ビタミンAの効果や働き|欠乏によるリスクと摂取時の注意点とは?
妊活と栄養
2022.11.05

ビタミンAの効果や働き|欠乏によるリスクと摂取時の注意点とは?

※本記事は薬剤師が執筆しております※

妊活に備えてまずは栄養管理を徹底したいけど何が大事かわからない。ビタミンAが良いって聞いたので、その効果やリスクについて確認しておきたい。このように悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

令和元年の国民健康・栄養調査結果によると、妊活世代を含むビタミンA摂取量は、国が定める推奨量を下回っている人が多いことが予測されています。

ビタミンAは卵子や胎児の発育に重要な栄養素の一つである一方で、妊娠中の過剰摂取における胎児への影響も懸念されることから、過不足ない適正用量を摂取する必要があります。

この記事ではビタミンAの妊活における効果や欠乏・過剰によるリスク、ビタミンAが多く含まれる食材などについて解説します。ビタミンAについて知りたい方はぜひ最後までご覧ください。

⽬次

  1. ​ビタミンAとは?
  2. ビタミンAの効果や働き
  3. ビタミンA不足による影響とは?
  4. ビタミンAを多く含む食材
  5. ビタミンAの効率的な摂取方法
  6. ビタミンAの副作用【過剰摂取】
  7. ビタミンAと薬の相互作用
  8. ビタミンAの摂取量を再確認しよう

ビタミンAとは?

ビタミンは全13種類あり、ビタミンの性質から水溶性ビタミン、脂溶性ビタミンに更に分類されます。ビタミンAは、レチノールやレチナール、レチノイン酸、レチニルエステルなどのレチノイド類の総称であり、脂溶性のビタミンの一つに分類されます。

脂溶性ビタミンは、過剰摂取すると体内へ蓄積され健康障害を引き起こすことから、上限摂取量の基準が設けられています。また、緑黄色野菜などの植物に含まれるβ(ベータ)-カロテンは、小腸でビタミンAに変換されることからプロビタミンAと呼ばれています。一方で、β-カロテンの全てがビタミンAに変換されるわけではなく、吸収効率やビタミンAへの変換率を考慮すると、β-カロテンはレチノールの6分の1の効力に相当します。

ビタミンAの効果や働き

ビタミンAにはどのような効果や働きがあるのでしょうか?

  • 妊活サポート
  • 目の正常な働きを維持する
  • 皮膚や粘膜を健康に保つ
  • 赤ちゃんの病気を予防する
  • 光老化を予防する
以下で詳しく解説します。

男性妊活サポート

男性が妊活時にビタミンAを摂取すると、活性酸素の発生や働きを抑制し、精子の老化を防止する効果があるといわれています。一方で、人を対象としたビタミンAの直接の摂取が精子へ及ぼす影響に関する臨床研究は限られており、そのエビデンス構築には今後の更なる検討が必要とされています。

女性妊活サポート

妊娠中の女性は、胎児の成長や組織維持のため通常より多くのビタミンAが必要になります。

女性の妊活におけるビタミンAの果たす役割について紹介します。

受精卵の着床率を上げる

ビタミンAは子宮の環境に重要なビタミンの一種とされ、ビタミンAが欠乏してしまうと子宮内膜に厚みがなくなり、受精卵の着床に影響を与えるとされています。

赤ちゃんの病気を予防する

ビタミンAは、一般的に目や皮膚、粘膜の健康を保つのに関わっています。母乳中に含まれていることから、完全母乳栄養の赤ちゃんにとってはお母さんのビタミンA欠乏が悪影響を与える可能性があります。欠乏した際に気づきやすい症状は、眼球乾燥症です。

卵子の老化を防ぐ

ビタミンAは活性酸素の発生や働きを抑制し、活性酸素そのものも取り除く作用があることから、卵子の老化を防止する効果が期待できます。

目の正常な働きを維持する

ビタミンAの欠乏症に「夜盲症(やもうしょう)」があります。

「夜盲症」とは、暗いところで物がみえにくくなる症状のことです。

このようにビタミンAには、目の健康を維持するための重要な役割があります。

皮膚や粘膜を健康に保つ

ビタミンAは細胞の成長や分化にも関わっており、不足すると肌や粘膜の健康状態を保てなくなります。皮膚が乾燥しやすい、爪がもろくなるなどの症状はビタミンA欠乏のサインの一つです。また、粘膜バリアが弱まることで、感染症にかかりやすくなるため免疫機能の維持にも欠かせないビタミンの一種です。

光老化を予防する

ビタミンAが紫外線により破壊されて不足すると、シミやシワ、たるみの原因につながります。また、ひどくなると、皮膚がん、ニキビ、発疹、などの疾患に影響する可能性もあるため注意しましょう。「光老化」を予防または改善するためにも、ビタミンAは非常に重要な役割を担っています。

ビタミンA不足による影響とは?

令和元年の国民健康・栄養調査の結果では、ビタミンAの平均摂取量が534.1㎍RAE(下記、推奨摂取量参照)となり、各世代においてビタミンAが不足している傾向が見受けられます。

ビタミンAの欠乏症としては、薄暗いところでものがみえにくくなる夜盲症や角膜、結膜上皮の乾燥、小児の場合は成長に影響を与えることがあります。

ビタミンAの推奨摂取量

引用:https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-a.html

年齢等 【男性】 推定平均必要量 【男性】 推奨量 【男性】 目安量 【男性】 耐容上限量 【女性】 推定平均必要量 【女性】 推奨量 【女性】 目安量 【女性】 耐容上限量
0~5(月) 300 600 300 600
6~11(月) 400 600 400 600
1~2(歳) 300 400 600 250 350 600
3~5(歳) 350 450 700 350 500 850
6~7(歳) 300 400 950 300 400 1200
8~9(歳) 350 500 1200 350 500 1500
10~11(歳) 450 600 1500 400 600 1900
12~14(歳) 550 800 2100 500 700 2500
15~17(歳) 650 900 2500 500 650 2800
18~29(歳) 600 850 2700 450 650 2700
30~49(歳) 650 900 2700 500 700 2700
50~64(歳) 650 900 2700 500 700 2700
65~74(歳) 600 850 2700 500 700 2700
75以上(歳) 550 800 2700 450 650 2700
妊婦(付加量)初期 0 0
妊婦(付加量)中期 0 0
妊婦(付加量)後期 60 80
授乳婦(付加量) 300 450

ビタミンAを多く含む食材

ビタミンの中には、外から補充しなくてもお腹の中にいる腸内細菌が作ってくれるものもあります。しかし、ビタミンAの欠乏を防ぐためには外からの補充が必要です。したがって、普段の食事の中でビタミンAが多く含まれる食材は何かを把握しておくことが重要です。また、欠乏症だけでなく、過剰症を防ぐためにもこれら情報を把握することは重要です。

動物性の食材

ビタミンAはレバー類や魚介類から効率的に摂取できます。

鶏・豚・牛レバー、ウナギ、ぎんだら、あなご、ほたるいか、しらす干し、すずきなど

植物性の食材

ビタミンAは、色が鮮やかな「緑黄色野菜」に多く含まれています。

大葉、モロヘイヤ、ニンジン、小松菜、ほうれん草、春菊、西洋かぼちゃなど

ビタミンAの効率的な摂取方法

脂溶性ビタミンであるビタミンAは、その性質から同じ仲間(脂溶性)と一緒に取ると吸収率が上昇します。ステーキと緑黄色野菜、ごま油で野菜炒めなどの組み合わせで摂取するとよいです。また、同じく抗酸化作用を有するビタミンCやビタミンEと一緒に摂取することで、相乗効果があることも認められています。

ビタミンAの副作用【過剰摂取】

妊活中の女性にとって、ビタミンAは重要な栄養素の一つです。一方でビタミンAの過剰摂取は、胎児奇形のリスクが上昇するため、十分注意が必要です。

ビタミンAが多く含まれる食材を数回食べただけで、過剰症が起こることはないですが、過度な摂取は避ける必要があります。

ビタミンA過剰症の症状としては、急性、慢性の症状があります。

  • 急性の過剰症:頭痛(脳脊髄液圧の上昇)、腹痛、嘔吐、めまいなど
  • 慢性的な過剰症:頭痛(頭蓋内圧亢進症)、皮膚の感想、脱毛症、食欲不振、関節痛など

ビタミンAと薬の相互作用

ビタミンAが他の薬の効果を強めたり弱めたりする可能性は低いです。一方で、他の薬の影響でビタミンAの吸収率が減少したり、ビタミンAが含まれている薬と同時にビタミンAのサプリメントを併用する場合において、過剰摂取のリスクがあります。しかし、このようなケースは稀であり、薬との飲み合わせに関して過度な心配はいらないでしょう。

ビタミンAの摂取量を再確認しよう

ビタミンAは妊活中、妊娠中の女性にとって重要な栄養素の一つです。

ビタミンAは不足しやすいことから食材に対する摂取量を確認しておくことで、過不足なく摂取することが可能になります。しかし、過剰摂取してしまうと悪影響があるため摂取量には気をつけながらバランスの良い食事をこころがけましょう。

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