※本記事は管理栄養士が執筆しております※
「ビタミンDってどんな働きがあるの?」「どんな食べ物に多く含まれているか知りたい」という人に向けて、ビタミンDの効果や効率的な摂取方法、薬品との相互作用などを詳しく解説します。
ビタミンDはカルシウムの吸収をサポートするため、骨を強くするために大切な栄養素です。ビタミンDの摂取には食べ物だけでなく紫外線も関係しています。
ビタミンDについて知って、健康的に過ごしたい人はぜひこの記事を読んでみてください。
目次
- ビタミンDとは?
- ビタミンDの効果や働き
- ビタミンDが不足すると?
- ビタミンDを多く含む食材
- ビタミンDの効率的な摂取方法
- ビタミンDの副作用【過剰摂取】
- ビタミンDと薬の相互作用
- 太陽光を浴びてビタミンD不足を抑えよう
ビタミンDとは?
ビタミンDは脂溶性ビタミンの1種であり、小腸でカルシウムの吸収をサポートしたり、血中のカルシウム濃度を調整するといった働きがあります。
動物性・植物性の食品どちらにも含まれていますが、おもに魚介類から摂取している栄養素です。不足すると骨がもろくなりやすく、小児だとくる病、成人だと骨軟化症や骨粗しょう症のリスクがあります。
過剰摂取は通常の食事では起こりにくいですが、嘔吐や食欲不振、体重減少や腎臓・筋肉へのカルシウム沈着が症状として挙げられます。
ビタミンDの種類
ビタミンDはD2〜D7の6種類が存在します。主に食品に含まれており、活性が高いのはビタミンD2とビタミンD3です。
ビタミンD2はエルゴカルシフェロールとよばれ、きのこ類に多く含まれているビタミンです。干ししいたけなど、含まれているプロビタミンD2が紫外線に当たって熱異性化することでも生成されます。
ビタミンD3はコレカルシフェロールとよばれ、魚介類、特に魚の肝臓に多く含まれています。人間が日光に当たることで、皮膚に存在するプロビタミンD3から生成されるビタミンでもあります。
ビタミンDの生成
先ほども説明しましたが、ビタミンDは体内でも生成されるビタミンです。290~320nmの紫外線にあたることで、皮膚のプロビタミンD3がプレビタミンD3へと変化し、体温で熱異性化してビタミンD3となります。
紫外線はシミやしわなどの肌トラブル、がんを引き起こすことがあるため、多くの人が太陽に当たりすぎないように日傘や日焼け止めなどで対策していると思います。
紫外線を過度に浴びることはよくありませんが、日光を過剰に避けることもビタミンDの生成に関してよくないといえます。
ビタミンDの効果や働き
ビタミンDにはカルシウムの吸収をサポートし、骨や歯を維持する働きがあります。ほかにビタミンDの働きとして期待されるものを挙げました。
- 妊活サポート
- 骨の健康維持
- 美肌効果
- 免疫力の向上
- 抗がん作用
- 糖尿病予防
- 自閉症の改善
- 妊活サポート
以下で詳しく解説するのでぜひ参考にしてください。
男性妊活サポート
ビタミンDと男性の妊活に関する実験結果があります。男性の妊活では、精子の量や運動率、正常形態率など精子の質がとても重要です。
デンマークで行われた研究では、健康な男性の血液中のビタミンD濃度と、精液の質との関係を調査しました。結果としては血液中のビタミンD濃度が高いほど、精子の運動能力が高く、ビタミンDが不足している男性では精子の運動率や正常形態率が低くなるという結果が出ました。
今後実験が進むにつれて、妊活におけるビタミンDの働きが期待できるのではないでしょうか。
骨の健康維持
ビタミンDは肝臓や腎臓で代謝され、活性型ビタミンDとなります。活性型ビタミンDは小腸からのカルシウム吸収率を上げ、カルシウム摂取量が少ない場合は腎臓でカルシウムの再吸収を行います。
このようにビタミンDは骨へのカルシウム沈着をサポートし、くる病や骨軟化症、骨粗しょう症を予防することで骨の健康を維持します。
美肌効果
骨量を維持しているビタミンDが不足すると、顔のしわやたるみを起こすといわれています。
また、韓国ではニキビで悩む患者にビタミンDを投与すると、炎症性のニキビが改善したという実験結果があります。ビタミンDが十分に摂れていることで、肌の調子も安定するのではないでしょうか。
免疫力の向上
ビタミンDには、免疫機能を調節する働きがあると考えられています。免疫とはウイルスなどの有害物質や病気から身体を守る働きです。
免疫力が低いとウイルスと戦う力が弱くなり、免疫力が高い人に比べてインフルエンザや風邪などの感染症にかかりやすくなります。
抗がん作用
ビタミンDには、細胞の分化促進や細胞の増殖抑制といった作用があります。がん化した細胞を正常化したり、がん細胞の増殖を抑えたりといった働きが期待されています。
研究により、直腸がんや前立腺がん、乳がんなどのがんを予防するのではないかという結果が発表されました。しかし中には血中のビタミンD濃度が高いほど膵臓がんを起こしやすいという結果もあり、ビタミンDとがんについては更なる研究が求められます。
糖尿病予防
ビタミンDはブドウ糖の代謝やインスリン抵抗性の低下に関与し、2型糖尿病予防につながるのではないかといわれています。
九州の産業医科大学が実施した研究では血糖値が高めの人を対象に、ビタミンDのサプリメントと2型糖尿病の発症について3年間追跡調査を行いました。
結果、ビタミンDサプリメントによる糖尿病の発症率低下にはつながりませんでしたが、インスリンの分泌量が低い人で血糖値が改善するなどの結果が得られました。
自閉症の改善
自閉症スペクトラム障害をもつ児童は、血清ビタミンD濃度が不足していることが海外の研究で報告されています。
ビタミンDを4カ月投与することで自閉症の症状が大幅に改善したという結果もあります。今後研究が進めば、自閉症の症状緩和効果も検討できるのではないかと思われます。
ビタミンDが不足すると?
ビタミンDが不足するとどのような症状が出るのか、1日の目安量も一緒に紹介します。
1日の目安量
ビタミンDの目安量(マイクログラム/日)
年齢 |
男性 |
女性 |
18~29(歳) |
8.5 |
8.5 |
30~49(歳) |
8.5 |
8.5 |
50~64(歳) |
8.5 |
8.5 |
出典:『日本人の食事摂取基準(2020年版)』
ビタミンDの目安量は1日8.5マイクログラムです。令和元年の国民健康・栄養調査によると、日本人は平均で1日6.9マイクログラム、魚介類や卵、きのこ類などからビタミンDを摂っています。
このことから、日本人の食生活では一般的にビタミンDが不足することは少ないと思われます。
ビタミンD欠乏による症状
日光に恵まれない地域では、ビタミンDの欠乏によってくる病や骨軟化症が起こります。腸管でのカルシウム吸収低下や腎臓でのカルシウム再吸収低下が起こるためです。
日本ではビタミンDの欠乏は起こりにくいですが、不足することで骨折や骨粗しょう症のリスク、筋力の低下につながるといわれます。
骨軟化症やくる病のリスクが高まる
ビタミンDが欠乏すると、腸管からうまくカルシウムが吸収されず、腎臓でもカルシウムの再吸収がされにくくなり低カルシウム血症につながります。
成長期だとくる病、成人だと骨軟化症や骨粗しょう症になるおそれがあります。高齢者では骨密度の低下で骨折しやすくなり、寝たきりや要介護のリスクが高まるため、運動や食事で丈夫な骨を維持することが大切です。
筋力の低下
血中のビタミンD量が不足している人は、サルコペニアの罹患率が高まるともいわれています。サルコペニアは、加齢によって筋肉量が減少する疾患です。
日常動作が行いにくくなったり歩く速度が遅くなったりすることで転倒や骨折のリスクが高まります。
男児の自閉症スペクトラム障害(ASD)を誘発
妊娠中にビタミンDの欠乏を起こすと、胎児に影響があるといわれます。
オーストラリア・クイーンズランド大学の動物実験では、妊娠中のビタミンD欠乏が男児の自閉症スペクトラム障害を誘発する可能性が示唆されました。ビタミンDの役割はカルシウムの吸収のほか、発達過程のさまざまな面で必要だとされています。
ビタミンDを多く含む食材
ビタミンDの効果や欠乏症状について説明しました。
ここでは、ビタミンDを多く含んでいる食材を動物性の食材と植物性の食材に分けて紹介します。普段の食事に取り入れてください。
動物性の食材
食品に含まれる100gあたりのビタミンD量(マイクログラム)
マイワシ |
32.0 |
うなぎのかば焼き |
19.0 |
サンマ |
16.0 |
アンコウの肝 |
110.0 |
出典:『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』
ビタミンDは動物性の食材だと、マイワシやうなぎ、さんまなど魚介類、特に肝臓に多く含まれています。
植物性の食材
食品に含まれる100gあたりのビタミンD量(マイクログラム)
エリンギ |
1.2 |
まいたけ |
4.9 |
しいたけ(乾) |
17.0 |
きくらげ(乾) |
85.0 |
出典:『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』
植物性の食材だときのこ類に多く含まれています。
ビタミンDの効率的な摂取方法
ビタミンDは脂溶性のビタミンであるため、脂質を含んでいる動物性食品から摂った方が吸収率がよいといわれます。きのこなど植物性の食材でも、炒め物や揚げ物といった油を使った料理で摂るとよいでしょう。
ビタミンDの副作用【過剰摂取】
ビタミンDの1日の耐容上限量は成人男性・女性で100マイクログラムです。
上限量を超えて摂ると、高カルシウム血症が起こることがあります。腎臓や筋肉へカルシウムが沈着し、腎機能障害や嘔吐、食欲不振や体重減少につながります。
通常の食事では起こりにくいですが、サプリメントを利用している人は注意が必要です。
ビタミンDと薬の相互作用
ビタミンDに影響を及ぼす薬として、プレドニゾンや副腎皮質ステロイド剤があります。これらは身体のビタミンD処理能力を下げるため、カルシウムの吸収や骨量に影響が出ます。
ステロイド剤以外でも、薬を服用していてビタミンDのサプリメントを利用したい場合は、かかりつけ医師に相談するとよいでしょう。
太陽光を浴びてビタミンD不足を抑えよう
この記事では、ビタミンDについて網羅的に解説しました。
ビタミンDはカルシウムの吸収に不可欠な栄養素です。通常の食事で不足することは少ないですが、ビタミンD欠乏により骨粗しょう症や骨折のリスクは高くなります。
ビタミンDは脂溶性のビタミンなので、炒め物など油を使った料理で摂るのがおすすめです。サプリメントを利用している人は、過剰摂取にならないように気をつけましょう。