※本記事は薬剤師が執筆しております※
性行為の後に女性器から精液がでてくる状態が、妊娠率に影響するのか気になっていませんか。行為後に精液が漏れでると精子が子宮に入っていかず、妊娠しにくくなるのではと心配になると思います。
行為後に女性器から精液がでてくることは妊娠率に影響はないと考えられています。妊娠の仕組みから考えると、射精後、元気な精子はすぐに子宮内に入っていくためです。
この記事では精液がでてくる現象について解説します。妊娠の仕組みも解説するため、ぜひ参考にしてください。
目次
- 妊活中の行為に関する女性のよくある悩み
- 行為後に女性器から精液が出てくるのは不調の表れではない
- 出てくる液の正体とは
- そもそも女性が妊娠するメカニズムとは?
- 女性器から漏れる液体を拭いても避妊にはならない
- 妊活中はパートナーとのセックスと向き合う好機会!
妊活中の行為に関する女性のよくある悩み
妊活中は性行為の悩みがある女性も多く、精神的なものと身体的な悩みがあります。
〜妊活中の性行為に悩む女性のリアルな声〜
「義務的なため、気持ちもカラダものらない」
「早く子供を作らなくてはというプレッシャーで楽しくなかった」
「夫にプレッシャーになると言われた」
「ストレスで体調と心が不安定になった」
「性行為後で精液が膣から漏れでてしまいました」
「以前は妊娠のためにもっと多かったのですが、お互い性欲があまりなく減ってきました。(中略) 性交痛というか前戯が痛いのです。 それを訴えすぎて主人も嫌になったようで」
SNSを見ると精神的な悩みでは、女性だけではなく男性もセックスに関するプレッシャーを感じていることが分かります。また、女性では性行為後のカラダの違和感に悩んでいる方が多いです。
参考:
セックスにプレッシャーを感じてしまう
妊活中は妊娠率を高めるために、セックスのタイミングや回数を意識することも大切です。ただ、妊活を意識するあまりセックスにプレッシャーを感じてしまうことが男女ともにあるようです。
女性側では「排卵日だから性行為をしたいけど、仕事で疲れていて誘いづらい」といった声があります。一方、男性側では「セックスをしなければいけない」と女性側からの排卵日にしなければいけないプレッシャーを感じる声がありました。
本来セックスは子作りだけが目的ではなく、夫婦の大切なコミュニケーションの一つです。単に子作りだけを目的としたセックスをしないように、男性側は女性をケアする姿勢を持ち、女性側はココロに余裕をもちましょう。
行為直後に体に異変・違和感を感じる
女性は精神的な悩みだけではなく、行為直後のカラダに関する悩みもあるようです。
〜性行為後のカラダの違和感に悩む女性のリアルな声〜
「妊娠しやすい体位はありますか?妊娠を強く望むようになりました。今まで避妊をしてきましたが、妊娠を希望しているので避妊をやめました。ギュッと締めていてもタラーッと精液が垂れてしまいます」
「先日は避妊をしなかったのですが、後で精子が膣から漏れ出てしまいました。これって普通のことなのでしょうか?自分の想像では、精液は全て膣に入るのかと思っていました。それとも何か問題があるのでしょうか?」
タイミング法をしている方だと、行為後の精子の様子が気になるようです。また、行為後の体位や過ごし方についても悩む声もあげられていました。
参考:
行為後に女性器から精液がでてくるのは生理現象の可能性が高い
「行為後に女性器から精液が漏れでることはカラダに良くないことなのかな?」と妊娠率への影響だけではなく、カラダに異常はないか心配になる方もいると思います。
結論から言うと、精液が女性器から漏れでるのは生理現象で妊娠率にも影響がないと考える意見が多いです。漏れでる液は精液や女性器からの分泌物が混ざったもので、量が多いと女性器から出でくることもあります。
ただ、妊活中に限らず行為後の悩みとして、腹痛や性交痛を訴える女性もいます。性交痛の主な原因には、膣内の潤い不足が考えられていますが、中には子宮内膜症など不妊原因になる病気が隠れていることもあります。性行為のたびに痛みがある場合は婦人科への受診がおすすめです。
出てくる液の正体とは
①射出された精液の一部が膣から漏れでてくる
女性器から出てくる液の正体は、射精されて女性器に入りきらなかった精液の一部です。射精量が多い場合、全てが女性器に収まらず、時間が経過してから漏れでることもあります。
不妊専門のクリニックでは、射精後の元気な精子は速やかに子宮に達すると考えて、精液が漏れたり、行為後の体位は妊娠率に影響しないと考える意見が多いです。
SNSでは精液が漏れでると、妊娠しにくくなると考えて「精子が出ないように、足を上げて寝る」など、行為後の過ごし方が議論になっていることがあります。ただ、精液が漏れでることや行為後の体位で妊娠率が下がるかは医学的な根拠はなく、解明されていないようです。気になる方は、通院先の医師にも確認してみましょう。
参考:神谷レディースクリニック
②排卵期に分泌される頸管粘液
漏れでる液は精液以外には、女性器からの分泌物、いわゆるおりものが混ざっていると考えられています。
おりものは、子宮頸管や膣からの分泌液が混ざったものです。おりものは、生理周期の影響を受けて排卵期や性的興奮時などで一時的に増えるようになります。精液が排卵期に増えたおりものと混じれば、行為後に膣外へ漏れでることもあるようです。
排卵前には精子が子宮内へ侵入しやすいように、透明なおりものの量が増加し、子宮の入り口は頸管粘液で満たされるようになります。
タイミング法をしている方だと、排卵前にタイミングを指示されることが多く、液の量が多く漏れでている可能性も考えられます。
ただ、おりものの増加には性感染症や膣炎など病的な原因で増えることもあります。おりものの量に違和感を感じるときは婦人科への受診がおすすめです。
参考:
株式会社メディックメディア.病気が見えるvol9婦人科・乳腺外科第4版
そもそも女性が妊娠するメカニズムとは?
そもそも、妊娠はどのようにして成立するかはご存知でしょうか。妊娠の成立の仕組みは、本来であれば性行為をする男女だれもが知っておきたい知識です。もちろん、妊活をこれから始める方は基礎知識として抑えておく必要があります。
妊娠は大まかに下記の過程で成立します。ここでは、各過程を詳しく解説します。
- 排卵
- 射精
- 受精・輸送
- 着床
①排卵
成熟した卵胞(卵子を包む袋のようなもの)から卵子が排出される現象を排卵と呼びます。
卵巣にあるいくつかの卵胞は、脳から分泌されるホルモンによって成長します。その中で選ばれた一つの卵胞が成熟して排卵が起こります。排卵によって卵巣から飛び出た卵子は卵管采(らんかんさい:卵管の先にある手のような部分)にピックアップされて、卵管膨大部で精子を待ちます。
②射精
尿道から精液が放出されることを射精とよびます。腟に射精された精液に含まれる精子は、子宮頸管、子宮の中を通って、卵管へと進みます。
③受精・輸送
性行為によって子宮内に侵入した精子が、排卵された卵子と融合して受精卵になるまでの過程を受精といいます。なお、女性のカラダの中での精子の寿命は約3日間、卵子の寿命は約24時間と考えられています。運良く卵管膨大部にいる卵子と子宮内から進んできた精子が出会うと受精が行われます。
受精卵は分裂を繰り返しながら、約5日間ほどかけて卵管を移動し子宮の中に到達します。
④着床
子宮の中に到達した受精卵は、子宮内膜と接着して、中に入り込んで根をはります。この現象を着床とよび、妊娠の開始と定義されています。
なお、この時期までに、赤ちゃんのベットとなる子宮内膜は受精卵が着床しやすいようにフカフカな状態になっています。
女性器から漏れる液体を拭いても避妊にはならない
「女性器から漏れでる液体が気持ち悪くて、拭き取ってしまうけど妊娠しにくくなるのかな?」と行為後の漏れでる液の処理に悩む方もいます。
ただ、精液が女性器から漏れでることは生理現象の可能性が高いと考えられています。射精後、元気な精子は速やかに子宮に達すると考えられているため、腟内に精液が入れば妊娠の可能性はあると考えられています。そのため、漏れでた精液を拭き取るなどの性行為後の処理の仕方は妊娠率に影響しないと考える意見が多いです。
また、腟内を過度に洗うとトラブルの元になってしまいます。腟内は細菌の繁殖を防ぐ自浄作用があり、洗いすぎると自浄作用が弱まる可能性があります。膣を含むデリケートゾーンは気になっても優しく洗い流しましょう。
妊活中はパートナーとのセックスと向き合う好機会!
結婚生活を円満にしていくためにも、妊活中はパートナーとセックスに向き合う良い機会です。セックスは子作りのためだけではなく、パートナーとの大切なコミュニケーションの一つ。そのため、セックスと向き合うことはお互いのことをよく知るきっかけにもなります。
妊活中は子作りが主な目的となってしまうため、仲が良い夫婦でもときにはセックスがプレッシャーに感じ、ストレスの原因になることもあります。中には、セックス自体が嫌になってしまい、セックスレスやED(Erectile Dysfunction:勃起障害)など、不妊原因になる可能性もあります。
また、セックスレスは不妊原因になるだけではなく、ふだんの結婚生活にも影響を与え、離婚のきっかけになるケースも珍しくはありません。
妊活中はセックスが欠かせないため、パートナーとのセックスについて向き合うチャンスでもあります。お互いにパートナーの立場になって、妊活中のセックスのあり方を考えてみましょう。
まとめ
本記事のポイントを以下にまとめてみました。
- 妊活中の行為に関する悩みには、セックスにプレッシャーを感じたり、行為直後のカラダの違和感がある
- 行為後に女性器から精液が漏れでるのは生理現象で、妊娠率にも影響がないと考える意見が多い
- 漏れでる液は精液や女性器からの分泌物が混ざったもので、量が多いと女性器に入りきらず出でくることもある
- 妊娠は排卵、射精、受精・輸送、着床の過程で成り立つ
妊娠するためには欠かせないセックスですが、夫婦の大切なコミュニケーションの一つです。ただ、妊活中は妊娠率やセックスに対するプレッシャーなど、悩みをかかえる方も多いです。
どちらかが、セックスに関する不安をかかえないためにも、妊活中はパートナーとのセックスについて改めて向き合ってみましょう。