※本記事は薬剤師が執筆しております※
「最近うまくいかない…もしかして膣内射精障害かもしれない」「膣内射精障害って治療することはできるのだろうか」と気になっている方はいると思います。
膣内射精障害は、男性側、女性側にも負担を伴い、妊娠率にも影響してしまいます。肉体的、心理的な部分が影響するため、まずは原因を特定していくことが大切です。治療法は原因に応じて異なりますが、最近では薬で治療することができるようになりました。この記事では、膣内射精障害とは何か、どのような原因があり、薬も含めてどんな治療法があるのか詳しく説明をしていきます。
⽬次
- 膣内射精障害とは?
- 膣内射精障害のデメリットや悩み
- 膣内射精障害の原因
- 膣内射精障害の治療方法
- 膣内射精障害の治療は原因の特定から始めよう
膣内射精障害とは?
膣内射精障害とは、マスターベーションでは射精することが出来るにも関わらず、性行為の時にはうまく射精できない状態のことを言います。明確な診断基準は特に決まっていませんが、本人もしくはパートナーが思っていたよりも射精がうまくいっていない状況で、その状況にストレスを感じていれば膣内射精障害だと言われています。逆に、射精ができない状況であっても本人もパートナーもストレスを感じていないのであれば治療の必要性はありません。
厚生労働省の調べでは、膣内射精障害は、男性不妊症の原因の7%を占めていることが分かっています。近年は増加傾向にあり、不妊の原因にもなるので悩む方は増えてきています。
遅漏との違い
遅漏とは、本人やパートナーが射精したい、射精してほしいと思っていたよりも、射精するまでが遅くなってしまう状況のことを言います。
遅漏と膣内射精障害を明確に分ける基準は今のところありませんが、遅漏の症状が重度になった場合を膣内射精障害として捉えられています。
膣内射精障害の割合
膣内では射精できない、もしくは半分程度の頻度でしか射精ができないと答えた人の割合は、20代〜70代の男性のうち全体の5.8%、約270万人もいることが分かっています。決して珍しい病気ではありません。妊活にも大きな影響が出てしまうので、悩んでいる方は、早めに病院に相談してみましょう。
膣内射精障害のデメリットや悩み
膣内射精障害があると、男性側と女性側にそれぞれ心理的、肉体的なデメリットや悩みが出てきてしまいます。
異性の悩みはなかなか分かりにくいものです。どのような悩みやデメリットを感じてしまうのか、それぞれ確認してみましょう。
男性側
性行為は、男性が射精することで終わることがほとんどですが、射精ができない場合は性行為の終わらせ方が分からなくなってしまいます。あやふやなタイミングで終わらせてしまうと、性行為後のパートナーとの雰囲気が気まずくなり、申し訳ないと感じるようになります。
また、射精で気持ちよくなれないので、達成感が得られなくなります。すると、性行為に自信が持てなくなり、積極的にできなくなるとこもあります。さらには、恋愛にも積極的になれなくなり、人間関係にも影響が出てしまいます。
女性側
膣内射精障害があると、男性側の挿入時間が長くなってしまいます。すると、膣の周辺が擦れて痛みが出る時があります。女性の中には、痛みがあることを伝えられずに我慢している方もいるようです。
また、性行為の時間が長くなるので疲れやすくなり、負担に感じるようになります。
パートナーが射精できないことは、自分では気持ち良くなってもらえないと捉えてしまい、パートナーへの不信感や不安な気持ちを抱えてしまうこともあるようです。
妊娠率への影響
膣内射精障害があると、自然妊娠できる確率が下がってしまいます。
妊活を始めた頃は排卵日に合わせて性行為をする、タイミング法を行うことが多いからです。膣内射精障害があるとタイミング法を行うことが難しくなってしまいます。
妊活中に、射精できなかった経験を持ってしまうと、次は絶対に成功させないといけないと焦りが出てきてしまいます。その焦りが心理的なストレスになってしまい、さらに症状が悪化してしまい悪循環が起きてしまいます。
膣内射精障害の原因
このように、膣内射精障害には男性、女性側にもデメリットが生じることがわかりました。
性行為が上手くいかないことでお互いに気まずくなり、不仲や別れの原因にもなることもあるでしょう。特にこれから妊活を考えている方には大きな問題になります。
膣内射精障害の原因には大きく分けて2つあります。
まず1つ目は、思春期の頃に覚えてしまった不適切なマスターベーションです。強い刺激でしか射精できなくなると、膣内で射精が難しくなります。2つ目は、マスターベーション以外のことで、パートナーとの関係性の問題や、アダルトビデオを見ながらでないとできないという性癖の問題等、精神的な部分があります。
この2つの原因について、詳しく確認していきましょう。
マスターベーションが原因の可能性
膣内射精障害の原因の約7割が、マスターベーションが不適切だったことが分かっています。 不適切なマスターベーションでは、性行為の時の快感を得ることが難しくなり、うまく射精ができないことにつながります。 強い力で握ってしまうこと、足に力を入れないと射精ができないこと(性行為時の射精体制とは異なる)、床に押し付けて快感を得る等の行為が、性行為の時とは異なる快感になるため、影響しやすいと言われています。
その他の原因の可能性
勃起と射精には、それぞれ副交感神経と交感神経の連動が必要です。
タイミング法等により、妊活にプレッシャーを感じていて焦りや不安がある状態や、プライベートや仕事での心配事があり精神的に落ち着かない状況では、自律神経が乱れてしまい、射精障害が起きることがあります。
また、飲酒量が多い場合や、服薬しているお薬の副作用の影響で射精障害が起きる人もいます。
膣内射精障害の治療方法
膣内射精障害の治療法は、物理的な刺激を与えるマスターベーションを見直すことや精神面からアプローチするセックスカウンセリングがあります。重度の場合は、薬を服薬することで治療することができます。それぞれ確認していきましょう。
マスターベーションの見直し
間違ったマスターベーションを見直し、正しい方法を覚えることで、膣内で射精できるようになります。 適切なマスターベーションは、卵を握る程度に優しく掴むこと、手を動かすスピードを実際の性行為ぐらいのリズムにします。
最近では、治療用のトレーニングカップが販売されています。刺激が強いカップから始めて、射精ができたら徐々に刺激が弱いカップに変更して、最後は膣内の刺激と同じレベルのカップで射精ができるようにトレーニングしていくものです。このような製品を利用してみてもいいでしょう。
物理的刺激
マスターベーションには物理的に刺激が必要ですが、あまり強い刺激で行うと膣内の刺激だけでは射精できなくなることがあります。まず、マスターベーションの刺激を和らげるために、摩擦を軽減するローションを使用してみましょう。また、コンドームをつけて刺激を和らげる方法もあります。1回のトレーニングですぐにうまくいくわけではないので、慣れるまで根気よく続けることも重要です。
精神的刺激
普段の性行為よりも、刺激的なアダルトビデオの映像を見ながらマスターベーションをすることを避けましょう。 過激な映像を見ながらのマスターベーションは、普通の性行為の刺激では満足できなくなり、射精障害につながってしまいます。
治療薬の摂取
膣内射精障害だけではなく、勃起障害(ED)もある場合は、PDE‐5阻害薬を服用すると効果的です。PDE-5を阻害することで、陰茎の血流を良くするcGMPが分解されるのを防ぎます。
市販では、バイアグラ、レビトラ、シアリスがあり、薬を使うことで若い男性のうちの80%以上の人に効果が認められています。副作用に、ほてり、頭痛、血圧低下があるので、高血圧や心臓病等の循環器系の疾患がある場合は服用に注意が必要です。
PDE-5阻害薬だけではなく、射精や勃起を補助してくれる漢方薬(柴胡加竜骨牡蛎湯や八味地黄丸等)もあるので、組み合わせて使用することで高い効果が期待できます。
セックスカウンセリングの受診
セックスカウンセリングでは、性行為等の性の悩みを聞き取り、問題を解決できる方法を専門的にアドバイスしていきます。
射精障害は決して珍しい病気ではありませんが、他人にも打ち明けることがなかなか難しいものです。カウンセリングを行うことで考え方が変わり、治療方法があることが分かると精神的に楽になれるでしょう。また、パートナーの理解や協力がないと膣内射精障害が改善することが難しいと言われています。日頃からパートナーとも理解を深めることも重要です。
膣内射精障害の治療は原因の特定から始めよう
膣内射精障害は近年増加傾向であり、多くの男性が悩んでいる病気です。 男性だけの悩みだけに留まらず、パートナーも精神的、肉体的にも負担を感じてしまうので、早めに治療するようにしましょう。
治療には、適切なマスターベーションを取り入れること、薬を摂取すること、セックスカウンセリングを行うこと等、様々な方法がありますが、原因によって治療へのアプローチ方法は変わってきます。悩んでいる方は、まず原因を特定するところから始めてみましょう。