不妊と遺伝の関係性について|影響する遺伝子の存在と確認方法
男性妊活基礎知識
2022.12.02

不妊と遺伝の関係性について|影響する遺伝子の存在と確認方法

※本記事は薬剤師が執筆しております※

「親が不妊だと、子どもにも遺伝するの?」

「妊娠のしやすさは遺伝するの?」

「男性不妊だけ遺伝するの?」

「女性不妊も遺伝するの?」

このように不妊と遺伝の関係性について疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。

男性不妊の遺伝的な要因に染色体異常やY染色体微小欠失があることが分かっています。男性の場合、保険適用される不妊検査の項目に遺伝子検査があります。親が不妊で遺伝的に不妊かもと思った時は、1人で悩まず医療機関を受診して不妊検査を受けましょう。

不妊の原因は遺伝だけではなく、さまざまな原因が報告されているため、遺伝かもしれないと悩むよりも不妊検査を受けて原因究明を行うことが大切です。

本記事では不妊の遺伝性などについて網羅的に解説しますのでご参考ください。

⽬次

  1. 不妊に遺伝性はあるのか?
  2. 不妊に影響する遺伝子の存在
  3. 不妊症の遺伝確認について
  4. 親が不妊でも妊活を徹底しよう

不妊に遺伝性はあるのか?

不妊に遺伝性がある可能性もありますが、はっきりとしたことはまだ解明されていません。

男性の場合、遺伝によって不妊となる病気が報告されています。しかし、生殖補助医療などで受精卵ができる可能性はゼロではありません。女性の不妊症も遺伝子との関連性が報告された研究があります。

親が不妊だから、自分も不妊かもしれないと思ったときは、不妊検査を受けて不妊の原因が遺伝によるものなのか確認することが大切です。

男性不妊の遺伝性について

男性不妊の原因の1つに染色体異常や遺伝子異常が報告されています。そのため、男性不妊検査では、染色体検査やY染色体微小欠失検査が実施されることがあります。

クラインフェルター症候群は、男性の性染色体にX染色体が1つ以上多いことで起こる疾患の総称です。一般的にクラインフェルター症候群は、卵子または精子の形成中にランダムに起こる現象が原因で発生するため、クラインフェルター症候群のほとんどの症例は遺伝しません。クラインフェルター症候群の子どもが生まれた場合、次に妊娠した赤ちゃんもクラインフェルター症候群である確率は、1%未満と言われています。

Y染色体はAZFa・AZFb・AZFcの3つの領域で構成されており、Y染色体微小欠失(AZF)検査では、精子形成に重要な働きをもつといわれている領域が欠乏していないかや欠失している部位をチェックします。AZFaやAZFbが欠失している場合、無精子症になる可能性が高いようです。また、AZFcの欠失は生まれた子が男児の場合、遺伝する可能性があります。

Y染色体微小欠失分析検査は2022年4月から保険適用される検査です。しかし、厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関において行われる検査、1人1回限りなどの要件があるため、詳しくは医療機関へご確認ください。

女性不妊の遺伝性について

女性の不妊も子供に遺伝する可能性はゼロではありません。

前述したとおり、男性の不妊症は遺伝要素があると言われてきました。男性だけでなく女性の不妊症でも、遺伝子が影響している可能性が示唆されています。

今後研究が進む中で、女性不妊に関係する特定の遺伝子が発見される可能性もあるでしょう。

不妊に影響する遺伝子の存在

不妊に影響する遺伝子が存在するという研究結果が報告されています。2020年2月6日に、世界的権威のあるCell Press社が刊行する科学学術誌「Developmental Cell」から「不妊の原因にかかわる遺伝子を発見ー卵子や精子の形成に必要な細胞分裂のメカニズムを解明ー」というタイトルの研究結果が公表されました。

熊本大学発生医学研究所・染色体制御分野の石黒啓一郎准教授のグループは、卵子や精子の形成に必要な染色体の減数分裂をコントロールする遺伝子を発見し、「MEIOSIN」(マイオーシン)と名付けたというものです。

「MEIOSIN」は通常、体全体の組織や器官で行われる体細胞分裂から減数分裂への切り替えに働く司令塔の役割を果たすことが明らかになりました。

人の細胞は細胞分裂を繰り返しながら、細胞が増えていきます。ある時期を境に減数分裂へ移行することは分かっていますが、そのメカニズムは解明されていません。今回発見された「MEIOSIN」は卵巣や精巣内で減数分裂が始まる直前の特定の時期にだけ活性化するという珍しい性質を持っていることが分かり、メカニズムの解明が期待されています。

今回の成果はマウスを用いて検証されたものですが、「MEIOSIN」はヒトにも存在することが分かっています。「MEIOSIN」は卵子や精子の形成に関わる重要な遺伝子であることから、今後の不妊治療などの生殖医療の進展につながる可能性があります。

不妊症の遺伝確認について

不妊症の遺伝性を確認する時にどうすればいいのかと疑問を感じている方もいるのではないでしょうか。ここでは不妊症の遺伝確認について解説します。

男性女性ともに、不妊症に遺伝が関係している可能性はゼロではありません。まずは遺伝が原因で不妊なのかどうかを検査することからはじめましょう。親が不妊だから不妊の検査をしなくてもよいわけではありません。

親が不妊で不妊の原因を知っている場合、必要な遺伝的検査を早期から実施できる可能性もあるため、不妊検査の問診時に必ず医師まで伝えてください。

不妊症が遺伝することは一部の疾患においてだけであるため、不妊の原因が遺伝なのかは検査しなければ分かりません。不妊の原因が分からないと、不妊治療へ進むことができないため、親が不妊だから不妊かもしれないと不安に思ったら医療機関を受診し検査を受けましょう。

親が不妊でも妊活を徹底しよう

不妊が遺伝する可能性はゼロではありませんが、遺伝以外の不妊の原因が潜んでいることも考えられます。遺伝的に不妊と判明した場合でも生殖補助医療を受けると妊娠する可能性があります。

親が不妊症だから、自分も遺伝的に不妊症かどうかは検査しないと分かりません。妊活をしても妊娠できず、不妊かもしれないと思ったときは早めに医療機関を受診し、男女ともに不妊検査を受けましょう。

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