精液が少ない原因と対処法について|妊活に与えるリスクとは?
妊活と精子
2023.01.21

精液が少ない原因と対処法について|妊活に与えるリスクとは?

※本記事は薬剤師が執筆しております※

「精液が少なくなったかもしれない」「精液が少ない原因はあるの?」「精液が少ない時の対処法は?」このような疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

精液が少ない原因はいくつかあり、原因によって対処法も異なります。精液検査では、精液の量と精子濃度にそれぞれ正常値が定められており、妊娠が成立するためには、精子の運動率なども影響します。

精液が少ないかもしれないと感じる方は、一度精液検査を受けることを検討してみましょう。

本記事では、性液が少ない原因と対処法について、さらに妊活への影響も含め解説しますので、ご参考にされてください。

目次

  1. 【乏精子症の可能性】不妊の最大の原因
  2. 精液が少ない原因とは?
  3. 精子量を増やす対処法
  4. 精子の量が多くても質が悪いとだめ?
  5. 原因を特定することから始めよう

【乏精子症の可能性】不妊の最大の原因

不妊症の原因は女性だけでなく男性にもあり、世界保健機関(WHO)の調査によると、約半数は男性側に不妊の原因があると報告されています。男性不妊で多い原因は、精子をつくる機能自体に問題がある造精機能障害です。

精子の数が少ないと乏精子症と診断されることが一般的です。精子をつくる機能に障害がある可能性があるため、原因を特定し、原因が判明した場合には、適切な治療を行います。

通常、1回の射精で約1〜4億匹の精子が放出され、卵子の周囲までたどり着くことができる精子の数は数100匹以下といわれています。精子の数が少なかったり、精子の動きが悪かったりすると卵子まで精子が到達できず、不妊の原因となります。

2021年の世界保健機関(WHO)マニュアルによると、精液検査における主な項目の基準値は以下のとおりです。

  • 精液量  :1.4mL以上
  • 精子濃度 :1,600万/mL以上
  • 運動率  :42%以上
  • 正常形態率:4%以上

基準値を上回っていると、自然妊娠できる可能性があり、下回っていると男性不妊の可能性が高くなります。しかし、基準値を上回っていても必ず妊娠するわけではありません。

精子が観察できない状態を無精子症といい、無精子症の場合、Y染色体微小欠失などの遺伝的疾患や染色体異常がないかを血液検査で調べ、精巣内精子採取術の可能性を検査します。

精液が少ない原因とは?

精液が少ない原因として、造精機能障害(精子をつくる機能に異常がある)と精路機能障害(精子が通る場所に異常がある)などがあります。原因によって治療法も違うため、それぞれ詳しく解説していきます。

造精機能障害

男性不妊の原因の多くは精子の数が少ない、動きが悪いなど、精子をつくる機能自体に問題がある造精機能障害です。精巣やホルモンの分泌異常が障害を引き起こすと考えられています。原因が特定できず、根本的な治療がないことも多く、人工授精や体外受精、顕微授精へ進むケースも考えられます。

造精機能障害の精液所見は以下のとおりです。

  • 乏精子症 :精子濃度が1,600万/mL未満の状態
  • 無精子症 :精液検査で精子が見つからない状態
  • 精子無力症:精子運動率が42%未満の状態

乏精子症の場合は、ホルモンの異常や生活習慣、次の精路機能障害でご紹介する精索静脈瘤が原因となる可能性があります。原因にあった治療を行い、生活習慣を改善すると精液所見が改善される可能性もあるでしょう。

無精子症の原因には、先天性の病気や精巣がんなどの治療などがあります。男性の性染色体にX染色体が1つ以上多いクラインフェルター症候群やY染色体微小欠失によって無精子症となり、無精子症の場合は、精巣内精子採取術(TESE)を行い、精子が見つかれば顕微授精が選択されるでしょう。

精路機能障害

精路機能障害の原因で有名なのは、精巣の静脈に血液が逆流して陰嚢部にこぶのようなものができる精索静脈瘤です。精索静脈瘤は手術による治療効果が期待でき、手術後は多くの方の精液所見が改善します。

逆行性射精は、前立腺肥大症に対する前立腺手術や糖尿病が原因で起こり、不妊の原因となります。逆行性射精とは、精液が陰茎から放出されず、逆方向の膀胱に流れ込んでしまう状態です。不妊の原因が逆行性射精と特定された場合は、薬による治療や生殖補助医療が選択されるでしょう。

子供のころに鼠径ヘルニアの手術をした人では、手術部位に精管が走行しているため、精管がふさがってしまう場合もあります。自覚症状がないため、不妊の検査を受けないと分からない可能性が高いでしょう。

その他の原因

造精機能障害と精路機能障害以外にも染色体異常などの遺伝的な原因やその他の原因によって精液が少ないことも考えられます。2023年時点では原因不明と分類されることも多いでしょう。 

精子量を増やす対処法

精子を増やすには主に以下の対策を行うとよいでしょう。

  • 生活習慣の改善
  • 食生活の改善
  • 薬物やサプリメント補充療法

仕事が激務で睡眠不足が続いたり、喫煙習慣があったり、過度の飲酒をしていると、精子の数に影響を与える可能性があるため、生活習慣の改善を行いましょう。

偏った食事や極端なダイエットなども精子量に影響を与える可能性があります。バランスのよい食事を心がけ、しっかりと栄養をとってください。

また、男性の生理機能へも影響を与えると考えられている亜鉛などをサプリメントなどから補充することもおすすめです。

詳しくは以下の記事をご参考ください。

精子の量が多くても質が悪いとだめ?

精子は量だけでなく、精子の運動性などの質も重要です。精液検査で調べられる「精液の量」「精子の濃度」「精子の運動性」「精子の形態」なども基準値を満たす必要があります。

様々な研究で、喫煙・加齢・アルコール摂取・心理的ストレスは、精子の質を低下させる可能性があると報告されています。妊活中はストレスを抱えることも多いですが、生活習慣だけでなく、ストレスも精子の質に影響を与えるため、適度な運動などでストレスを上手に発散しストレスをためないようにしましょう。

また、男性ホルモンの分泌は20代をピークに低下し、40歳を過ぎると生殖機能の衰えを自覚する人が増えてきます。年齢とともに精子の質が悪くなる可能性があり、女性と同じように男性も加齢は不妊へつながります。

原因を特定することから始めよう

妊活中の方で、精液が少ないかもしれないと思ったときは、精液検査を受けてみましょう。精液検査は不妊治療クリニックや泌尿器科で受けることが出来ます。

精液が少ない原因には様々な原因があるため、原因を特定しなければ治療を進めることができません。精液検査を受けて、精液の量、精子の数、精子の運動率などを調べ、原因に合わせた治療を受けてください。

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