※本記事は薬剤師が執筆しております※
「子供がそろそろ欲しいけれども自然に任せるだけでいい?」「妊活って具体的にはどんなことをするの?」と、気になっている方は多いと思います。
実際には子供を授かりたいと考えていても、定期的に夫婦生活をしていてすぐに授かるわけではありません。不妊になる原因は男女ともにあります。
そのため、妊活について詳しく知り、できれば早いうちに妊活をしていくことが大切です。
今回は、妊活の定義から、どのような妊活の方法があるのか、妊活中におすすめの行動などを詳しく説明していきます。
目次
- 妊活とは
- 妊活の種類
- 妊活のためにできる7つのコツ
- 妊娠中のストレス解消法は?
- まとめ
妊活とは?
妊活とは、妊娠の確率を上げるための行動のことです。生活習慣を整えたり、ストレスマネジメントを行っていきます。
妊活したいと考え始めると、妊娠できる確率や妊活を始めるタイミングが気になるのではないでしょうか。それぞれ詳しく解説します。
妊娠が成功する確率
健康な若い男性と女性が、避妊をせずに排卵日のタイミングを合わせて性行為をした場合に妊娠が成功する確率は、20〜30%程度と言われています。想像よりも低い確率だと思う方もいると思います。
妊娠する確率は、年齢を重ねる度に低下していき、ストレスや睡眠不足、肥満などの要因が加わるとさらに低下していくことが明らかになっています。
妊活はいつから始めるべき?
妊活はパートナーと理解しあって、協力して進めていくことが大切です。
パートナーと話し合って、お互いに納得できるタイミングで始める方がいいでしょう。
また、妊活を始めてもすぐに妊娠できるわけではありません。そのため、すぐに妊娠したい時には、できるだけ早く妊活を検討した方が妊娠する確率は上がります。
妊活の種類
妊活は大きく分けて3つあり、タイミング法と人工授精、体外受精があります。
健康な男女が積極的に妊活をしていても、1年間妊娠ができない場合は不妊治療外来がある病院を受診することが勧められています。
不妊治療では行なった検査内容に応じて最適な妊活方法を医師と一緒に検討していきます。
妊活の種類について紹介します。
タイミング法
排卵日の2日前から、性行為を行うことで妊娠する確率は上がります。タイミング法は、この仕組みを利用して性行為をする方法のことです。
そのため、排卵日を正確に把握することが最も重要になります。
排卵日を正確に予測する方法は2つあり、排卵日検査薬を利用する方法と、超音波検査を行う方法があります。
排卵日検査薬は、最適な検査日を月経日から計算して、検査キットに尿をかけて女性ホルモンを感知して、排卵日を把握する方法です。
超音波検査は病院で行う検査方法で、卵巣にある卵胞の大きさを測定することで、卵胞の成熟具合を確認し排卵日を予測します。
この時になかなか排卵が起きない、または排卵がない場合は、排卵誘発剤を補助的に使用することがあります。
人工授精
精子の運動率や精子の数、質を検査して、自然妊娠するには難しいとわかった場合に人工授精へ治療を進めていきます。
また、勃起障害(ED)などの性交障害がある場合にも行われる治療法です。
まず、男性の精子を採取して、運動率や成熟した質の良い精子を選び抜きます。選び抜いた精子を回収、洗浄して、排卵日に近いタイミングで女性の膣内に注入して妊娠する確率を上げます。
女性は、人工授精の副作用で出血、腹痛や発熱を起こすことがあるので、人工授精後は抗菌薬を使用します。
体外受精
体外受精は、人工授精を6回以上行っても妊娠ができなかった場合や人工授精に必要な量の精子を確保できなかった場合に適応されます。
卵子を卵巣から取り出して、精子を振りかけて受精卵にして、細胞分裂が進んで発育良好な胚を膣から子宮内に戻す方法です。
体外受精をして、子宮に戻すまでは2〜5日かかります。
卵子を子宮外に取り出すためには、採卵手術が必要です。この時、できるだけ多くの卵子を確保するために排卵誘発剤を使用します。
麻酔を使用するかどうかは、卵子が取れそうな数や、卵子が取りやすいかどうかで決まります。超音波検査を行いながら、卵巣を刺激して卵子を吸引、確保していきます。
採卵手術の後は、子宮内膜を厚くするために黄体ホルモンの薬を使用し、着床しやすい体作りをしていきます。
顕微授精
体外受精を行っても受精ができなかったり、体外受精に必要な精子の数が足りなかったりする場合は、さらに顕微授精へ妊活をステップアップしていきます。
顕微授精では、良好な精子を1つ選び、細いガラス針内に取り込み、卵子に注入して受精を直接手助けしていきます。
顕微授精は1992年から始まり、今では多くの医療機関で取り入れられています。
妊活のためにできる7つのコツ
妊活方法が色々とあることがわかりましたが、妊娠力を上げていくためには、日常生活でどのようなことに気をつけていけばいいのか気になります。
男性、女性が妊活のためにできることを7つまとめてみました。それぞれ確認していきましょう。
男女ともに禁煙禁酒する
喫煙をしていると男性女性ともに妊娠力が低下します。 女性は妊娠中に喫煙すると、胎児がうまく発育できなくなり低体重児になってしまいます。女性が喫煙してなくてもパートナーの男性が喫煙していると、副流煙の影響を受けてしまいますので、男女ともに禁煙しましょう。
また、ニコチンの影響で血管が収縮してしまい、男性は勃起不全(ED)になる可能性もあります。
そして、過度な飲酒は精子の量と質を低下させることが分かっており、女性の場合は、妊娠中に摂取すると胎児の発育に悪影響が出てしまいます。禁酒をしましょう。
葉酸を摂る
妊娠初期は、胎児が生きていくために必要な脳や神経や臓器が作られていきます。
葉酸は、赤血球を作り、DNAやRNAの合成を促進させるために必要な物質です。母親や胎児の成長にとって欠かせない栄養素になります。妊活中から葉酸を意識して摂取することで、胎児の神経管閉鎖障害のリスクを減らすことができます。
女性が摂取するイメージが多い成分ですが、精子のDNA損傷率が減少することが分かっています。精子の質の向上にも効果があるので男性も積極的に摂取しましょう。
サプリメントで効率よく摂取するのがおすすめです。
基礎体温をつける
基礎体温とは、人間が生命維持に必要なエネルギーしか消費していない状態の体温です。
朝起きてすぐ、体を動かす前に基礎体温専用の体温計で測定を行います。
毎日測定を続けていると、1か月の間に体温が低い時期が続く低温期と体温が高い時期が続く高温期の2層に分かれることがわかってきます。
排卵は、高温期に入る直前に起きていて、基礎体温を付けていくことで毎月の排卵日の目安がわかってくるのです。
また、高温期と低温期がはっきりと分かれていない場合は排卵が起きていない可能性が、高温期の期間が短すぎる場合はプロゲステロンの分泌が不足している可能性があることがわかり、基礎体温の測定を続けていくことで妊娠できない原因を早く見つけることができます。
排卵日に合わせて性行為をする
排卵日に合わせて性行為をすることで、妊娠する確率を上げることができます。
妊娠するには様々な工程があり、卵子が卵胞から飛び出して卵管まで移動して、精子が卵子のところまでたどり着いて受精後、細胞分裂を繰り返し、子宮内膜に着床した時に妊娠が成立します。
排卵日は、基本的に月に1回、1個の卵子しか排卵されないので、妊娠率を上げるためには排卵日を確実に把握することが重要です。
女性が基礎体温をつけたり、排卵日検査薬を利用することで、排卵日を予測することができます。
月に1度しかない排卵日を逃さないためにも、日頃から夫婦で排卵日の情報を共有して協力し合いましょう。
風疹の抗体検査を受ける
妊娠中に母親が風疹にかかってしまうと、胎児に影響が出てしまい、高い確率で先天性風疹症候群になってしまいます。
先天性風疹症候群とは難聴や心臓疾患、白内障など、胎児に様々な障害を起こしてしまう病気です。先天性風疹症候群にならないためには、とにかく女性が妊娠中に風疹にならないように予防することが重要です。
「子供の頃に予防接種をしているから大丈夫」と安心している方もいますが、時間が経つと風疹の抗体が無くなっていたり、抗体がつきにくかったりする人もいるようです。
そのため、妊活中に風疹の抗体を持っているかどうか病院で検査してもらいましょう。血液検査で調べることができます。
男性が風疹になって、妊娠中の女性に感染してしまうこともあります。男性も必ず風疹の抗体検査を受けましょう。
規則正しい生活習慣を意識する
妊娠率を上げるためにはホルモンバランスや自律神経を整える事が大切です。
しかし、仕事や家事で忙しい日々を過ごしていると、ついつい生活が不規則になり、ストレスを抱えてしまい、ホルモンバランスや自律神経は乱れがちです。
バランスの良い食生活、睡眠時間を7〜8時間確保する、定期的に軽めの運動を取り入れることで精子の質が改善することが研究で明らかになっています。
これからの健康増進、妊活力をアップするためにも、男女ともに規則正しい生活習慣を意識しましょう。
適正体重を維持する
痩せ過ぎ、太り過ぎは男性女性共に不妊の原因になってしまいます。
女性の場合は、痩せ過ぎても太りすぎても排卵が障害され、生理周期が不規則になってしまいます。また、肥満になると妊娠中のトラブルが増えることも分かっていて、妊娠高血圧症候群や血栓症のリスクが上がるので注意が必要です。
男性の場合は、精液量、精子数、精子運動率の低下、睾丸の温度が上昇することで精巣に悪影響を及ぼします。
適正体重は、BMI【体重(㎏)/身長(m)の2乗】で確認することができます。25以上で肥満、18.5以下で痩せ過ぎになります。
妊娠に適したBMIは20~24と言われていて、妊活や今後の健康のためにも適正体重を維持するように心がけましょう。
妊娠中のストレス解消法は?
妊娠中は、日常生活に制約が増え、今まで出来ていた事が出来なくなり、ストレスが溜まりやすくなってきます。
ここでは妊娠中も快適に過ごせるように、妊娠中のストレス解消法を説明していきます。
マッサージを受ける
妊娠中は、マッサージはできないと思われがちですが、妊娠中でも体調に気をつけながらマッサージを受けることが可能です。
マッサージは、筋肉の凝りをほぐして、血流促進効果、リラックス効果があり、ストレス発散にも効果的です。
ただし、妊娠中はマッサージできない部分やマッサージ中の姿勢、マッサージオイルにはきをつけるようにしましょう。必ず、マッサージを受ける時は妊娠中であることをしっかりと伝えましょう。
美味しいものを食べる
妊娠中は、お腹の中で胎児を育てているので栄養があるものをたくさん取り入れることが重要です。悪阻の間はなかなか食事が進まないですが、悪阻が落ち着いてきたらバランス良く美味しいものを取り入れていきましょう。気分転換、ストレス発散にも効果的です。
しかし、ビタミンAやマグロなど、妊娠中はあまり多く食べない方がいい食材や、生肉や生魚、アルコール類など妊娠中は控えた方がいい食材もあるので注意しましょう。
夫婦で旅行に行く
妊娠すると、「夫婦2人で旅行に行くのはあと少しの期間だけだから思い出を作りたい」と思う方もいるでしょう。
旅行することで、日常から離れてリラックスできたり、気分が高揚したり、ストレス発散にもなります。
ただし、妊娠中に旅行に行くときは体調管理には十分に気をつけましょう。
旅行はできれば安定期の間のうちに、医師の許可を確認してからがおすすめです。安定期でも切迫早産の危険がある方は、旅行は控えて基本的に安静に過ごすことが重要です。
もし、海外旅行中にトラブルがあると、治療費が驚くほど高額になることがあります。安全面を考えて国内旅行がいいでしょう。
まとめ
妊活は、夫婦で話し合い、お互いに納得してから始めることが重要です。病院でできる妊活方法には、タイミング法や人工授精、体外受精などがあり、夫婦の年齢や体質で対応法は変わっていきます。
日頃からできる妊活方法としては、禁酒や禁煙、基礎体温を測る、規則正しい生活、体重コントロールなど様々な方法がありますので、夫婦で妊活知識をアップデートしていきましょう。
また、妊娠すると日常生活で様々な制約を感じてストレスが溜まりやすくなります。マッサージや美味しい食事、旅行など妊娠中にできるストレス発散法を取り入れながら、夫婦で楽しい妊活ライフを過ごしていきましょう。