※本記事は薬剤師が執筆しております※
子どもが欲しいと思っているが、男性にできることがわからないと思っている方は多いのではないでしょうか?
妊活は夫婦が一緒に頑張ることが大事です。不妊原因の約半数は男性で、決して女性だけが抱える問題ではありません。
この記事では妊活中に男性ができることをご紹介します。ぜひ最後まで、ご覧ください。
目次
- 妊活とは
- 不妊の原因の半数は男性
- 妊活前に男性ができること
- 精子の質を高めるためにできること
- 男性不妊の原因
- 男性が妊活中に摂りたい栄養素
- 妊活は男性にとってもストレス
- 妊活が辛くなったら?
妊活とは
妊活とは「妊娠活動」のことで妊娠に関する知識を得たり、妊娠に向けて体調管理を心掛けたりすることです。
妊娠の可能性は、女性は30歳過ぎ辺りからが少しずつ減少してきます。これは男性の場合も同じです。妊活を始める時期は2人が揃って「そろそろ子どもを欲しい」と思ったときが1番です。
妊娠は女性がするものですが、1人ではできません。妊活も妊娠も一緒に行ってくれるパートナーの男性が必要です。妊娠についての知識を十分に持って、2人一緒に妊活を行うことが必要で重要です。
不妊の原因の半数は男性
妊娠を望んでいるのにも関わらず、妊娠しない場合は不妊かもしれません。不妊とは、避妊をせずに性交渉を行なっても1年以上妊娠しない状態のことです。
不妊というと女性に原因があると思いがちですが、不妊の原因の半分は男性側にあると言われており、男性側の問題で妊娠できずにいることを「男性不妊」と呼びます。
下に不妊の原因について示したグラフを掲げました。
男性に原因がある場合は48%で約半数を占めています。
男性も自分の側に原因があるかもしれないと考えて、妊活について真剣に考え、取り組む必要があります。
妊活前に男性ができること
男性の妊活には事前準備ですべきことや普段の暮らしですべきことがあり、1つ1つが妊娠成立にとても重要です。
ここでは妊活を始める前に、妊活に向けて男性ができる行動をご紹介します。
- パートナーとの話し合い
- 精液検査
- 風疹(ふうしん)抗体検査
- 禁煙
- 妊娠について勉強する
以下に1つずつ説明します。
パートナーとの話し合い
妊活を進める上で、パートナーと話し合い、妊娠についての考えを統一しておくようにしましょう。妊活の方向性を固めるためにも最初は話し合う時間を作りましょう。
妊活中もナートナーと2人で同じ方向を見ていられるように常に話し合うことが重要になっていきます。考えや思いが違うために、パートナーと不仲になり離婚してしまう場合もあります。
ルールを決める、妊活の情報交換や自分の気持ちを伝え合う場面は、何度あっても良いでしょう。相手の気持ちを確認しながら、自分だけの考えを押し付ける話にならないように注意が必要です。
精液検査
精液検査とは元気な精子がどれくらいいるか調べる検査のことで、精液量、精子の数や運動率などを調べます。
検査結果で自然妊娠が望めるのか、不妊治療をすべきなのかが分かり、妊娠に向けて適切な選択を取ることができるようになります。
検査方法は以下の2つです。
- 専門クリニックでの検査
- 検査キットを購入して自宅で行う
検査キットはインターネットで購入することができ、セルフチェックできるものから検査技師が検査するものまでさまざまです。
精子の状態は体調に左右されるので、何度か検査をするようにしましょう。また検査キットにもよりますが、該当項目が基準値より低かった場合は病院を受診した方が良いでしょう。
35歳過ぎから精子も老化するので、「妊活する」と決めた段階で精子検査をしましょう。
風疹抗体検査
風疹とは風疹ウイルスによって起こる感染症です。妊娠初期の女性が風疹に罹患した場合、産まれてくる赤ちゃんが「先天性風疹症候群」になる可能性があり、その結果、身体や精神の発達に影響が出ることがあります。
風疹ウイルスは強い感染力があるため、妊活中は女性のみでなく家族も風疹にかからないよう注意しなければなりません。
風疹はワクチン接種で95%以上に免疫が得られると言われています。2回のワクチン接種を受けていても年月の経過とともに抗体価が減少している場合もありますので、まず抗体検査を受けることをおすすめします。抗体検査で基準値に満たなかった場合はワクチン接種をしましょう。
禁煙
妊活に限らず、喫煙は控えるようにしましょう。
喫煙は血流を悪化させるので、精子の質の低下やDNAの損傷、性欲減少といった影響があると言われています。精子のDNAの損傷は流産や死産のリスクにつながります。
さらにパートナーを受動喫煙させることにもなります。加熱式タバコにもタールが含まれているため、おすすめはできません。
妊活を始める場合、自分たちのため、産まれてくる赤ちゃんのために、まず禁煙を考えましょう。
妊娠について勉強する
妊活を行うために男性も妊娠についての知識を持つことが必要です。妊娠の基礎知識を本で読んだりネットで調べたりしておくと良いでしょう。パートナーを支える際にも役立ちます。
妊娠を成立させるためには健康な母体が必要です。当然ですが、男性も健康でなければなりません。健康な体を作るには、規則正しい生活、栄養バランスの取れた食事、十分な睡眠などが大切です。
特に食事や生活習慣については、男性が知識を持ち、協力の気持ちを持つことでパートナーの女性もより実行しやすくなります。
できることからで良いので日々の生活から改善していきましょう。
精子の質を高めるためにできること
妊娠が成立しやすいように精子の質を高めましょう。精子の質が良いほど妊娠は成立しやすくなります。質が良い精子は数が多く、活発で損傷がありません。精子の質は日常生活を見直すことで高めることが可能です。
精子の質を高めるために男性ができることは以下の3つです。
- 生活習慣の改善
- 定期的な射精
- お酒との付き合い方を見直す
以下で1つずつ説明します。
生活習慣の改善
精子ができるには74日以上の時間がかかり、質の良い精子のためには健康的な生活を送る必要があります。
健康的な生活として心掛けることは以下の3つです。
- 十分な睡眠をとる
- ウォーキング、ランニング、ジム通いなど定期的な運動をする
- 栄養バランスのとれた食事をする
以上のことに気をつけて生活すると、精子の質を高めるだけでなく、生活習慣病の予防にもなります。妊活をチャンスに習慣づけて生活習慣病知らずになりましょう。
定期的な射精
射精されない精子は質が低くなっています。定期的に射精し、新しい精子にすることが大切です。
1週間以上射精しないと精液中に死滅精子などの質の低い精子が多くなってきます。毎日射精すると精子の量が減るので、2〜7日に1回くらいの頻度で射精し精巣内の精子を入れ替えましょう。頻度は個人差があるので多くても少なくても気にする必要はありません。
精子は休みなく産生されるので射精回数が多くてなくなることはありません。
お酒との付き合い方を見直す
妊活にあたって禁酒とまではいかなくても、飲酒量は少なめにするよう心掛けましょう。
過度なアルコールの摂取は、妊娠しやすさを左右する排卵や精子の質に影響すると言われています。
女性は禁酒が必須となるため、女性の前でむやみに飲酒するのは避けるようにしましょう。
パートナーを思いやり健康を心掛けることは、妊娠成立ばかりでなく、その後の子育て期にも大切なことです。
人との付き合い方を考えながらお酒との付き合い方も考えましょう。
男性不妊の原因
男性不妊の原因には先天性と後天性のものがあります。先天性男性不妊の原因は遺伝による生殖機能欠陥、発育段階に受けた影響による性機能不全などです。後天性男性不妊の原因は生活習慣や病気の影響、射精に関する問題などが考えられます。
以下に男性不妊の原因2つについて説明します。
造精機能障害
造精機能障害は男性不妊の原因の約90%を占めています。造精機能に問題があり、精子産生がうまくいかない状態です。精巣やホルモン分泌などの異常が障害を発生させます。
造精機能障害の種類は以下の3つです。
- 無精子症:精液中に精子が全くない状態。精巣などに精子があれば顕微授精など妊娠が可能。
- 乏精子症:精液中に精子はいるが数が少ない症状。基準より少し低いのであればタイミング法などを試みる。かなり少ない場合は人工授精、体外受精、顕微授精などの不妊治療を行う。
- 精子無力症:数は正常だが運動率が悪い症状。運動状態により人工授精や顕微授精などの不妊治療を行う。
造精機能障害の種類によって対処方法が違ってきます。
男性不妊のその他の原因
造精機能障害以外の男性不妊の原因は以下のものが考えられます。
【造精機能障害以外の男性不妊の原因】
男性不妊の原因 | 状態 |
---|---|
精索静脈瘤 | 陰嚢内の温度が上がるなど精巣の発育不全などを発症し、精子形成に悪影響 |
閉塞性無精子症 | 精管の一部がつまるなど精子が運ばれず、精液のなかに精子がいない状態 |
先天性精管欠損 | 生まれつき精管がなく、精子は精巣内に閉じこめられた状態 |
膿精液症 | 前立腺や精嚢などの炎症で精液中の白血球が増加、精子の運動率を低下させている状態 |
無精液症 | 精液が造られない状態 |
逆行性射精 | 精液が尿道ではなく膀胱に逆行する状態 |
勃起不全(ED) | 性交時に勃起しない、勃起が維持できないなど性交が行えない状態 |
膣内射精障害 | 膣内で射精することが困難な状態 |
男性が妊活中に摂りたい栄養素
ビタミンやたんぱく質なども含めたバランスの良い健康的な食事を意識し、妊活に必要な栄養素を積極的に摂りましょう。精子の量や質を良い状態に保つために大切なことです。
男性が妊活中に摂りたい栄養素は以下の2つです。
- オメガ3脂肪酸
- 葉酸
以下に1つずつ説明します。
オメガ3脂肪酸
オメガ3脂肪酸は体内で生成できない必須脂肪酸と呼ばれ、必ず食物から摂取しなければならず、精子形成にも良い影響を及ぼします。オメガ3脂肪酸はナッツや魚類(青魚、魚卵)などに多く含まれています。
オメガ3脂肪酸を上手に摂取する方法を以下にまとめてみました。
- 2日に1食は魚を食べよう:味噌煮や水煮の缶詰を利用するのも有効
- えごま油をほんの少し味噌汁などにかけてみよう
- 外食が多い方はDHA、EPAなどを含むサプリメントの利用を検討しよう
オメガ3脂肪酸を摂取して質の良い精子を作りましょう。
葉酸
葉酸は妊活中の女性が摂るものと思われがちですが、男性も一緒に摂るのが理想的です。葉酸は精子の数増加やDNAの損傷を防いでくれることが期待できます。
葉酸は先天性異常のリスクを低減する栄養素でもあり、厚生労働省でも妊娠1ヶ月前からの葉酸の摂取を推奨しています。葉酸が多く含まれているのはブロッコリー、枝豆などの大豆類、魚卵、レバー、鶏卵などです。
妊活を始めたら男性も一緒に葉酸サプリを摂取し、栄養補給して、妊娠を成立させましょう。
妊活は男性にとってもストレス
妊活中、なかなか妊娠に至らないと、男性のセックスに対するプレッシャーは増え、ストレスになります。ストレスを感じると活性酸素種が生成され、精巣の活動に良くない影響を与えることが報告されています。
Etiologies of sperm oxidative stress
セックス中の不安は、勃起不全(ED)や膣内射精障害の原因にもなるので好ましいことではありません。
ストレスになってきたなと感じたら、パートナーとも相談して妊活を少し休憩してみるのはいかがでしょうか。
妊活が辛くなったら?
自分の気持ちは思い通りにならないこともあります。なかなか妊娠しないと落ち込んでしまったり、妊娠した友人を羨ましく思ったり、自分や相手を責めそうになったり、実際に責めてしまったりなど複雑です。
妊活が辛くなった場合の対処法は以下の2つが考えられます。
- 妊活経験者の体験談を読む
- パートナーと相談する
以下に1つずつ解説します。
妊活経験者の体験談を読む
妊活経験者の体験談を読むのも1つの方法です。雑誌やWebなどに妊活や不妊治療経験者の体験談などが紹介されていることがあります。
自分達と同じ気持ちで妊活をしてきた人もいるかもしれません。体験談を読んで解答が得られるとは限りませんが、気分転換も兼ねてのぞいてみてはいかがでしょう。
悩みは解決しなくてもいろいろな思いで過ごしているので、妊活という同じ体験をした人の話から勇気をもらえることは間違いありません。
パートナーと相談する
妊活は自分だけではなくパートナーと2人で頑張ることが重要です。2人で同じ方向を見られるよう、どんなことでも相談し合いましょう。
「こんなことくらい相手もわかっているだろう」とは思わずに、事実や気持ちを言葉にして伝えることが大切です。不安や心配なこと、心に引っかかりのあること、検査のこと、生活習慣のこと、お金のことや仕事のことなどパートナーと話し合ってみましょう。
小さな違和感に目をつぶらないで、パートナー同士の認識を合わせていくことが大切です。
まとめ
本記事では妊活中に男性ができることを中心に説明しました。
少子化の時代なので出産を望んでいる夫婦のために、さまざまな制度があります。妊活を始める際は、居住している自治体や医療機関の情報をチェックしましょう。
妊活はパートナーと2人で一緒にするものです。「2人で一緒に妊活をしてかわいい赤ちゃんを授かる」という気持ちが持てれば「辛い」という気持ちも起きないかもしれません。
常に2人で協力して妊活に励みましょう。