男性が妊活で行うべき対策|妊娠の確率を上げるためにできること
男性妊活基礎知識
2022.10.28

男性が妊活で行うべき対策|妊娠の確率を上げるためにできること

※本記事は管理栄養士が執筆しております※

男性が妊活でやるべき対策とは何でしょうか。妊娠確率を上げるためには女性だけでなく、男性の協力も必要となります。なぜなら男性の精子量や精子の質が原因で不妊の可能性もあるからです。

この記事では精液の検査や抗体検査、摂取したい栄養素、注意点など男性の妊活について網羅的に解説します。男性が妊活で何をするべきか知りたい人、夫婦で妊活に取り組んでいる人はぜひ参考にしてください。

目次

  1. 男性が妊活でやるべき対策とは?
  2. 精液の検査について
  3. 風疹抗体検査について
  4. 男性が妊活中に摂取したい成分
  5. 妊活中に男性が止めるべき注意点
  6. 男性の協力が妊娠確率を高める

男性が妊活でやるべき対策とは?

男性が妊活で取り組むべきことは以下が挙げられます。

  • 精液検査
  • 風疹の抗体検査
  • 食事管理
  • 健康管理
  • 夫婦での話し合い

精液検査で精液中の精子の質や量が十分であるか調べましょう。風疹の抗体があるか確かめ、妊婦が風疹に感染するリスクを下げましょう。妊娠初期に感染してしまうと、お腹の赤ちゃんの健康に影響を与えることがあります。また、質の良い精液を作るための食事や健康管理が大切となります。妊活は夫婦の協力が必要です。どちらかが大きな負担を抱えることがないよう話し合い、互いの考えや気持ちを共有しましょう。

精液の検査について

精液検査は男性の妊活において重要です。精液量や正常な精子の数、精子の運動率は妊娠の成功率に大きく関わります。精液検査の結果、自然妊娠が難しいと判明した場合は、不妊治療が可能かどうか治療方針を定める必要があります。精子の状態を知るために、まずは精液検査を受けましょう。

検査方法

精液検査は以下の方法で受けられます。

  • 自宅で検査キットを使用し、検査機関へ送る
  • 産婦人科や泌尿器科を受診する

検査キットでの検査は、とりあえず1度検査を受けたい人や精子の有無を調べたい人にとっては便利な方法です。注意すべき点は、精液の採取から検査までに時間がかかるため、精子の運動率を計測できないことです。また、検査方法や結果の説明、結果をふまえた治療方針を医師と対面で聞くことができず、誤判定のリスクや今後の治療につながりにくいといったデメリットがあります。

産婦人科や泌尿器科では精液量や精子濃度のほか、精子運動率や精子正常形態率も含めた精液検査を受けられます。通院が必要ですが、夫婦2人の体の状態を調べたうえで直接専門医の話を聞けるため安心です。

検査費用や流れ

検査キットを使った精液検査の費用は、検査機関や検査項目、結果説明のサービス内容に応じて3,000円〜15,000円ほどです。主にWebサイトから申し込み、自宅に届く検査キットで精液を採取して宅配で送ります。結果はメールや郵送で確認できます。

産婦人科や泌尿器科での検査費用は1,000円〜5,000円ほどです。初診時に診察や検査説明を受け、精液検査の日程を決めます。精液の採取は院内にある個室で行ったり、病院との距離が近ければ自宅で行って持参したりと医療機関によってさまざまです。精液の提出後、顕微鏡で確認した結果を医師から伝えられます。

精液検査は、前回の射精から2日以上7日以内に精液の採取を行うことが推奨されています。

不妊の可能性

子どもを望む夫婦のうち、約15%が不妊症であるといわれています。2017年にWHO(世界保健機関)が行った調査では、不妊症の原因が男性にあるケースは24%、女性にあるケースは41%、男女ともにあるケースは24%、原因不明が11%といった結果が出ています。夫婦がともに検査を受け、不妊症の原因を知ることが大切です。精液検査で1度不妊気味と診断されても、精液の質は体調やストレスで変化するため、時期をみて再検査することもあります。以下、WHOが定める精液検査の正常値です。

WHOが定める精液検査正常値(2021年)

項目 基準値
精液量 1.4ml以上
精子濃度 1600万/ml以上
精子運動率 42%以上
精子正常形態率 4%以上

出典:『WHOラボマニュアル第6版(2021年)』

精液の質を高める方法

精液の質を高める方法として、以下が挙げられます。

  • 定期的な射精
  • 健康的な食事
  • 適度な運動
  • 服薬

精子は約70日間かけて作られますが、作られたばかりの精子の方が妊娠成立しやすいため、射精は定期的に行ってください。古い精子は他の精子を酸化させ、運動率の低下を招くことがあります。

また、食生活にも気を使うようにしましょう。さまざまな食材をバランスよく食べるほか、精子形成に役立つタンパク質や亜鉛、ビタミンを積極的に摂る必要があります。

普段デスクワークで座っている姿勢が多い人は、血行不良になりやすいため運動習慣をつけましょう。勃起をサポートするED治療薬は、勃起不全でない妊活中の男性にも効果的です。

風疹抗体検査について

風疹は、風疹ウイルスで起こる感染症です。妊娠初期の妊婦が感染するとお腹の赤ちゃんが先天性風疹症候群にかかる恐れがあり、赤ちゃんの目・耳・心臓や精神の発達に影響が出ることがあります。厚生労働省によると予防接種で95%以上の人に風疹ウイルスの抗体ができるといわれています。風疹の予防接種を受けているかどうかを確認し、抗体があるか検査しましょう。

風疹抗体検査の方法

風疹抗体検査は医療機関で受けられ、採血で簡単に結果が出ます。抗体価の検査としてHI法とEIA法が用いられます。HI法で抗体価が32倍以上、またはEIA法で風疹ウイルスIgGが8.0以上と診断された場合は予防接種の必要はありません。風疹の予防接種は妊娠中に受けられないため、抗体があるかを事前に調べておきましょう。

風疹抗体検査の費用

クリニックで受ける場合、費用は5,000円ほどです。定期接種の機会がなかった1962年〜1979年生まれの男性に対しては、風疹抗体検査や予防接種のクーポンが発行されています。費用はかからないため、本人や家族など周りに当てはまる人がいたらぜひ検査を受けましょう。

男性が妊活中に摂取したい成分

妊活中はバランスの良い食事を意識しましょう。外食が多い人でも野菜の小鉢をプラスする、定食を選ぶ、ファストフードを控えるといった工夫ができます。

葉酸や亜鉛をはじめとした、妊活で積極的に摂りたい栄養素と効果を詳しく解説します。

出典:『日本人の食事摂取基準(2020年版)』 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf

葉酸

葉酸は、赤ちゃんの先天性異常リスクを減らすとして妊活中の女性に必須ですが、精子のDNAを傷つけにくくするため、男性も積極的に摂りたい栄養素です。葉酸が多く含まれる食品として、レバーやほうれん草、枝豆や納豆などがあります。葉酸の摂取の推奨量は、18歳以上の男女ともに1日あたり240マイクログラム、 妊活中や妊娠中の女性は1日に480マイクログラムの摂取が推奨されています。

食品と含まれる葉酸の量

食品名 葉酸(マイクログラム/食品100gあたり)
レバー 1000
ほうれん草 210
枝豆 320
納豆 120

出典:『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』

亜鉛

亜鉛は精子形成や精子の活性化に関係があり、セックスミネラルと呼ばれるほどです。亜鉛が豊富に含まれる食材として、牡蠣やすっぽん、牛肉や納豆があります。日本人の食事摂取基準(2020年版)において1日の摂取の推奨量は18〜74歳の男性で11mg、18歳以上の女性で8mg、妊婦で11mgと定められています。

食品と含まれる亜鉛の量

食品名 亜鉛(mg/食品100gあたり)
牡蠣 14
すっぽん 1.6
牛肉(ばら) 3
納豆 1.9

出典:『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』

たんぱく質

タンパク質は人体の構成に不可欠であり、妊活に関わらず必要な栄養素です。肉や魚、豆腐、卵のいずれかを毎食摂るようにしましょう。なかでも鶏ささみやいわし、卵は食品中のタンパク質の割合が高いため効率よく摂取できます。体重1kgあたり1〜1.5gを目安に摂ってください。

食品と含まれるタンパク質の量

食品名 タンパク質(g/食品100gあたり)
鶏ささみ 24.6
いわし 21.3
鶏卵 12.2
普通牛乳 3.3

出典:『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』

ビタミンC

ビタミンCには抗酸化作用があり、活性酸素を減らして精子の形成に役立ちます。ビタミンCは緑黄色野菜や果物、特に赤ピーマンや黄ピーマン、ゴールデンキウイなどに多く含まれます。

ビタミンE

ビタミンEも抗酸化作用があり、精子の老化を防ぎます。ビタミンEが豊富な食材として、かぼちゃやアーモンドなどのナッツ類、うなぎが挙げられます。

ビタミンB12

ビタミンB12は葉酸とともに赤血球をつくる働きをしますが、精子形成にも重要です。ビタミンB12は動物性食品に多く含まれ、レバーやしじみ、牡蠣やいわしに多く含まれます。

ビタミンA

ビタミンAも抗酸化作用があるため、精子形成に関わる細胞の酸化を防ぎ、精子の運動率を高めます。レバーやうなぎ、緑黄色野菜に多く含まれています。一方、妊娠初期の女性はビタミンAを摂りすぎないよう注意が必要です。

ビタミンD

ビタミンDが不足していると勃起不全(ED)を発症しやすくなるため、意識して摂りましょう。ビタミンDは鮭、サンマなどの青魚やきのこ類に多く含まれます。

鉄分が不足すると鉄欠乏性貧血となり、めまいや立ちくらみ、息切れを起こしやすくなります。特に女性は貧血になりやすく、鉄分の不足は着床しにくくなるなど妊活においても影響があります。レバーやほうれんそう、大豆製品から鉄分を摂るとともに、症状がひどい場合は医療機関で鉄剤を処方してもらいましょう。

カルシウム

妊娠時には、カルシウムの体内への吸収率が上昇するため、推奨量は妊娠中も変わりません。ただし赤ちゃんの骨や歯をつくるために重要であるため、日頃カルシウム不足を感じる人は小魚や乳製品、大豆製品を積極的に摂りましょう。

オメガ3脂肪酸

オメガ3脂肪酸は良質な油で、精子の運動性に関わっています。オメガ3は体内で合成されないため、食品から積極的に摂りましょう。オメガ3を多く含む食品として、くるみやサバ、いわし、エゴマオイルがあります。

シトルリンとアルギニン

シトルリンは勃起不全の改善に有効な成分です。アミノ酸の1種であり、体内でアンモニアの代謝に関わります。シトルリンが多く含まれる食品はスイカやメロン、きゅうりなどのウリ科の野菜です。

また、アルギニンも同じくアンモニアの代謝に関わるアミノ酸であり、免疫力や成長ホルモンの分泌を促進する成分です。大豆製品や鶏むね肉、豚肉に含まれています。

すっぽん粉末

すっぽんは体質を改善する滋養食材として有名で、男性ホルモン減少による精力減退にはたらきかけます。すっぽんはタンパク質を構成する20種類のアミノ酸のうち18種類を含んでおり、体内で合成できない8種の必須アミノ酸をすべて含んでいることが特徴です。また、血中コレステロールや血圧を下げる効果や、貧血の予防、月経不順の解消にも期待できます。

マカエキス末

マカはペルーのアンデス山脈に植生するアブラナ科の植物で、必須アミノ酸や鉄分、カルシウムなど栄養が豊富です。アミノ酸のなかでも、勃起障害の改善、精子の数を増やすはたらきをするアルギニンを多く含んでいます。

高麗人参エキス末

高麗人参は朝鮮人参ともよばれ、ジンセノサイドとよばれる成分が疲労改善や免疫力増進、貧血やコレステロール値の改善に役立ちます。心や体の疲労時に漢方として使われる食材です。

コエンザイムQ10

コエンザイムQ10は脂溶性ビタミンの1つであり、高い抗酸化作用をもつ成分です。体内の細胞の酸化を予防し、老化による精子数や精子の運動率の減少を防ぎます。コエンザイムQ10はイワシやサバなどの青魚や肉類に多く含まれています。

セレン酵母

セレンは必須ミネラルの1つであり、抗酸化作用をもっているため精子の運動率を上げてくれます。セレンは魚介類や肉類、卵に多く含まれていますが、日本人の平均的な食事で不足する心配はないとされています。また、必要量と上限量の差が小さいため、サプリメントを摂取する場合は注意が必要です。

カルニチン

L-カルニチンはアミノ酸の1種であり、細胞内のミトコンドリアに脂肪を運ぶ働きをします。ミトコンドリアは、卵子の質や妊娠率に影響し、ミトコンドリアを活性化するためにはL-カルニチンが必要です。また、L-カルニチンは疲労回復や生活習慣病予防に効果的であり、肉類、特に赤身に多く含まれるアミノ酸です。

リコピン

リコピンはトマトやスイカなどに含まれるカロテンの1種です。カゴメ株式会社と国際医療福祉大学病院の共同研究において、リコピンを多く含むトマトジュースを飲むことで、男性不妊の予防や改善が期待されると発表されました。トマトの赤い色素であるリコピンは、抗酸化作用が高く、活性酸素の消去に効果的です。また、リコピンは精巣中に高い濃度で存在し、精子運動率に良い影響をもたらすとのことです。

出典:https://www.kagome.co.jp/company/news/2011/001278.html

牡蠣エキス末

牡蠣には亜鉛や鉄、マグネシウムなど良質なミネラルが含まれており、生殖能力を維持して精子の運動率を高めます。前立腺の機能向上にもつながるため、積極的に摂りたい食材です。

妊活中に男性が止めるべき注意点

妊活中の男性は止めた方がいい習慣があります。以下をチェックして、日頃の生活を振り返ってください。

喫煙

喫煙は精子の減少や運動率の低下につながります。また、精液中の活性酸素が増加して酸化ストレスが起こり、正常形態率の低下も起こります。妊活を考えている人にとって禁煙は大切です。

お酒の飲み過ぎ

アルコールの過度な摂取は精液量と正常形態率に影響があるといわれています。禁酒する必要はありませんが、妊活中の男性は飲酒を控えましょう。

太りすぎ

肥満状態にあると、精子の形や数、運動率に影響が出やすくなります。また、生活習慣病や勃起不全(ED)にもつながるため改善が必要です。

カフェインを多く摂取する

厚生労働省は、カフェインの1日あたりの許容量を400 mgと定めています。コーヒー1杯150mlあたりカフェインは80〜90mg含まれるため、コーヒーを1日に4杯以上飲む人は、カフェインの摂りすぎかもしれません。カフェインは中枢神経を刺激して動悸や不眠をもたらします。アメリカのハーバード大学は、カフェインの摂りすぎは精液所見には影響しないが、不妊の治療成績とは関連が見られることを発表しています。

睾丸を温める

精子を作り出す精巣は熱に弱いため、長風呂やサウナ、膝上でのPC操作などは極力控えましょう。また、自転車やバイクに長時間乗ると熱がこもりやすく、睾丸が圧迫されるため控えた方が望ましいとされています。

生活習慣の乱れ

睡眠不足や不健康な食生活は精子の質を低下させます。睡眠時間はしっかり確保し、寝る前の2時間はスマホを扱わないようにしましょう。体をリラックスさせる副交感神経が活発化します。

下着がきつい

ぴったりした下着は血流を圧迫し、精子にダメージを与えやすくなります。ジャストサイズを選ぶ、ボクサー型の下着よりトランクス型を選ぶなど、睾丸周りを締め付けないよう心がけてください。

ストレスをため込む

過剰なストレスがかかると、精子を作り出す精巣にも影響があります。ストレス源をできるだけ減らし、心身の休息を第一に考えましょう。

男性の協力が妊娠確率を高める

男性の妊活にあたって必要な検査と気を付けるべき生活習慣について解説しました。妊活は女性だけでなく、男性も行う必要があります。精液検査、風疹抗体検査で体の状態を調べましょう。積極的に摂るべき栄養素として亜鉛やタンパク質、葉酸やビタミン類が挙げられます。飲酒やカフェイン摂取はほどほどにし、普段の生活で睾丸を温めたり圧迫したりしないよう気を付けてください。ストレスをため込まないように2人で妊活の方針を話し合い、協力し合いましょう。

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