鉄分は、私たちの体を構成している大切なミネラルです。鉄分が不足してしまうと貧血症状などの原因にもなります。国民栄養調査によれば、日本人女性の2人に1人は鉄不足と言われています。
特に女性は、生理もあるため鉄が不足すると不調の原因になりやすいです。また急激なダイエットや妊娠中の女性、成長期の子供、運動を定期的に行なっている方は鉄不足になりやすいので注意が必要です。
そんな鉄分を補うために今回紹介したいのが多くの食品に含まれている鉄分の1つ「ピロリン酸第二鉄」です。鉄分は単に補給すれば良いわけではなく、体内で利用されてはじめて意味があります。
さまざまな鉄分があるため事前に安全性についても把握しておく必要があります。この記事ではピロリン酸第二鉄の概要から安全性など網羅的に解説していきます。
⽬次
- ピロリン酸第二鉄とは?
- ピロリン酸第二鉄(鉄分)の効果や働き
- ピロリン酸第二鉄の安全性について
- ピロリン酸第二鉄は身近な成分の1つ
ピロリン酸第二鉄とは?
鉄分にはさまざまな種類があります。私たちの食べ物に含まれている鉄を大きく分けると2種類あります。主に穀類や野菜に含まれている「非ヘム鉄」と肉やレバーなどの動物性食品に含まれている「ヘム鉄」があります。
この2種類の鉄分が体内に入ることで、私たちの生体機能を円滑に進められるようにしてくれています。今回紹介するピロリン酸第二鉄は、非ヘム鉄の中にある鉄分の1つです。それでは、ピロリン酸第二鉄について詳しく解説していきます。
概要
ヘム鉄と非ヘム鉄を比較すると、体内の吸収率はヘム鉄の方が高くなります。しかし、非ヘム鉄よりも価格が高く、原材料の臭いがあるため、サプリメント以外の食品には利用しにくい性質があります。
非ヘム鉄には、水に溶けやすい水溶性の性質を持つものが多く、塩化第二鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、グルコン酸第一鉄、乳酸鉄、硫酸第一鉄がそれにあたります。
ピロリン酸第二鉄は、これらとは異なり難溶性の鉄になります。他の鉄分は、水に溶けて使用することができますが、ピロリン酸第二鉄は水に溶けにくい特徴があり他にはないメリットがあります。
性質
ピロリン酸第二鉄の色は、黄~黄褐色になっており、無臭の粉末でわずかに吸湿性があるのが特徴です。非ヘム鉄は、大半が水に溶ける水溶性の性質を持つことで、鉄特有の風味が生じやすい特養があります。
ピロリン酸第二鉄は、難溶性の非ヘム鉄であることから中性領域では水に溶けにくい性質を持っています。難溶性の非ヘム鉄だからといって、体内に利用できないわけではなく、胃酸での分解を経て他の非ヘム鉄と同様に体内に吸収されます。
用途
ピロリン酸第二鉄は、中性領域では水に溶けず、使用する食品の風味に影響しにくい性質を持っています。他の非ヘム鉄で感じる鉄分の臭いや味が和らいでいることで、食品に応用しやすくなっています。
しかし、デメリットとして飲料や液体の食品中のような水分が多いものに関しては、難溶性のため沈殿してしまいやすいです。そのため、さまざまな製品で沈殿が生じにくいような工夫をして安定して溶けるようにしています。
ピロリン酸第二鉄(鉄分)の効果や働き
ピロリン酸第二鉄を含め鉄分は、私たちの健康と美容に欠かせない栄養素と言えます。鉄分を補うことで知られている内容として、男性妊活サポート、エネルギーの産出、運動パフォーマンスのサポート、老化の予防、骨粗鬆症の予防などが挙げられます。
ここでは、これらの役割と鉄分がどんな関係にあるのかについて解説していきますので、日常生活に活かせるように参考にしてみてください。
男性妊活サポート
鉄分は女性の貧血予防や妊娠に必要な栄養素ということで、女性にばかり注目されてしまいやすいですが男性にも大切な栄養素になります。男性の妊活の栄養素の代表格は亜鉛になります。
男性ホルモンを活発にして精子の量を増やす役割があります。鉄分は、亜鉛と同じく精子の数を増やす働きを持ち、血液を作るときにも必要になります。また、血液の代謝が良くなることで、血流が改善し勃起力の向上にも関係してきます。亜鉛だけでなく鉄分にも注目してみると良いでしょう。
エネルギーの産出
鉄分は、血液を作る材料になります。血液の主成分である赤血球の約99%はタンパク質と鉄分を材料とするヘモグロビンによって構成されています。ヘモグロビン内の鉄は酸素を運ぶだけでなく、酸素を使ったエネルギー代謝サイクルの働きを持っています。
また、呼吸やDNAの合成や修復、薬物や異物等の代謝など、細胞内でのエネルギー代謝にも関係しています。このように鉄分がないとエネルギーを生み出す源となる機能がうまく働かなくなり、私たちの体の機能が正常に行えなくなってしまいます。
運動パフォーマンスのサポート
スポーツが好きだったり、日々健康を気にして運動をしている方の場合には鉄が不足しやすいと言われています。激しい運動や筋肉量の増加によって必要な血液が増えていきます。
その結果、血液の主成分となっている赤血球をたくさん生成する必要が出てきるので、材料となる鉄分の必要量も増加します。鉄分が不足してしまうと十分なパフォーマンスが維持できない可能性が高まります。筋肉の細胞の修復にも関係してきますので、傷ついた状態の筋肉のままで運動することは危険です。
老化の予防
鉄分は、美容面にも関係している栄養素です。顔色が良くないのは、血液中のヘモグロビンの不足によるもので、鉄分の不足ともつながっています。また、肌のシミやハリ、シワも鉄分が関係していきます。
鉄分は、肌の新陳代謝を上げたり、肌の潤いを保つ役割があるタンパク質のコラーゲンを体内で合成するための材料になります。その他にも髪についても血液の回りが悪くなる原因として鉄分の不足があり、それによって髪の毛が細くなったり、抜け毛が増えたりします。
ピロリン酸第二鉄の安全性について
ピロリン酸第二鉄は、医薬品やサプリメントにもなりやすい栄養素なので、安全性は高いものと言えます。とはいえ、注意が必要なこともありますので、ここで紹介していきます。
特に胃腸の調子があまり良くない方、胃腸の病気がある方の場合には、ピロリン酸第二鉄の服用はあまりオススメできません。ピロリン酸第二鉄が、胃や腸を荒らしてしまう可能性があるからです。空腹時や寝る前も胃腸を荒らしやすいので、飲む際には注意しましょう。
他にも医薬品との飲み合わせが良くないものがあります。その代表例が、抗生物質や胃薬、甲状腺の薬によるもので、お互いが反応して吸収率を悪くしてしまうことが知られています。また飲みものでは、お茶やコーヒーのようなものは鉄分の吸収を妨げてしまいます。
ピロリン酸第二鉄は身近な成分の1つ
ピロリン酸第二鉄は、私たちの健康と美容をサポートする大切な鉄分として有効に利用できるものになります。実際にピロリン酸第二鉄は、安全性も比較的高く、サプリやプロテインにも含まれています。
鉄分が体内の吸収量を超えている場合には、便が黒くなります。このようなことも知ったうえで、自分に必要な量を把握しながら取り入れてもらえればと思います。今回取り上げたような内容を理解していただいたうえで、より皆さんの日々がより良いものにしていきましょう。