※本記事は薬剤師が執筆しております※
「更年期になると性欲はなくなるの?」
「閉経後も性欲を保つにはどうしたらいい?」
年齢を重ねていくと、性欲がどのように変わっていくのか気になってくるものです。
更年期障害は男性、女性ホルモンが急激に減少していく時期に出てくる様々な不快な症状のことを言い、性欲にも影響が出てくることが分かっています。
更年期になってから性欲がなくなることに悩みを抱えている人がいるのは事実です。そのため、対策を取ることが重要になってきます。
ここでは、更年期障害と性欲の関係性や男性の更年期障害、治療方法についても、合わせて解説をしていきます。
目次
- 更年期とは?
- 更年期の女性の性欲の特徴
- 更年期の男性の性欲の特徴
- 更年期障害とは?
- 更年期障害でもムラムラする?性欲の関係性
- 女性の更年期障害、改善して性欲を戻すには?
- 男性の更年期障害、改善するには
- まとめ
更年期とは?
女性の更年期とは、閉経前の5年間と閉経後の5年間、合わせて10年間の時期のことを指します。徐々に卵巣から女性ホルモンのエストロゲンの分泌が減少していき、更年期になると急激に分泌が低下していきます。
閉経を迎える年の平均は50歳前後なので、45歳〜55歳の期間に更年期になる方が多いです。
ただし、閉経を迎える歳には個人差があるため、早いと40歳前半に更年期になる方もいます。
更年期の女性の性欲の特徴
このように、更年期は女性ホルモンの急激な減少にさらされるため、性欲にどのように影響を与えるのか気になるものです。
実際は、更年期の女性は、性欲が強くなるパターンと性欲が弱くなるパターンに分かれていることが明らかになっています。
女性ホルモンが減少すると、男性ホルモンの分泌が相対的に増えて今までよりも男性ホルモンの影響が強く出ることがあります。さらに快楽を感じるドーパミンの分泌が強くなり、結果として性欲が強くなると言われています。
また、閉経することで妊娠する確率はゼロになります。「妊娠したらどうしよう」という不安から解放されたことで、性交渉に積極的になれる人もいるようです。
反対に、性欲が弱くなるパターンでは、女性ホルモンのエストロゲンが減少することで膣内が委縮して乾燥し、性交痛が出てきてしまうことがあります。性交時に痛みが出てしまうと、どうしても性交渉を避けてしまうようになります。
また、閉経を迎えたことで「もう子どもは産めない体になった」と自覚するので、性交渉は必要ないと思い込んでしまう人も中にはます。
閉経後でも性欲は顕在
閉経前後のホルモンバランスの変化自体は、女性の性欲に大きな影響を与えるものではないことがわかりました。
加齢とともに、子宮や膣が萎縮していきますが、定期的に性交渉を行なっている限りは、閉経後でも性交渉ができなくなることはありません。
むしろ閉経後は妊娠する心配が無くなるため、不安要素がなくなり「以前よりも性交渉を楽しむことができる」と考える方もいます。
更年期の男性の性欲の特徴
更年期は、女性だけのものと思われがちですが、実は男性にもあります。
更年期の男性は、男性ホルモンのテストステロンが低下していきます。ホルモンバランスが崩れると心身にさまざまな影響が出てきてしまい、性欲がなくなってしまうことがあります。
テストステロンは、20歳代が最も分泌が多く、その後は年齢とともに徐々に低下していきます。減少するスピードは個人差があり、一般的には40歳〜60歳代で男性の更年期が訪れることが多いと言われています。
更年期障害とは?
40歳代以降の男性と女性の性ホルモン分泌量の低下によって起きる、様々な不快な症状のことをまとめて更年期障害といいます。
男性の場合は、20歳代のテストステロンの分泌量はピークになり、30歳以降から分泌量が減少し始めて、40歳代後半で症状が現れやすいと言われています。
女性の閉経のような急激な減少ではないので、年齢によるものと認識されて、男性の更年期障害の症状が出ているとは気付かれない場合もあります。
症状としては、筋肉痛、頭痛、勃起不全(ED)、頻尿、倦怠感、睡眠障害、無気力などがあります。
女性の場合は、閉経する前後の約10年間でエストロゲンの分泌が急激に減少することで症状が出てきます。
症状としては、顔のほてり、頻脈、息切れ、異常な量の発汗、耳鳴り、頭痛、めまい、イライラ、うつ、不眠などがあります。
女性の更年期障害は、ホルモンバランスの安定によって症状が治ることがほとんどですが、男性の更年期障害は長い付き合いになる可能性があります。
更年期障害でもムラムラする?性欲の関係性
更年期障害の男性と女性は実際にはムラムラすることがあるのでしょうか。
男性の場合はテストステロンの影響で性欲が起きるため、更年期障害の男性はテストステロンの分泌が減少していて、性欲がなくなることがあります。
女性の場合はエストロゲンが減少していくことで、総体的にテストステロンの分泌が増えて性欲が出てくる場合があります。
また、女性の方は相手との親密な関係性などの精神的な要素で性欲が出てくる特徴があるので、ホルモンバランスだけに影響されない性質を持っています。
そのため、女性の方が更年期障害でもムラムラしてくることがあるようです。
女性の更年期障害、改善して性欲を戻すには?
女性の更年期障害でも、性欲が出てくるパターンと性欲がなくなるパターンに分かれることがわかりました。更年期障害を改善して、性欲を戻すにはどんな方法があるのか気になるものです。それでは、それぞれ確認していきましょう。
栄養バランスを重視した食生活
年齢を重ねていくと、以前よりも食欲が減少して、必要な栄養素が十分に摂れていない場合があります。更年期障害で、心身の不調から食欲が低下してしまうとますます体調を崩す悪循環に陥りがちです。
今までの食生活を見直してみて、栄養バランスの摂れた食生活に戻すようにしましょう。
大豆は、女性ホルモンに似た働きをしてくれるイソフラボンを豊富に含んでいます。ビタミン、ミネラル、タンパク質も含んでいて、栄養バランスにも優れています。豆腐や納豆などを取り入れてみるのがおすすめです。
有酸素運動を主とした適度な運動
適度な有酸素運動を継続することで、更年期障害のあらゆる症状が改善することが明らかになってきました。
運動することで血流が良くなり、気分がすっきりしてきて、ストレス発散やリラックス効果があります。
ウォーキングなど軽度なものからでも十分に効果があります。自分にもできそうな運動を見つけて、定期的に行うようにしてみましょう。
かかりつけの婦人科に相談
更年期障害は症状が重くなると、日常生活に大きな支障をきたしてしまいます。
更年期障害が気になり始めたら、かかりつけの婦人科に相談して、自分に合った適切な治療をするのも1つの方法です。
更年期障害は、主にホルモン補充療法が行われていて、内服薬だけではなく貼り薬、塗り薬など様々な治療法を選択することが可能になってきました。
他にも、漢方薬や抗うつ薬、抗不安薬で治療を行う場合もあります。
男性の更年期障害、改善するには
ここでは、男性の更年期障害の改善策について確認していきましょう。
職場などのストレスチェック
男性の更年期障害は、男性ホルモンの減少とストレスが大きな原因になります。
ちなみに男性のストレスの原因は、職場環境が影響していることが分かっています。職場などのストレスチェックを行って、自分のストレスがどのくらいあるのか客観的に確認してみましょう。ストレスを強く感じている場合は、職場の産業医に相談して適切な治療を行うようにしましょう。
食事や睡眠•運動などで健康的な生活習慣を
若いころは無理をしていても大丈夫でしたが、食生活や生活習慣を疎かにすると、年を重ねてから様々な症状として現れてきてしまいます。日ごろから、自炊中心の栄養バランスが取れた食事を心がけ、睡眠時間の確保、定期的な運動を行うように心がけましょう。
漢方薬や抗うつ薬•ED治療薬などの検討
男性の更年期障害では、勃起障害(ED)、性欲の低下、疲労感、イライラ、うつ状態、ほてりなど様々な症状が出てきます。男性ホルモンの数値が低くなく、生活習慣に気を付けていても症状がなかなか改善されない場合は、持病や体質を考慮しながら、医師と相談して漢方薬や抗うつ薬、ED治療薬を処方してもらい治療を行いましょう。
テストステロン補充療法
男性ホルモンの数値が、著しく低くなっていて、更年期障害の症状が重い場合は、男性ホルモンのテストステロンを補充して症状を改善する治療法があります。
筋肉注射で、2〜4週間に1回の頻度で補充を行います。
まとめ
更年期障害は、女性だけではなく男性にも起きる症状で、性欲にも影響する場合があることが分かりました。
更年期でも性欲を取り戻すには、栄養バランスや生活習慣の改善、適度な運動を行うことが効果的です。それでも症状が辛い場合は、漢方薬などそれぞれの症状を改善する薬を必要に応じて処方してもらいましょう。また、男性ホルモンや女性ホルモンの数値が著しく低下している場合は、ホルモン補充療法が必要になってきます。
更年期も辛い症状に振り回されずに、性欲を維持できると夫婦のコミュニケーションを充実させることができます。「更年期だから仕方ない」とあきらめずに、様々な対策を行ってみましょう。