続けるためのサポートをします。
カルニチンとLカルニチンの違い
カルニチンは、L-カルニチン、D-カルニチン、アセチル-L-カルニチン、プロピオニル-L-カルニチンなど多く存在し、その物質の総称のことを指します。
カルニチンはL-カルニチンとD-カルニチンに分けられ、お互いの分子内の結合が鏡像異性体の関係にあります。鏡像異性体とは、右手と左手を鏡のように手のひら同士だとぴったり重ね合うことができますが、同じ向きで重ならない様子と似ています。L型もD型も対になるような似た構造を持ちますが、L-カルニチンのみが体内で活性があり、植物に含まれているのもL-カルニチンです。
脂肪燃焼をサポートする働きはL型のみが持つ生理作用で、D型は体内でL型の吸収や作用を阻害することが知られています。
Lカルニチンは男性の妊活におすすめ
カルニチンは男性ホルモンのテストステロンの働きを活性化させるという報告もあります。
テストステロンなどのホルモンは、それぞれが作用する受容体(レセプター)とくっつくことで効果を発揮します。カルニチンはレセプターの数を増やし、活性化する効果があるとされ、男性の活力向上、ED(勃起不全)などの生殖機能の改善効果が期待できます。
カルニチン濃度は精子濃度と正の相関があることが研究でわかっています。。60名の不妊男性患者にL-カルニチンなどを含むサプリメントを一定期間の間摂取させたところ、40%がEDを改善したという報告もあります。これらのことから、Lカルニチンは妊活中の男性が摂取したい栄養素のひとつといえます。
摂取するときの注意点は?
カルニチンは筋肉細胞に多く含まれることから、赤身の肉や動物性の食品に多く含まれています。日常的に赤身肉や動物性食品を食べる人は、1日あたり約60~180mgのカルニチンを摂取しているといわれています。余剰に摂取しても腎臓から尿中に排泄されるため、L-カルニチンは食品から食べても副作用がほとんどないとされています。
カルニチンの摂取不足
カルニチンの欠乏は、アミノ酸(主に動物性食品)の摂取不足や、カルニチンの輸送システムの遺伝性疾患、特定の疾患(慢性腎不全など)などによって引き起こされます。カルニチンの欠乏症は、筋肉代謝の異常により、ミオパチー、低血糖、心筋症などを引き起こします。遺伝性疾患では、通常5歳までに心筋症、骨格筋の脱力、低血糖などの症状が現れます。
カルニチンの過剰摂取
カルニチンサプリメントを約3g/日摂取した場合、吐き気や嘔吐などの消化器症状や、体臭が生臭くなるなどの症状を引き起こす可能性があります。まれに尿毒症状における筋力低下、発生性疾患を有する患者が発作を起こす場合もあります。
通常1日約60~180mg/日のカルニチンを摂取しているといわれることや、過剰に摂取した分は尿として排出されることなどから通常の生活をしていれば過剰摂取の心配は少ないです。
カルニチンを多く含むおすすめの食べ物をランキング順に紹介
カルニチンはアミノ酸の一種で、骨格筋や心筋などに多く存在します。赤身の肉に多く含まれ、赤色が濃い程多く含まれているといわれています。ヤギや牛肉、豚肉などに多く、野菜にも含まれていますが含有量は少ないです。
カルニチンを多く含むおすすめの食べ物:1位は羊肉(赤身)
羊肉(赤身)100g中に含まれるカルニチンは167.8mgです。
ラム(子羊)よりも成羊の方がカルニチンの含有量は多いです。カルニチンは脂質の代謝に深く関わり、血中の中性脂肪や悪玉コレステロールの値を改善し、肝臓への脂肪の蓄積を抑えるなどの働きもあります。羊肉の脂質は飽和脂肪酸のステアリン酸が多く、冷めると固まりやすく、やや消化されにくいことが特徴です。
おすすめの食べ方は、焼いて脂を落としてから熱いうちに食べることができる焼肉です。
カルニチンを多く含むおすすめの食べ物:2位は牛肉(赤身)
牛肉(赤身)100g中に含まれるカルニチンは76mgです。
牛肉におけるカルニチンの含有量は月齢による影響が大きく、月齢が進んだ成牛の方が多いです。豚肉や鶏肉よりも多くの亜鉛や鉄分を含んでいます。亜鉛は体の成長やホルモンの合成、性ホルモンの分泌の調整に関わります。鉄分も含まれるため、貧血予防の効果が期待できます。また、タンパク質も豊富に含まれており、皮膚や爪、血液、ホルモンや酵素などの材料となります。牛肉の鉄分はビタミンCを一緒に摂ると吸収率が上がるため、緑黄色野菜と一緒に調理をすることがおすすめです。
カルニチンを多く含むおすすめの食べ物:3位はハム・ソーセージ
ハム・ソーセージ100g中に含まれるカルニチンは28.7mgです。
ハム・ソーセージは、豚肉が主な原材料です。豚肉にはカルニチンが豊富に含まれています。そのため、豚肉を用いて作られたハムやソーセージにもカルニチンは含まれています。
生肉と比較して調理の手間が少ないことから、利用しやすいです。
ハムやソーセージはたんぱく質も含まれているため、手軽にたんぱく質やカルニチンを摂取することができます。スープやサラダなどに加えると、塩味がアクセントになります。
カルニチンを多く含むおすすめの食べ物:豚肉(赤身)
豚肉(赤身)100g中に含まれるカルニチンは21mgです。
豚肉はビタミンB1を豊富に含んでいます。ビタミンB1は糖質の代謝、末梢神経の正常な働きを促し、疲労の原因となる乳酸の蓄積を防ぐことなどから、疲労回復効果が期待されています。日常的に食べられている鶏肉や豚肉よりもビタミンB1が豊富で、含有量は5~10倍と多く、食品全体のなかでもトップクラスです。そのため、疲労回復=豚肉というイメージがあります。豚肉は牛肉に比べ寄生虫がつきやすいので、しっかり火を通して食べましょう。
カルニチンを多く含むおすすめの食べ物:豆乳
豆乳100g中に含まれるカルニチンは5.7mgです。
豆乳は豆腐の製造過程でできるもので、豆乳、調整豆乳、豆乳飲料の3つにわけられています。大豆たんぱく質、大豆イソフラボン、大豆オリゴ糖が豊富です。
大豆たんぱく質は血中コレステロールを下げる働きがあり、イソフラボンにはがんの発生予防効果や骨粗鬆症の予防効果などが期待されています。大豆オリゴ糖は腸内細菌であるビフィズス菌の働きを活性化し、腸内環境を整えてくれます。そのまま飲むこともできますが、鍋やスープに用いることで他の食材も一緒に摂りやすいです。
特にLカルニチン含有量が多い食べ物と食べ方を紹介
赤身肉にカルニチンが多く含まれていますが、肉の種類や月齢によって含有量は大きく変わってきます。次は、特にカルニチンが豊富な食品を紹介していきます。
マトンのロース
マトンとは生後1年以上の成羊の肉のことです。ラムは生後1年未満の子羊の肉です。
羊肉(マトン)のロース100gにはカルニチンが191mg含まれています。
同じ部位でも、羊肉(ラム)のロースのカルニチンは半分近く少ないです。
カルニチンを効率的に摂取したい場合は、ラムよりもマトンを選びましょう。
焼肉などで余分な脂を落としながら食べると胃もたれを起こしにくいです。
鶏レバー
鶏レバー100g中には94mgのカルニチンが含まれています。
鶏肉は牛肉や豚肉、羊肉に比べ脂肪が少ないです。また、皮の部分に大半の脂が集中しているため、皮をとりのぞけばダイエット中の方も脂肪を気にせず食べることができます。
鶏肉のたんぱく質は肉の繊維が細くやわらかいため、たんぱく質の消化吸収率が高く、昔から効き目の高い滋養食として愛用されてきました。レバーの臭みが気になる場合は、香味野菜と調味液で漬け込んでから焼くと匂いが薄れます。
Lカルニチンを効果的に摂取するには?
カルニチンは3食の食事から摂ることが基本とされ、不足する場合はサプリメントで補うことも有用と考えられています。1度に摂るよりも1日数回に分けて摂ることが勧められています。過剰や不足はそれぞれ健康被害を起こす可能性があるため、適度な摂取を心がけましょう。
カルニチンは脂質代謝の手助けをしますが、脂質が代謝されエネルギーに変換されるには、運動により筋肉を動かし、脂肪を燃焼させる必要があります。ダイエット効果を期待する場合は、カルニチンを食品から摂取することだけでなく、日常的に体を動かすことも意識しましょう。
Lカルニチンの摂取量の目安
日本では、カルニチンの食事摂取基準や推奨栄養所要量はありません。しかし厚生労働省は、過剰なカルニチン摂取を防ぐことを目的に、外国の摂取目安量を参考にして、1日の摂取上限の目安量を約 1000mg/日としています。
男女別妊活中の摂取量の目安
外国の基準を参考に、日本ではカルニチンの摂取上限量は約1000mg/日とされています。
肉や動物性食品を食事として摂取している人は、1日約60~180mg/日のカルニチンを摂取しているといわれています。過剰に摂取した分は尿として排出されることなどから通常の生活をしていれば過剰の心配は少ないです。
これらのことから、妊活中の男女のカルニチン摂取量は1日1000mgを超えない範囲で、肉や他の食品をバランスよく適度に摂っていけば過不足の心配は少ないと考えられます。
妊活中の女性はLカルニチンを意識して摂るべき?
カルニチンの摂取が男性ホルモンの生成をアップし、生殖機能を改善させたという報告があることから、妊活という意味では、カルニチンの摂取は女性よりも男性側にメリットが多いです。
カルニチンは脂質の代謝を促し運動時の脂肪燃焼効果をアップさせるため、ダイエット効果が期待できます。
体重を落すためにカルニチンが豊富な食品やサプリメントを過度に摂取することは危険ですが、健康促進という意味では適量であれば女性にとってのカルニチンの摂取はプラスになりうるでしょう。
妊活中は男性でも栄養バランスを意識した食事を!
カルニチンは脂肪燃焼効果や男性ホルモンの活性化や生殖機能の改善効果が期待できることなどから、妊活中に摂りたい栄養素のひとつといえます。
しかし、カルニチンの過剰な摂取は栄養素や食事の偏りを生じ、健康への被害を引き起こすことにつながります。
妊活中の男性に特に有用な栄養素のひとつであるカルニチンを安全に摂るためにも、バランスのよい食事を意識していきましょう。
まとめ
【カルニチンとは】
アミノ酸の一種、筋肉細胞に多く存在している。
食品では赤身肉に多い。
【カルニチンのはたらき】
カルニチンは妊活中に摂りたい栄養素のひとつで、特に男性にメリットが大きいことが知られています。赤身肉に多いことから、適度に動物性食品を摂ることで不足の心配は減るでしょう。栄養の過不足は健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、全体の食事のバランスが偏らないように気をつけましょう。