※本記事は薬剤師が執筆しております※
「妊活をしているけれどもやっぱり不妊検査は受けたほうがいいのか」と悩んでいませんか?妊活の検査は、男性と女性で異なり様々な項目があります。病院や検査内容によって自費や保険適用になることもあり、不妊治療外来がある病院に相談するのがベストです。
ここでは、妊活の検査はどのようなものがあるのか、更にどんな不妊治療があるのか、金額、受けられる助成まで詳しく説明していきます。
⽬次
- 不妊検査とは
- 女性の不妊検査について【種類と金額】
- 不妊検査と月経との関連性とは?
- 男性の不妊検査について【種類と金額】
- 妊活検査はパートナーで協力すること
- 不妊治療について
- 不妊検査によくある【Q&A】
- 妊活に備えて不妊検査を始めよう
不妊検査とは
妊娠は男性、女性共に様々な条件が揃って初めて成立するものです。
不妊検査では、妊娠しにくい根本的な原因があるのかを調べていきます。検査の内容は男性、女性によって異なります。
自然妊娠できる確率は意外と低く、健康な男女が妊娠を望んで夫婦生活をしても20〜30%で、年齢と共に確率は下がっていきます。
妊活をしていても妊娠できない場合は、早めに不妊症の検査を行うことが推奨されています。
女性の不妊検査について【種類と金額】
女性の不妊検査は、全員が受ける一般的検査や病気を疑う場合に受ける特別な検査があります。こちらで詳しく説明していきます。
病院の判断によって保険診療や自費診療になるかは変わってきますので、自費診療での金額を記載しています。
初診
初診時は医師の問診と内診が行われます。初めて月経が来た年齢や、最終月経日と月経日数、月経周期、生理痛や経血量や手術歴、病歴、家族歴の確認を行います。記憶が曖昧なところは事前に調べて確認しておきましょう。
また基礎体温を毎日測定していると、生理周期や排卵があるかどうかが分かりやすいです。できれば2〜3ヵ月分の基礎体温を測って、記録を見せるといいでしょう。
内診は、診察台の上で行われます。医師が直接体に触れて、痛みはないか、子宮や卵巣に異常がないか診察をしていきます。
費用は自費で約2,000円かかります。
超音波検査
超音波検査は、ここでは経腟超音波検査と言われるもので、超音波プローブという細長い器具を膣から挿入して子宮や卵巣の状態を詳しく観察する検査です。
子宮の大きさや内膜、卵巣の様子などを観察して、子宮筋腫や卵巣嚢腫、子宮内膜症等の疾患がないか確認していきます。
挿入時、診察中の違和感がありますが、痛みや出血がほとんどない検査です。
費用は自費で約4,500円かかります。
下垂体ホルモン検査
不妊検査で測定する下垂体ホルモンは、卵胞刺激ホルモン、黄体化ホルモン、プロラクチンホルモンの3つです。
血液検査で測定し、異常値がないか確認します。下垂体ホルモンの特徴について、以下で説明しています。
費用は自費で各項目約2,000円かかります。
卵胞刺激ホルモン(FSH)
卵胞刺激ホルモンは、卵巣を刺激してエストロゲンの分泌を促進します。
エストロゲンは、卵胞の成熟を促したり、子宮内膜を厚くしたりして、妊娠できる環境を整える働きがあります。
黄体形成ホルモン(LH)
黄体化ホルモンは、卵巣を刺激し卵胞を発育させます。また、急激に分泌することで、成熟した卵胞の一部を破裂させて排卵を引き起こし、排卵後の黄体形成を促します。
黄体はプロゲステロンを放出して、子宮内膜を成熟させ、着床しやすくする働きがあります。
プロラクチンホルモン
プロラクチンホルモンは、乳汁分泌ホルモンと言われ、出産後の女性に大量に分泌されるホルモンで母乳の分泌を促します。男性、女性共に普段から少量は分泌されていますが、出産や授乳をしていないのにプロラクチンの値が高くなると、排卵障害や月経不順の原因になり不妊症になります。
甲状腺検査
甲状腺ホルモンは、神経系や循環器系、代謝を調節する役割があり、卵胞の成長を促します。甲状腺ホルモンが低下すると、卵胞がうまく成熟せず排卵障害や無月経を引き起こしてしまいます。
また、胎児は甲状腺ホルモンを作ることができず、母親の甲状腺ホルモンをもらいながら成長していきます。ホルモンが少ないと胎児の発達に影響を与えます。
甲状腺の検査は血液検査を行い、FT4とTSHという数値の組み合わせで判定していきます。
費用は自費で約3,000円かかります。
卵巣年齢検査
卵巣年齢検査は、血液検査で抗ミュラー管ホルモン(AMH)の数値で測定します。
卵巣年齢は実年齢と共に低下していくのが一般的ですが、非常に個人差があります。
卵子は精子とは違い生産を繰り返すことはなく、生まれる前に作られて卵巣に保存されていて、これ以上新たに作られることはありません。AMHの数値で、自分の卵巣にあとどのくらい卵子が残っているのかを予想することができます。
AMHの値が低い場合は、残された卵子の数が少なく閉経が近いことも考えられますが、妊娠ができないわけではありません。残された卵子を生かして、体外受精を行い妊娠の確率を上げていきます。
費用は自費で約8,000円かかります。
クラミジア検査
クラミジア検査には、抗原検査と抗体検査があります。
抗原検査は、膣粘膜を採取して行い、現在感染しているか分かる検査です。感染が分かれば、抗生剤で治療を行います。
抗体検査は、採血を行い、クラミジアの抗体があれば、過去に感染していたことが分かります。
クラミジアは性行為で感染し、日本で最も多い性感染症です。感染すると、下腹部痛、性器の痒みや痛みが出ますが、症状がそこまで強く出ないので無症状のまま知らずに感染していることもあります。
しかし、症状がなくても感染が子宮内膜や卵管までに及ぶと、着床が障害されたり、卵管が狭くなったりして不妊症に繋がります。
費用は、抗原検査、抗体検査それぞれ自費で約2,000円です。
子宮卵管造影検査
子宮卵管造影検査は、子宮内に造影剤を入れて、子宮の形や卵管の通りを検査していきます。
卵管は、排卵した卵子と子宮内に侵入してくる精子が出会って受精する場所です。
卵管の構造は、膨大部は1cmほどに広がっていますが、接合部は1mmと非常に細いので、感染症や炎症が起きると閉塞したり狭くなったりすることがあります。
検査しながら軽い詰まりを解消することができるので、卵管の通りが良くなることがあります。
検査時は、子宮の形を確認するために子宮内に風船を入れて膨らますので、子宮が圧迫される違和感や造影剤を卵管に流す時、卵管のつまりを取る時に多少の痛みを感じることがあります。
費用は自費で約7,000円です。
フーナーテスト
フーナーテストは、精子が子宮頚管にどのぐらい侵入できるかを確認する検査です。
排卵が近い時期に夫婦生活を行い、翌日午前中に受診をして子宮頸管粘液を採取、顕微鏡で確認します。
顕微鏡内で運動している精子が10匹以上確認できたら結果は良好で、不良の場合は精子の運動を妨げている要因があるので、他の検査を行っていきます。
費用は自費で約1,000円かかります。
血液検査
血液検査には、月経周期に応じて行う血液検査と月経周期に関係なく行う血液検査があり、不妊検査では血液検査を月に数回行うことがあります。
月経周期に従って行う検査には、卵胞刺激ホルモン(LH)、黄体形成ホルモン(LH)、プロラクチンホルモン、エストロゲン、黄体ホルモン測定があり、脳下垂体、卵巣の働きが分かります。
月経周期に関係なく行う検査には、抗核抗体、抗精子抗体、抗リン脂質抗体などの自己抗体検査、血液の凝固機能、AMH測定、クラミジア抗体等があり、費用はそれぞれ自費で1,000〜4,000円程度かかります。
膣分泌物検査
膣分泌物監査では、感染症の有無を確認していきます。一般的な細菌やクラミジア、淋菌に感染していると、子宮内で炎症が起こり不妊、流産や早産の原因につながりますので、薬物治療を行います。
また、膣内の善玉菌、ラクトバチルス属の細菌が、どのくらいいるのかを知ることができます。善玉菌を調べる場合の費用は、自費で約60,000円です。
子宮がん検査
子宮がんは、子宮頸がんと子宮体癌に分けられます。
子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルスによる感染で起こる病気で、性行為で感染します。
子宮体癌はエストロゲンの影響で発生することが多く、月経不順や肥満気味、出産未経験の方に多いです。
子宮頸がん、子宮体がん検査は、いずれも妊活中に外来診療で受けることができます。
子宮がんを発症していた場合は、妊活よりも治療が最優先になります。また、前癌状態の場合はホルモン療法で癌化するので、慎重に行う必要が出てきます。
まだ若いから大丈夫と思わずに、早めに受けておいた方がいいでしょう。
費用は自費でそれぞれ5,000円かかります。
不妊検査と月経との関連性とは?
月経は、月経期、卵胞期、排卵期、黄体期に分かれます。周期によって女性ホルモンは大きく変動し、視床下部、下垂体、卵巣、子宮が連動して月経の周期は成立しています。
そのため、不妊検査は月経の周期に応じて、検査していく項目が細かく分かれています。
月経中に行う検査は、血液検査で卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、プロラクチン、エストロゲンを測定します。
月経終了から排卵までの間に、子宮卵管造影検査を、排卵の時期には超音波検査、フーナーテストを行います。
黄体期には、血液検査で黄体ホルモンを測定し、超音波検査で子宮内膜がどの程度厚くなっているかを観察します。
不妊検査は月経と密接な関連性があり、周期を合わせながら行うことが重要です。
男性の不妊検査について【種類と金額】
男性の不妊検査は、精液検査と泌尿器科の検査に大きく分けられます。金額は病院によって変わりますので、自費でのおおよその金額を紹介しています。
- 精液検査:精子量、質、運動率や奇形の有無等を検査していきます。費用は自費で約8,000円です
- 診察・触診:睾丸の大きさ、精索静脈瘤の有無を調べます。費用は自費で約5,000円です。
- 抗精子抗体検査:精子の動きを妨害する自己抗体を調べます。血液検査、精液検査で行います。費用は自費で約7,000円です。
- 超音波検査:精巣、精索、陰嚢を検査します。費用は自費で約5,000円です。
- 染色体(遺伝子)検査:染色体の数や形を観察し異常がないか確認します。費用は自費で約27,000円です。
- ホルモン検査:テストステロン、性腺刺激ホルモン、プロラクチンを測定します。費用は自費で約9,000円です。
- Y染色体微小欠失検査:血液検査で遺伝子を解析して行う。費用は自費で約40,000円です
妊活検査はパートナーで協力すること
妊娠と出産は女性が経験するので、不妊の原因は主に女性にあると思われがちです。しかし原因は男性女性それぞれ半分ずつの割合であることが分かっています。
妊娠を望んでいる夫婦の6組に1組が不妊治療を受けていて、妊活検査は身近な検査になりつつあります。
妊活検査の難しいところは、ホルモンバランスによって検査の日程を合わせたり、タイミング療法を行ったりするので、月に数回受診をする必要が出てきます。
また、病院にもよりますが、自費での検査が必要なものがあり費用は高額になりがちです。
そのため、時間や費用の面も踏まえて、パートナーと話し合い、2人で理解し協力することが重要です。
不妊治療について
妊活検査を行った後、必要に応じて医師と話し合い不妊治療を行います。
不妊治療は、大きく分けて4つの方法があります。どの治療から始めるかは年齢や検査結果で個人差があります。
タイミング療法
タイミング療法は、排卵日を予測して、排卵日の2日前から排卵日にかけて夫婦生活を行い、妊娠の確率を上げていく方法です。
排卵日の予測は、血中や尿中の黄体形成ホルモン(LH)の数値を測定したり、超音波検査で卵巣の中の卵胞の大きさを測定したりして排卵日を決めていきます。
人工授精
人工授精は精子の数や運動率に問題がある、抗精子抗体を持っている場合に行われます。
排卵日に合わせて、精液を直接子宮の中に注入して妊娠率を上げていく方法です。
精液を直接注入すると、感染のリスクやプロスタグランディンの影響で子宮が収縮し痛みを伴います。そのため、精液を洗浄して運動率の良い精子を選んで注入していきます。副作用に、出血、腹痛、発熱があり、2、3日抗菌薬を服用することがあります。
精子の数が100万以下の場合、人工授精を6回行っても妊娠に至らない場合は、人工授精から体外受精に進みます。
体外受精
体外受精は、排卵する直前の卵子を体から取り出して、体外で卵子を精子と受精させて、2〜5日間かけて発育した受精卵を体の中に戻す方法です。
卵子を確実に取り出すために1週間程度、排卵誘発剤を使用します。その後、超音波で観察を行いながら、卵胞を直接刺激し卵子を吸引していきます。
卵胞を刺激する時や卵子を吸引する時に痛みを伴うので、取り出す卵子の数が多い時、卵子を取り出すのが困難な状況と予測される場合は、事前に麻酔を使うことがあります。
一般的な体外受精は、卵子に精子をふりかけて受精を行っていくのですが、それでも受精できない場合は、体外受精の1つである顕微授精に進みます。
顕微授精
顕微授精では、状態のいい精子を1つ見つけて卵子に直接注入をして、受精を手助けする方法です。受精が困難な時に行われています。
1990年代から始まり歴史が浅い授精方法ですが、世界各地で注目され一気に普及してきています。
ホルモン療法
ホルモン療法は、排卵が起こりにくい、排卵がない方、排卵障害はないが原因不明の不妊の方にホルモンを補充して排卵を起こしやすくする方法です。
タイミング法や人工授精、体外受精での妊娠率を上げるために補助的に行われています。
ホルモン療法に使う薬は内服と注射薬があり、大きく分けて3つに分類されます。
- クロミフェン、シクロフェニル製剤
- ゴナドトロピン製剤
- ドパミン作動薬(高プロラクチン性排卵障害)
排卵障害の重症度や原因によって薬を選択していきます。
不妊検査によくある【Q&A】
不妊検査、治療の助成、どの程度検査に時間がかかるのかは気になるものです。
ここでは助成や検査の所要時間等、よくある質問を詳しく解説していきます。
不妊検査や治療に助成金などはある?
不妊治療は主に自費で行われており助成金制度はありましたが、それでも費用の負担が大きな問題になっていました。
2022年4月から、タイミング法や人工授精、体外受精、顕微授精、男性の不妊手術は保険適用になりました。これは事実婚関係でも認められています。ただし、第三者からの精子、卵子提供、代理出産は、保険適用に認められていません。
保険診療が適用できる年齢と回数に制限がそれぞれ設定されており、保険適用以前に治療を開始した場合は助成金が適用される場合もあります。
厚生労働省のホームページや病院に確認してみましょう。
不妊検査は何日かかる?
不妊検査は月経周期に合わせて行うものもあるので、全ての検査結果が揃うまで1〜2ヶ月かかります。
診察、超音波検査、子宮卵管造影検査や血液検査自体は5〜10分で終わります。
低用量ピルが不妊に影響する?
低用量ピルは月経困難症や子宮内膜症の治療に使われている薬で、低用量の女性ホルモンが含まれています。低用量ピルを服用していると月経が起こらないので、妊娠に影響が出るのではないかと心配される方がいるようです。
結論を言いますと、不妊になる心配は一切ありません。
妊娠希望の方は、低用量ピルを中断して約3ヶ月程度で月経が再開し、妊娠できるようになります。むしろ、子宮内膜症を放置していると妊娠しにくくなるので、低用量ピルを服用してしっかり治療することが大切です。
妊活に備えて不妊検査を始めよう
男性女性共に不妊になる原因はそれぞれ半分ずつの割合であり、妊娠できる確率は年齢を重ねるたびに低くなっていきます。
妊娠を希望していても、1年以上妊娠ができない場合はパートナーとともに積極的に不妊検査を受けて、早めに原因を知り治療することが大切です。
今までは自費診療が多く費用負担が大きな問題になっていましたが、2022年からは保険適用になり負担軽減が期待できます。
妊活をスムーズに進めて行きたいなら、積極的に受診してみましょう。