※本記事は薬剤師が執筆しております※
妊活にかかる費用を知りたい方は多いのではないでしょうか?
治療法や保険適用の有無が関係しているため、妊活にかかる費用は人によって異なります。
この記事では妊活中にかかる費用や保険適用について紹介します。ぜひ、最後まで読んでください。
目次
- 妊活は費用がかかるって本当?
- 妊活でかかりうる費用を項目別に紹介
- 高額な不妊治療で妊活を諦めないために!
- 20代の妊活でかかる費用の平均
- 30代前半でかかる費用の平均
- 30代後半・40代以上の妊活でかかる費用の平均
- まとめ
妊活に費用がかかるって本当?
妊活の方法は人によりますが、状況に合わせて次の方法に進むのが一般的です。規則正しい生活をする、基礎体温の測定や排卵予測検査薬でタイミングをとるなどの「自分たちだけでする妊活」なら費用はそれほど高くありません。産婦人科医に相談するようになると医療費がかかります。
産婦人科医への相談は、高額なイメージがありますが、保険がきかない自由診療のみではなく、保険診療の範囲内のものもあります。
費用が医療機関によって異なる自由診療になるのは、妊活が進み、保険診療に加えて「先進医療」が追加になる時からです。
妊活でかかりうる費用を項目別に紹介
不妊を心配した経験のある夫婦は3組に1組、不妊の検査や治療の経験のある夫婦は5.5組に1組と言われています。
妊活でかかる費用というのは一体どのくらいでしょうか?妊活でかかりうる費用を項目別に紹介します。
- 一般不妊治療の費用
- 生殖補助医療(旧特定不妊治療(高度不妊治療))の費用
- その他妊活中にかかる費用
以下で、1つずつ詳しく説明します。
一般不妊治療の費用
一般的な不妊治療は、次の3つです。一般不妊治療の費用を紹介します。
- タイミング法
- 排卵誘発法
- 人工授精
以下で、1つずつ詳しく説明します。
タイミング法
さまざまな検査結果から医師が排卵日を推測し、医師から妊娠の可能性が高い日の指導を受け、その前後に性行為を行うのがタイミング法です。保険適用の範囲内であれば、1回2,000〜3,000円です。排卵誘発剤を使用すると保険適用外になる場合もあります。
不妊治療の最初の段階がタイミング法です。
排卵誘発法
排卵誘発法とは、排卵誘発剤で卵子を発育させ、排卵を促す方法です。排卵障害のある患者に行いますが、正常排卵周期の患者にも妊娠率を上げるために行うことがあります。また、人工授精や体外受精でも排卵誘発法の併用で妊娠率が上がるので、併用することがあります。
費用は1回2,000円〜程度です。
人工授精
人工授精とは、排卵の時期に、子宮入り口から管で精液を子宮内へ注入する方法です。通常タイミング療法の次に行うステップの治療法です。人工授精では精液をタイミング療法より奥の子宮内へ注入します。精液が子宮内へ入れば、後は自然妊娠と全く変わらず、赤ちゃんへの影響や副作用の心配もありません。
2022年4月より、保険適用になり、1回5,460円です。厚生労働省の調査で5-6回までに妊娠できなければ人工授精では妊娠することが難しいことが分かっています。
生殖補助医療(旧特定不妊治療(高度不妊治療))の費用
2022年4月から、生殖補助医療(旧特定不妊治療(高度不妊治療))が保険適用になっています。ただし、年齢制限(初めての治療開始時点での女性の年齢が43歳未満)や回数制限(40歳未満で胚移植通算6回、40歳以上43歳未満で胚移植通算3回)があり、それ以外の場合は従前どおり、自由診療となり、自費です。
費用については、ここではその治療法の費用についてのみ挙げています。実際、行う場合は、採卵などの費用も必要です。
また、生殖補助医療のうち、オプション医療は、保険適用されたもののほか、保険外で「先進医療」として保険診療と併用できるものがあります。
ここでは、5つの生殖補助医療の費用を紹介します。
- 体外受精
- 顕微授精
- 凍結融解胚移植
- 精巣内精子採取術(顕微鏡なし)
- 精巣内精子採取術(顕微鏡あり)
以下で、1つずつ詳しく説明します。
体外受精
女性の体外に卵子を取り出して、シャーレの中で精子と受精させ、受精卵になり、分割して受精後2日目の「初期胚」もしくは5~6日後の「胚盤胞」まで成長したら、カテーテルで子宮へ送り込む方法です。タイミング法や人工受精などでの受精が難しい場合が対象です。
保険診療で体外受精1回12,600円ですが、精子採取や卵子処理によって費用が別途徴収されることもあります。
顕微授精
精子をガラス針の先端に1個入れて、顕微鏡で見ながら卵子に直接注入する方法です。体外受精に比べ工程数が多いので、費用が高額です。卵子の個数で違いますが、保険診療で14,400円〜38,400円です。体外受精や胚移植を同時に行うと別途費用が発生します。
さまざまな研究報告がありますが、現在のところ、顕微授精で胎児に異常が生じる確率は、自然妊娠と差がないと報告されています。
凍結融解胚移植
体外受精や顕微授精による受精卵を凍結して保存し、採卵した周期とは別の周期に融解して子宮の中に移植する方法が凍結融解胚移植です。採卵した周期に得られた受精卵を培養し移植する方法を新鮮胚移植と呼びますが、新鮮胚移植では採卵の際の卵巣刺激のため、子宮内膜が薄く移植に適さない場合があります。
保険診療で1回36,000円ですが、費用が別途徴収されることもあります。
精巣内精子採取術(顕微鏡なし)
閉塞性無精子症に適応されます。 陰嚢皮膚を約1cm小切開し、肉眼で組織を採取し、精子を探し出す方法です。手術時間は約10〜30分です。麻酔は局所麻酔で日帰りで行えます。
保険診療で1回37,200円ですが、費用が別途徴収されることもあります。
精巣内精子採取術(顕微鏡あり)
非閉塞性無精子症に適応します。陰嚢皮膚を約3cm切開し、手術用顕微鏡を用いて精巣の中から精子が作られていると推定される精細管(太く白濁した管)を取り出す手技です。顕微鏡を用いない方法より、精子採取率や手術の安全性は高いです。手術時間は約30〜90分です。麻酔は局所麻酔で日帰りで行うことができます。
費用は精巣内精子採取術(顕微鏡なし)と同様に、保険診療で1回37,200円ですが、費用が別途徴収されることもあります。
その他妊活中にかかる費用
不妊外来までの交通費、サプリ代、検査費用など、妊活中には病院以外にもお金がかかります。ここでは病院以外で妊活中にかかる費用を紹介します。
- 健康に気を遣った食費
- 妊活サポートグッズの費用
以下で、1つずつ詳しく説明します。
健康に気を遣った食費
妊活中は生活習慣の見直しも重要です。妊娠しやすい体づくり、おなかの赤ちゃんや妊娠中の体重管理や安産のため、バランスのよい食事をとりましょう。
「妊娠、出産にはお金が必要」と節約したくなりますが、食費を節約するのはあまり賢明ではありません。摂りにくい栄養素をサプリで補う場合は費用もかかります。
食材の品質も気になるのでコストパフォーマンスは大切です。お金は上手に使って赤ちゃんを授かりましょう。
妊活サポートグッズの費用
基礎体温を測定するための婦人用体温計や体を温める腹巻など妊活サポートグッズにもお金がかかります。
人によっては妊娠しやすいからだづくりのために鍼治療、ホットヨガに通う人もいるでしょう。金額は少なくても続けると少なくない負担になります。
どこまでお金を掛けるかは本人達次第です。パートナーと良く話し合って、優先順位を決めましょう。
高額な不妊治療で妊活を諦めないために!
2022年4月、不妊治療が健康保険の適用対象となりました。それ以前は不妊原因を知るための検査や治療のみに保険が適用されており、体外受精などは保険適用範囲外でした。今回の改訂でこれらも健康保険の適用範囲となり、医療機関での支払いが原則3割負担で検査や治療が受けられるようになりました。
ただし、治療法や年齢、回数に条件がありますので、医療機関を受診の際は必ずご確認ください。
20代の妊活でかかる費用の平均
29歳以下の平均妊活費用は3万3,757円(年)と言われています。
栄養バランスのとれた食事、適度な運動、禁煙で妊娠しやすい体づくりなど、妊活は自分たちのペースでできることから始めましょう。自分の体の状態を知るための、基礎体温測定、排卵日予測検査薬も活用して排卵日を予測して、タイミングを合わせると妊娠しやすくなります。
30代前半でかかる費用の平均
30〜34歳の平均妊活費用は7万9,277円(年)と言われています。これは20代の2倍です。
妊活スタイルは人それぞれです。年齢が進むにつれ妊娠率も下がるので、状況に応じ、ステップアップしていきます。自分達のペースでの妊活なら費用はそれほどではありませんが、産婦人科医を受診するステップから医療費がかかります。
30代後半・40代以上の妊活でかかる費用の平均
35歳以上の平均妊活費用は34万7,336円(年)と言われています。年齢が高いほど費用も高く、35歳以上では20代の10倍以上になっています。
35歳以上で出てくるのは、妊娠率の低下だけではなく、流産率の増加です。ほとんどすべての不妊治療が保険適用になったといっても、年齢制限や回数制限もあり、またすべてが保険でまかなえるわけではありません。
保険適用になったといっても、不妊治療で医療機関にかかる場合は、必ず事前に確認しましょう。
まとめ
本記事では妊活中にかかる費用や保険適用について紹介してきました。
治療法や保険適用の有無が関係しているため、妊活にかかる費用は人によって異なります。
妊活は、なるべくなら妊娠率の高い20代に始めましょう。その方が費用はかかりません。不妊治療は2022年4月から保険適用になりましたが、年齢・回数制限があります。
いずれ子どもを持ちたいと考える方は、妊活開始前に、確認しておきましょう。