不妊治療の費用はどれくらいかかる?不妊治療のお金事情
妊活とお金
2022.12.03

不妊治療の費用はどれくらいかかる?不妊治療のお金事情

※本記事は薬剤師が執筆しております※

  • 不妊治療の費用の平均はどれくらい?
  • 不妊治療のお金が続くか心配…
  • 保険適用になると聞いたけれども、どこまで保険適用されるの?

不妊治療は高額だと聞き、不妊治療にかかる費用を不安に感じている方も多いのではないでしょうか?

不妊治療にかかる費用を把握して、金銭面での不安を解消し早めに行動することで、妊娠の可能性を高めることができます。不妊治療は開始年齢が早いほど、妊娠する確率が高くなります。不妊の原因を知るためには検査が必要であり、不妊かもしれないと思ったら早めに受診しましょう。

本記事では日本における不妊治療の現状、不妊治療にかかる費用や助成金について解説します。

⽬次

  1. 「もしかして不妊?」身近になった不妊治療
  2. 不妊治療の種類
  3. 不妊治療の助成制度が拡充
  4. 不妊治療が保険適用となる方
  5. 不妊治療にかかる費用の目安
  6. 不妊治療の成功率を上げるためには?
  7. 「不妊かも」と不安を感じたら、検査を受けよう
  8. まとめ

「もしかして不妊?」身近になった不妊治療

晩婚化や晩産化が進む日本では、不妊治療が身近になりました。友人や職場の同僚にも不妊治療を受けている人がいるのではないでしょうか。

日本で不妊を心配したことがあるカップルは3組に1組と言われ、実際に5.5組に1組の夫婦が不妊の検査や治療を受けています。生殖補助医療等の不妊治療によって誕生する子どもも2019年では14.3人に1人と増加傾向にあります。

不妊治療について職場における理解を深め、不妊治療のための休暇制度等を利用しやすくする環境整備もすすめられています。

不妊治療の種類

不妊治療は大きく分けて、一般不妊治療と生殖補助医療の2つに分けられます。

一般不妊治療 生殖補助医療
タイミング法
人工授精
①採卵、採精
②体外受精、顕微授精
③受精卵・胚培養
④胚凍結保存
⑤胚移植

それぞれの治療について詳しく説明していきますので、続きをお読みください。

一般不妊治療

不妊を診断するための各種検査なども一般不妊治療に含まれます。一般不妊治療はタイミング法と人工授精のことを指すことが多く、基本的に保険適用の対象です。

患者さんにとって比較的負担が少ない治療法で、一般不妊治療で妊娠するカップルも多くいます。卵子の状態の見極めや人工授精において精子の洗浄濃縮による精子の選択によって妊娠する確率も変わるため、実績のある医療機関で治療を受けましょう。

生殖補助医療

生殖補助医療とは以下の一連の流れにおける診療をいいます。

生殖補助医療

  1. 採卵、採精
  2. 体外受精、顕微授精
  3. 受精卵・胚培養
  4. 胚凍結保存
  5. 胚移植

日本生殖医学会などの関係学会が発表するガイドラインなどで有効性と安全性が確立された不妊治療方法です。卵子と精子を取り出し、体外受精か顕微授精で受精させ、受精卵を培養後女性の子宮内へ移植します。

不妊治療の助成制度が拡充

2004年から少子化対策の一環として、高額な医療費がかかる不妊治療の経済的負担を軽減するため、不妊治療費に対する助成が行われてきました。2022年4月より特定不妊治療費助成の対象だった体外受精と顕微授精も新たに保険が適用となりました。

不妊治療が保険適用されたことにより、治療費の自己負担は10割から3割となります。さらに治療にかかった費用が一定額を超えた場合には、1カ月の自己負担額を抑える高額療養費制度の対象にもなります。

保険適用前と比べると経済的負担が軽減されるでしょう。

特定不妊治療の助成制度は終了、負担が増えることも

体外受精と顕微授精の保険適用によって特定不妊治療の助成制度は終了予定です。2022年度は経過措置期間として条件を満たす方は助成を受けることができます。詳細はお住まいの自治体にご確認ください。

2022年4月から保険適用となった不妊治療も多くありますが、全ての不妊治療が保険適用されたわけではありません。不妊治療では保険適用されていない治療方法を選択する可能性もあります。

通常、保険適用される治療法と保険適用されない治療方法を組み合わせることができません。保険が適用されない治療方法を選んだときは保険適用される治療費分も全て自己負担となります。特定不妊治療費助成の場合は助成の対象でしたが、助成制度は終了するため、助成を受けることができず、助成がない分自己負担額は増えるでしょう。

不妊治療が保険適用となる方

不妊治療が保険適用されるためには以下のような条件があります。

条件項目 条件内容
対象年齢 治療期間の初日における女性の年齢が43歳未満の夫婦
保険適用回数 40歳未満は1子ごとに胚移植6回まで 40歳以上43歳未満は1子ごとに胚移植3回まで
婚姻の有無 原則法律上の婚姻関係が必要 一定の条件を満たす場合は事実婚も保険適用

不妊治療の開始日が女性の43歳の誕生日以降だった場合は、保険適用されないため「不妊かも」と思ったら早めに医療機関を受診しましょう。

不妊治療にかかる費用の目安

不妊治療にかかる費用の目安は治療段階によって異なります。保険適用か自費診療によっても異なりますが、ここでは保険適用の場合の目安についてご紹介します。

一般不妊治療

治療法 診療報酬点数
(1点10円)
3割負担の場合
タイミング法
一般不妊治療管理料
(3カ月に1回)
250点 750円
人工授精 1820点 5,460円

生殖補助医療

治療法 診療報酬点数(1点10円) 3割負担の場合
生殖補助医療管理料
(1カ月に1回)
250〜300点 750〜900円
採卵
採卵術
3,200点+ 2,400〜7,200点 9,600円+ 7,200〜21,600円
採精
精巣内精子採取術
12,400点or 24,600点 37,200円or 73,800円
体外受精
体外受精管理料
4,200点 12,600円
顕微授精
顕微授精管理料
4,800〜12,800点 14,400〜38,400円
受精卵・胚培養
受精卵・胚培養管理料
4,500〜10,500点 13,500〜31,500円
胚凍結保存
胚凍結保存管理料
5,000〜13,000点 15,000〜39,000円
胚凍結保存維持管理料(年1回) 3,500点 10,500円
胚移植
胚移植術
7,500〜12,000点 22,500〜36,000円

各医療機関によって加算できる点数などが異なるため、詳しくは受診予定の医療機関へお問い合わせください。

不妊治療の成功率を上げるためには?

不妊治療は長期化することもあり、治療期間が長くなるほど身体的・精神的・経済的負担が大きくなり、治療を継続するのが難しくなる場合もあります。少しでも不妊治療の費用を抑え、経済的負担を減らすためには日頃から妊娠しやすい体づくりが大切です。

ここでは不妊治療中に気をつけることをご紹介します。

身体の環境を整える

身体の環境を整えるためには食生活に気をつけましょう。食生活は妊娠率と関連があると報告されています。不妊治療中に無理なダイエットなどをしないようにしましょう。

食生活で気をつけるべきポイントは以下のとおりです。

  • タンパク質をしっかり摂る
  • 加工食品を控える
  • 糖質の摂りすぎに注意する
  • いい油をとる
  • ビタミンD、鉄、葉酸、亜鉛など妊娠に良いとされるビタミンやミネラルを摂る

毎日の食事に気をつけると、妊娠へも良い影響を与える可能性が期待できます。

十分な睡眠をとる

十分な睡眠をとりましょう。睡眠不足になると、イライラする原因になります。また、睡眠中には成長ホルモンが多く分泌されているため、早寝早起きの習慣を取り入れ、規則正しい睡眠をとると妊娠しやすい体づくりへとつながるでしょう。

適度な運動を心がける

適度な運動をすると、代謝がよくなって、血行が良くなります。また、女性の場合は出産に向けて体力をつけることにもつながります。ウォーキングなどの有酸素運動も日常生活の中に取り入れましょう。

仕事が忙しく運動をする時間がない人は、通勤時に1つ前のバス停や駅で降りて目的地まで歩く、エレベーターを使わず階段を使うなどの方法で適度な運動ができます。激しすぎる運動は、逆に妊娠率を落とすと言われているためご注意ください。

「不妊かも」と不安を感じたら、検査を受けよう

「妊活しているけれどもなかなか妊娠できないから不妊かもしれない」と不安を感じたときが受診のタイミングです。女性の検査は、月経周期に合わせて行われるため、一通りの検査を終えるまでに、1〜3カ月ほどかかります。

不妊かもしれないと思い、自分たちで排卵日を予測して、それに合わせてタイミングをはかるのなら、早めに検査をしたほうがいいでしょう。不妊の原因が分かった場合には適切な治療を受けることによって、不妊治療にかかる期間を短くできる可能性が高くなります。

検査は男女で一緒に受ける

不妊の原因は男女ともに報告されているため、不妊検査を受ける時は女性だけでなく、男性も一緒に受けましょう。

妊娠に際してトラブルになりそうなことはないかを調べるのが不妊の検査です。検査は先延ばししないことが大切です。

まとめ

不妊治療の費用は治療段階によって異なりますが、2022年4月から生殖補助医療の体外受精や顕微授精まで保険適用になり、経済的負担が軽減されました。医療機関の窓口での支払いが10割の全額自己負担ではなく3割負担で済むようになったからです。

不妊かもしれないと思った時はまずパートナーと一緒に検査を受けてみることをおすすめします。全ての医療機関が保険適用可能な医療機関ではないため、受診前にお住まいの自治体や医療機関の情報を確認してください。

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