※本記事は薬剤師が執筆しております※
「妊活中に何をすればいいか知りたい」と、妊活中の過ごし方や食べてはいけない物が気になる方も多いのではないでしょうか。
妊活中は妊娠前からの健康なカラダづくりが大切です。そのためには生活習慣の見直しとバランスの良い食事が欠かせません。
妊活中のカラダ作りは妊娠しやすくなるだけではなく、妊娠・出産への適切な準備にもなります。妊娠してから直ぐに生活習慣を変えることは難しいです。そのため、妊娠後の赤ちゃんの健康のことも考えて、妊娠前から生活習慣の見直しを意識しましょう。
本記事では、妊活中にやっていいことといけないことを解説します。ぜひ、パートナーと一緒に取り組んでみてください。
目次
- 妊活中におすすめの生活とは
- 妊活中に食事に気をつける理由
- 妊活中の女性におすすめの食事
- 妊活中の男性におすすめの食事
- 妊活中に食べてはいけない食事や飲み物は?
- 妊活中にやらない方がいいこと
妊活中におすすめの生活とは
妊活中におすすめの生活とは下記の3点です。
最近では妊娠前から女性やカップルが将来の妊娠を考え、自分たちの生活や健康に向き合うプレコンセプションケアの重要性が注目されています。
プレコンセプションケアは女性のみならず男性にも必要です。妊活中は心身ともに健康であるために、カップルで適度な運動やバランスのとれた食事、ストレスを溜めない生活を意識しましょう。
また、妊活中は妊娠しやすい時期にタイミングをとることも大切なため、生理周期の把握は妊娠への近道になります。
次に上記の3点を詳しく解説します。
参考:国立成育医療研究センター
自分のカラダを整える
妊活中は男女ともに、適度な運動とバランスのとれた食事を意識したカラダ作りが基本です。
運動やバランスのとれた食事は、将来の生活習慣の予防や適正体重の維持にもつながります。生活習慣病や肥満は妊活や妊娠の経過に悪影響を与える可能性があります。そのため、カップルで適度な運動や食生活に気をつけて適正体重を維持しましょう。
とくに女性は妊娠前から葉酸の積極的な摂取が推奨されています。食事からでは足りない場合はサプリをうまく活用することもおすすめです。
ストレスを溜めない
妊活中は男女ともにストレスを溜めないようにしましょう。
女性の生理周期は脳からでているホルモンによってコントロールされています。ただ、精神的な強いストレスがあると、排卵がスムーズに行われず不妊の原因になることもあります。妊活中は好きなことを我慢したり、なかなか妊娠できずストレスを感じる場面も多いです。
男女ともにストレスは妊活によくない影響を与えるため、自分にあったストレス発散法を見つけて息抜きをしましょう。
参考:日本生殖医学会
自分のカラダのサイクルを知る
女性の生理周期を把握することが妊娠への近道になります。
生理不順の場合は排卵が行われておらず、妊娠しづらい原因が隠れている可能性もあります。また、妊活中は、妊娠しやすい時期である排卵日前にタイミングをとることが大切です。
そのため、妊活中は生理周期や基礎体温表を記録して、排卵の有無やカラダのサイクルを把握しましょう。妊娠しやすい時期の把握には、妊活アプリや排卵検査薬の活用がおすすめです。
妊活中に食事に気をつける理由
妊活中の食事に気をつける理由は、お腹の赤ちゃんの健康や妊娠した場合のカラダを整える準備をするためです。厚生労働省の「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」でも、妊娠前からバランスの良い食事を意識したカラダ作りがすすめられています。
肥満や極端な痩せは不妊になる可能性や妊娠・出産のトラブルにつながります。とくに妊娠中は食生活を見直して適正体重を維持することが重要ですが、食生活は急に変えられるものではありません。また、現時点で「これを食べれば妊娠する」といった妊娠率を上げる食品や食事はないと考えられています。
妊活中は特定の食品を取り過ぎたり、極端に避けたりはせずにバランスの良い食事を意識しましょう。
参考:
厚生労働省.妊娠前からはじめる妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針
妊活中の女性におすすめの食事
妊活中の女性におすすめの食事は下記の通りです。
日本人女性で摂取が不足しがちなビタミンとミネラルには、葉酸と鉄があります。葉酸は赤ちゃんの先天異常である神経管閉鎖障害の予防になるため、妊活中から十分な摂取が必要です。鉄分やたんぱく質も妊娠中はもちろん、妊活中にも欠かせない栄養素です。
最近では若い世代を中心に、バランスのとれた食事が取れていないことが言われています。そのため、妊活中から妊娠に重要な栄養素が不足しないバランスのよい食事を意識することが大切です。
参考:厚生労働省.妊娠前からはじめる妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針
ビタミンが多く含まれる食事
ビタミンは他の栄養素の代謝や吸収を高め、カラダを正常に保つ働きがあります。種類が豊富なビタミンの中でも妊活中は、葉酸、ビタミンD、ビタミンEが不足しないように注意しましょう。各ビタミンが多く含まれる食材が使われた副菜を、献立に取り入れてみてくださいね。
- 葉酸…ビタミンB12と協力して血液をつくる。お腹の赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを下げる。
葉酸を多く含む食材:ブロッコリーやほうれん草などの緑黄色野菜、いちご、キウイ、納豆など
- ビタミンD…カルシウムの吸収を高め、骨を丈夫にする。充足している方が妊娠率・生産率が高いという報告がある。
ビタミンDを多く含む食材:まいたけ、ぶなしめじ、エリンギ、サケ、いくら、サンマなど
- ビタミンE…抗酸化作用を持ち血流改善作用がある。子宮血流改善や子宮内膜を厚くする効果の報告がある。
ビタミンEを多く含む食材:うなぎの蒲焼、モロヘイヤ、カボチャ、ほうれん草、アーモンド、ひまわり油、オリーブ油など
鉄が多く含まれる食事
鉄は赤血球のヘモグロビンの材料で血液をつくり、全身に酸素を運びます。妊娠中は赤ちゃんの成長や循環する血液量が増加に伴い鉄分がより必要になるため、妊活中から多くの鉄分摂取が必要です。とくに女性は生理により鉄分が不足しやすいため、注意しましょう。
鉄分を多く含む食品…レバー、しじみ、イワシ、アサリ、大根の葉、小松菜、ほうれん草、ひじき、納豆など
参考:厚生労働省.妊娠前からはじめる妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針
タンパク質がとれる食事
タンパク質は筋肉、骨、皮膚、ホルモン、免疫物質などの材料となり、カラダを構成するために欠かせない3大栄養素の一つです。
妊娠前から肉・魚・卵・乳製品などの動物性のタンパク質と大豆製品などの植物性のタンパク質をバランス良く摂取することが大切です。食材ごとにタンパク質以外に含まれる栄養素が異なるため、さまざまな食材の主菜を組み合わせた献立がおすすめです。
タンパク質を含む食品…鶏胸肉、豚ヒレ肉、牛もも赤身肉、マグロ、カツオ、サバ、卵、ヨーグルト、チーズ、納豆、高野山豆腐など
妊活中の男性におすすめの食事
妊活中の男性も女性と同様にバランスの良い食生活を意識して、適正体重を維持することが大切です。
男性不妊の主な原因は精子を造る機能に問題があることが言われています。肥満や不規則な食生活は精液に影響する可能性があります。基本的には男性も女性と同様に特定の食品にこだわらず、高タンパク質、低糖質をベースにミネラルやビタミンが不足しないような食生活を心掛けましょう。
中でも、男性の生殖機能に関わりがある亜鉛は不足させないように注意が必要です。
参考:日本生殖医学会
亜鉛が含まれる食事
亜鉛は細胞が新しく作り変えられる時に必要なミネラルです。別名「セックスミネラル」とも呼ばれる亜鉛は精子を作る過程や精巣機能の発育に必要とされています。
とくに妊活中の男性は、男性の生殖機能に関わる亜鉛が不足しないように注意しましょう。
亜鉛が含まれる食べ物…カキ、うなぎの蒲焼、ホタテ、豚レバー、牛もも肉、鶏レバー、切り干し大根、高野豆腐、納豆、アーモンド、落花生など
妊活中に食べてはいけない食事や飲み物は?
「妊活」中は妊娠中と異なり、絶対に食べてはいけないものはありません。ただ、妊活中で妊娠の可能性がある場合は、妊娠中にNGとされる生肉やお酒などは避けるのがおすすめです。また、妊娠してからいきなり食生活を変えるのは難しいため、妊娠前から意識を変えていくことも大切です。
そのため、ここでは「妊娠」に備えて食べるのを控えた方がいい食事や飲み物を紹介します。
生肉やスモークサーモンなどの動物性の生もの
妊娠の可能性がある場合は下記の食べ物は避けるようにしましょう。
- 加熱処理の不十分な肉(馬肉、牛刺、レアステーキなど)
- 生ハム、ナチュラルチーズ、スモークサーモンなど…リステリア食中毒の可能性がある
加熱処理の不十分な肉はトキソプラズマ症に感染する可能性があります。妊娠中にトキソプラズマ症に初めて感染するとお腹の赤ちゃんに影響する可能性があります。
また、生ハムやナチュラルチーズやスモークサーモンなどはリステリア菌に感染するリスクがあります。妊娠中はリステリア菌に感染しやすくなり、流産や産まれた赤ちゃんに影響がでることもあります。妊活中で妊娠の可能性があるときは、感染のリスクのある食べ物は控える方が安心です。
参考:日本産婦人科医会
ファストフードや揚げ物などの脂質や糖質の多いもの
脂肪や糖質の摂り過ぎは生活習慣病や肥満の元となります。生活習慣病も肥満も健康に良くないだけではなく、妊娠の経過へ悪影響を与える可能性があります。
また、脂肪は量だけではなく質にも注意が必要です。マーガリンなどに多く含まれるトランス脂肪酸は排卵障害や精子数減少の報告もあるようです。
近年では脂質のとりすぎている人の割合が増えていることがわかっています。妊活中から脂肪や糖分が多く含まれるファーストフードや揚げ物の取り過ぎは避けましょう。
過度なアルコールやカフェインなどの飲料
アルコールやカフェインと妊娠の関係についての研究は多数ありますが、妊娠への影響は明らかになっていないようです。
一方、妊娠中のアルコールはお腹の赤ちゃんの発育が悪くなったり、脳の発達障害などの原因になることが考えられています。少量でも赤ちゃんに影響がでる可能性もあるため、妊娠の可能性がある時期から飲酒は避けましょう。また、飲酒の習慣を急に変えるのは難しいため、妊活中からアルコールは控えめにしておくのがおすすめです。
また、過度なカフェインの摂取は健康への悪影響やお腹の赤ちゃんの発育を阻害する可能性が報告されています。
ただ、好きな飲み物が制限されるとストレスになる可能性もあるため、妊活中はアルコールやカフェインの過剰摂取に注意して飲みましょう。
参考:東京都福祉保健局、農林水産省、厚生労働省.e-ヘルスネット
妊活中にやらない方がいいこと
妊活中は男女ともに下記の2点は避けましょう。
喫煙も肥満も男女ともに妊活に良くない影響を与えるだけではなく、将来の健康のためにもおすすめできません。
また、喫煙を含む生活習慣は身近な人の影響を受けやすいです。妊娠するのは女性ですが、喫煙の習慣を控えるためには、パートナーの男性も自覚して禁煙することが大切です。
妊娠前から生活習慣をいきなり変えることは難しいため、妊活中から男女ともに禁煙と適正体重の維持を心がけるようにしましょう。ここでは、禁煙と肥満による影響を詳しく解説します。
喫煙
女性の喫煙は妊娠・出産の過程において悪影響が、男性は精液の状態に影響を与える可能性があります。
妊娠中の喫煙はお腹の赤ちゃんの発育に悪影響を与えたり、妊娠合併症が生じるリスクが高まるため、禁煙が必要です。女性またはパートナーの男性の喫煙により、妊娠を希望してから妊娠するまでの時間は長くなることも考えられています。
お腹の赤ちゃんの健康のためにも、妊活をきっかけにパートナーともに喫煙は避けましょう。
太り過ぎ
肥満は生活習慣病の原因となり妊娠の経過への悪影響や不妊の原因にもなります。一般的に、肥満とは身長に比較して体重が重い状態を指し、BMI(体格指数:体重(kg) ÷ 身長(m)の2乗)が判定基準の値として使われます。
18.5未満…低体重
18.5~25未満…普通体重
25以上…肥満
女性では肥満により生理周期の異常が起こり、排卵障害による不妊原因になる可能性があります。また、男性でも精液の状態に影響を与えることも言われています。
肥満は見た目のみだけではなく、健康にも良くないため妊活をキッカケに男女ともに太り過ぎないように注意してください。
参考:日本肥満学会
まとめ
本記事では、妊活中にやっていいことといけないことを解説しました。
妊活中は男女ともにバランスのとれた食事、適度な運動、ストレスを溜めない生活が大切です。また、妊活への悪影響がある喫煙や太り過ぎも避けましょう。
妊活中のカラダ作りは妊娠しやすくなるだけではなく、妊娠・出産への適切な準備になります。生活習慣を直ぐに変えることは難しいため、妊娠前からパートナーと一緒に生活習慣の見直しをしてみてくださいね。