※本記事は管理栄養士が執筆しております※
亜鉛は性ホルモンに関わる栄養素で、セックスミネラルとも呼ばれています。
特に男性が摂取するメリットが大きいため、妊活中は不足しないように注意していきましょう。
亜鉛は体内で合成されない必須ミネラルのため、食べ物やサプリメントなどで意識して摂ることが必要です。
しかし、亜鉛を単品で摂り入れても体内の吸収率が低く、水溶性で調理の段階で失われている割合も高いため、亜鉛を豊富に含んでいる食品を食べていても不足してしまう可能性があります。
今回は亜鉛が豊富な食べ物や、効率的に亜鉛を体内に吸収できる方法などを紹介していきますので、是非参考にしてみてください。
⽬次
- 亜鉛とはどんな栄養素?
- 亜鉛は妊活に重要
- 亜鉛を効率的に摂取するには?
- 亜鉛を摂取するときの注意点
- まとめ
亜鉛とはどんな栄養素?
亜鉛は100種類以上の酵素に含まれる「必須ミネラル」で、たんぱく質や糖質、脂質の代謝に関わっています。酵素の材料となって、新しい細胞の形成のために細胞を作る遺伝子の情報を伝達したり、DNAの細胞分裂をサポートします。
味覚にも影響をもたらし、舌にある味蕾という味を感じる器官は、亜鉛の不足や老化によりはたらきが鈍くなり、味を感じづらくなります。
体の組織、器官を作ることに大きく関わりますので、年齢に関わらず乳児から大人、老人までしっかり摂りたい栄養素です。
亜鉛は性ホルモンをはじめとする様々なホルモンの活性や、子宮をはじめとする各器官に影響をもたらすため妊活中の方は特に不足しないようにしましょう。
亜鉛は妊活に重要
亜鉛は性的能力を改善する効果が期待できるため、「セックスミネラル」と呼ばれています。
性ホルモンの合成にかかわり、男性では精子づくりを活発にする役割を持っています。
女性が不足してしまうと月経異常や子宮内の環境の乱れにつながります。
亜鉛が女性におすすめの理由
亜鉛は卵胞刺激ホルモンや黄体化ホルモンの働きを高める効果が期待できます。
亜鉛が不足すると性ホルモンの分泌が低下し、卵巣の成長がスムーズに進まず、排卵が遅れて卵子の排卵がない状態で月経が起こる場合があります。
女性ホルモンは子宮内膜を正常に保つ働きをもつため、亜鉛が不足して性ホルモンが減少すると、子宮内膜が早くはがれおち、生理不順を引き起こします。
妊活中は生理周期を安定させ、子宮を正常な状態に保つことが大事ですので、性ホルモンの分泌に関わる亜鉛は不足がないようにしましょう。
亜鉛が男性におすすめの理由
亜鉛は男性の生殖機能改善が期待できる栄養素です。。
男性の前立腺に亜鉛は大量に存在し、男性ホルモンの合成、精子の生成に関わっています。
男性ホルモンは性機能の維持や精子の生成に影響を及ぼし、亜鉛は性ホルモンの活性やDNAの細胞分裂をサポートします。
妊活中、亜鉛の摂取は男性ホルモンや健康な精子の生成の手助けをしてくれます。
亜鉛が含まれている食べ物
- 牡蠣
- 豚レバー
- 切り干し大根
- 卵
- カシューナッツなど
亜鉛を多く含む食品は、牡蠣やホタテといった貝類やレバーなどの肉類、穀類などです。
3食しっかり食べていれば不足の心配は少ないですが、植物性の食品が中心で、インスタント食品ばかりなどの偏った食事は亜鉛の不足を生じやすいです。
加工食品に品質改良剤として含まれる成分は、亜鉛を体外に排出する働きがあります。
アルコールをたくさん飲むと亜鉛の消費が増えますので、加工食品と併せて注意が必要です。
亜鉛が含まれている食べ物①牡蠣
生の牡蠣には100g中に14mgの亜鉛が含まれています。
脂質の代謝に関わるビタミンB2や、核酸の合成や葉酸と一緒に赤血球の生産をするビタミンB12が豊富です。鉄とビタミンB12を含む牡蠣を食べることで貧血の予防につながります。
タウリンやグリコーゲンなどのアミノ酸も多く、スタミナ不足の解消も期待できます。
亜鉛が含まれている食べ物②豚レバー
生の豚レバーには100mg中に6.9mgの亜鉛が含まれています。
豚肉はビタミンB1が豊富です。糖質の代謝をサポートする他、疲労回復効果も期待できます。
ビタミンA(レチノール)の含有量も多く、抗酸化作用が強く細胞の老化を防ぐはたらきをします。
しかし、動物性のビタミンA(レチノール)の摂りすぎは胎児の奇形を引き起こすとされ、厚生労働省は妊娠中のビタミンAの過剰摂取に注意するように呼びかけています。
妊活中も毎日食べ続けるのではなく、少量をたまに食べる程度に控えましょう。
※植物性のビタミンA(βカロテン)は、ビタミンAが不足したときに体内でレチノールに変換されるため、妊活中も妊婦さんも安心して食べられます。
亜鉛が含まれている食べ物③切り干し大根
乾燥の切り干し大根には100g中に2.1mgの亜鉛が含まれています。
茹でた状態だと100g中に0.2mg、油で炒めた状態だと100g中に0.3mgです。
切り干し大根はカルシウムも豊富に含んでいます。妊娠中から授乳期まで赤ちゃんの成長に使われる栄養素のため、妊活中も積極的に摂りたい栄養素のひとつです。
亜鉛が含まれている食べ物④カシューナッツ
カシューナッツには100g中に5.4mgの亜鉛が含まれています。
ビタミンEが豊富なため、抗酸化作用が期待でき細胞の老化を防ぐことに役立ちます。
ナッツ類の脂質は、n‐9系の脂肪酸のオレイン酸が主成分です。
オレイン酸はコレステロールを減らし、動脈硬化の予防に適しています。
亜鉛が含まれている食べ物⑤卵
卵には100g中に1.1mgの亜鉛が含まれています。
体内で合成できない必須アミノ酸を不足なく含んでおり、タンパク質の栄養を評価するアミノ酸スコアの数値は100を示します。
ビタミンやミネラルも豊富で良質なたんぱく質食品です。
栄養価が高い食品ですが、ビタミンCと食物繊維は含まれていないため、野菜類と一緒に食べることがおススメです。
亜鉛を効率的に摂取するには?
亜鉛の腸管での吸収率は約30%といわれ、一緒に摂る食品によって吸収率が変動します。
体内で合成できない必須ミネラルのため、不足がないように吸収率を上げて効率良く亜鉛を摂取したいですよね。
亜鉛の吸収率を上げる成分にクエン酸やビタミンCがあります。
逆に亜鉛の吸収を阻害する成分は、加工食品やレトルト食品の品質改良剤として使われているポリリン酸と植物性食品の食物繊維やフィチン酸です。
アルコールの飲みすぎは体内で亜鉛の消費が増大するため、飲酒量が多い方は亜鉛不足に気をつけましょう。
亜鉛を効率的に摂取するには①サプリメントで摂取する
食品からの摂取が難しい方は、サプリメントを上手に活用しましょう。
亜鉛は1度に吸収できる量に限りがあり、体外に排出されやすい性質を持ちます。
サプリメントを飲むときは1日のなかで小分けにして飲むと亜鉛サプリの効果を発揮しやすいです。
1日1粒であれば夕食後や寝る前に亜鉛サプリを飲むことで就寝中に亜鉛の成分が体内に吸収されやすくなります。
亜鉛を効率的に摂取するには②クエン酸やビタミンC、動物性タンパク質と一緒に摂る
亜鉛の吸収率を上げるには、クエン酸やビタミンCと一緒に摂るのがよく、この2成分を含む食品がレモンです。
牡蠣にレモンを絞って食べることで、美味しいだけでなく亜鉛も効率的に摂取できます。
また、動物性食品と一緒に摂ることで亜鉛の吸収率は上がります。
肉や魚などを食べる回数が少ない方は、1日1回は動物性の食品を摂るように意識をしましょう。
亜鉛を摂取するときの注意点
普通の生活をしていれば亜鉛の摂りすぎの心配は少ないですが、サプリメントから過剰摂取すると嘔吐、吐き気、めまいなどの症状を引き起こします。
健康被害を起こさない安全な量として、日本人の食事摂取基準で耐用上限量も定められています。
サプリメントを使用するときは表示されている用法を守りましょう。
1日の亜鉛の摂取量の目安
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、1日の推奨量は18から49歳の男性で11mg、女性で8mg、妊婦10mg、授乳中は12mgと示されています。
亜鉛の1日の耐用上限量は18から29歳の男性で40mg、30歳から49歳の男性で45mg、18から49歳の女性で35mgと設定されています。
妊活中の亜鉛の摂取量の目安
18から49歳の男性の1日の亜鉛の推奨量は11mg、成人女性の1日の亜鉛の推奨量は8mg、妊婦は10mg、授乳中は12mgです。
妊活中は耐用上限量を超えない範囲で食品やサプリメントなどから亜鉛を摂取することが望ましいでしょう。
亜鉛の摂取不足
亜鉛が不足すると、性ホルモンをはじめとするホルモンの活性に影響を与える他、
- 生殖機能の低下
- 味覚異常
- 傷の回復が遅れる
- 脱毛
- 爪に白い斑点ができる
- 骨粗鬆症
- 免疫低下
など、様々な器官に影響を及ぼします。
亜鉛の過剰摂取
亜鉛の過剰摂取による健康被害は、
- 吐き気
- 嘔吐
- 食欲不振
- 下痢
など、胃や消化器に関わる不調が知られています。
長期的な亜鉛の過剰摂取が続くと、
- 銅の減少
- 貧血
- 免疫の低下
- 善玉コレステロールの減少
などを引き起こします。
1日の耐用上限量は18から29歳の男性で40mg、30歳から49歳の男性で45mg、18から49歳の女性で35mgと設定されています。
通常の生活で過剰摂取は起こりにくいですが、サプリメントの利用を考えている方は用法を守って使用してください。
また、持病がある方や服薬中の方は、安全のためにサプリメントの利用前にかかりつけ医に相談しましょう。
まとめ
亜鉛は体内で合成されない必須ミネラルで、性ホルモンの合成に大きく関わります。
亜鉛をしっかり摂ることで、男性は生殖機能の低下の改善や健康な精子をつくり、女性は生理周期の安定や子宮内の環境を整える効果が期待できます。
妊活中は男女とも亜鉛の不足がないように、今回紹介した記事を参考に亜鉛をしっかり摂っていきましょう。